今夜だけ
桑野信介×沢崎摩耶


「機械と俺のどっちを信じるんだ」
「・・・わかった」

ったくこの男は。ナビに喧嘩売ってどうする気なのよ。
まあ、いいか。

・・・摩耶は桑野の言葉を信じ、直進した。

―車輌進入禁止

「道・・・まだできてないな・・・」

摩耶はそう呟く桑野を横目で睨んだ。

「ねえ、休憩しない?」

二人は車の外に出た。
ひんやりとした夜の風が、まもなく夏が終わる事を告げているようだった。
摩耶がゆっくりと口を開いた。

「・・・私、引き抜きの話、受けようかと思って。」

知り合いの女医が教えてくれた作戦だった。
摩耶自身、まだ決心がついていなかった。
人付き合いは実力以前の問題。桑野が心配でならなかった。

「・・・お前の自由だし・・・いいんじゃねえか?・・・ジュース買ってくる。」

桑野は動揺を隠せなかった。
俺が人から喜ばれる家を作り続けるには、あいつが必要なんだ―

「へっ!?何よっ?」

いつの間にか、摩耶の目の前に桑野がいた。

「行くな・・・い・・・行かないでくれ!」

ここには俺たち以外誰もいない―

桑野は摩耶を抱き締め、押し倒した。

「それとこれと話が別じゃ・・・」
「今夜だけは、俺のものになってくれ・・・」

慌ててズボンを下ろす桑野。ベルトがなかなか外せない。
そんな桑野を見て、摩耶は微笑んだ。

「今夜だけよ」

摩耶は自ずから服を脱ぎ始めた。
桑野はそんな摩耶をキョトンとした顔で眺めた。

「ほら、あんたも早く脱ぎなさいよ。」
「すまん。」

二人とも裸だった。
第三者が見たら、ちょっと間抜けな景色だったかもしれない。
摩耶は堅いアスファルトの上に寝た。

「ヤって」

桑野のデカい図体が摩耶の華奢な体を完全に隠した。―熱いキス・・・

8年間も同じ職場にいて、こうなる事を予想したことがないのは、お互いが殻に閉じこもっていたせいかもしれない。
もしくは・・・始めから自分の気持ちに気付いていなかったとか。

摩耶の小高い二つの丘は暖かくて、柔らかくて、母を思い出させた。
まだ俺が子宮にいた頃・・・

たまに遠い世界からクラシック音楽が聞こえていた気がする。
俺がクラシック好きになったのも、そのせいかも―
でも、今耳元に響く荒く甘い吐息は、今さっき思い浮かべた母というイメージからは遠くかけ離れていた。

「あ・・・はあ・・・いれて・・・・・・」
「え?」
「もう待てない・・・入れて・・・奥まで突いて!」

桑野は自分の分身を摩耶の下の口にあてがった。
使いこなせる自信はない。

俺は・・・俺は・・・ど、童貞なんだっ!

でもそんなこと、摩耶には言えない。たまには、お、男らしいところを見せつけてやらぁ!

「あんっ・・・」

感じてる・・・
美女が俺のしなびた肉棒で感じてる・・・
桑野は自信に満ちてきた。
すぐさまその自信は分身に伝わり、太さを増した。

「あぁ〜いい・・・気持ちい・・・」

桑野は満足げに頷いた。

「うっ・・・へっ、はあはあ」

初めての桑野は戸惑っていた。
摩耶も随分御無沙汰だったらしく、定期的に動くモノから発せられる恍惚感にドップリ浸っていた。

「やだっ、いっちゃう、いやぁ〜」
「はあはあはあはあ・・・うっ」

間違えて発射してしまうところだった。
桑野は太く、上向きに起った己を見た。
毎日見ている。でもこんな分身見たことない。
モノから白濁液が滴り落ちるのを見て、摩耶は素早く舌でキャッチし、舐め回して飲み込んだ。

「これで終わりよ」

そう言うと摩耶は桑野の唇に短いくちづけをした。
二人が車に乗り込むと、ナビは二人を現実へと連れさって行った。






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