助ける手段(マウンテン・ティム×ルーシー・スティール)
第七部 スティール・ボール・ラン


ルーシーは地面に倒れたティムの方へ向き直る。『襲撃者』の死を確認する心の余裕などない。
頚椎が砕けありえない方向に首の捻じれた男を直視できないというのも理由の一つだったが
それよりも、男の命を奪える唯一の方法、銃を握ったままの『自分の』右腕が切り離されたのは
大きな犠牲を覚悟した選択だったと理解していたためである。

(助かることは・・・出来たのに・・・・・・)


(首を切り離せば・・・・・・オレの命は助かっていた・・・・・・)

顔面を打つ雨粒とは対照的に、のどから拍出される血液は熱い。
いつの間にか降ってきた追手の『顎』に囁かれ、噛み破られるまでに、回避するだけの時間はあった。

(だがそれでは意味がない・・・・・・彼女を安全に逃がすには・・・
奴の息の根を止めるためには・・・・・・これしか方法は・・・・・・・・・)

着弾の瞬間に体を雨に溶かす男を倒すためには、奇襲しかなかった。
銃を持っていることを知られていない、ルーシーの腕を背後に回りこませることで。
自分の命に優先してでも。

滲んだ視界に、少女の姿が写り込んだ。肩から生えたロープが、腕が元に戻るのと同時にすり抜けて落ちる。
嵐にまぎれて嗚咽と涙滴が彼に伝わったが、自分のために泣いているなどと自惚れはしなかった。
それどころか彼自身すら、自らの死を嘆いてはいない。
ただ、助ける手段が結果的に彼女の手を人殺しの罪で汚すはめになったことを、後悔していた。

(帰る場所は・・・得られなかったが・・・・・・)

力なく宙を探る手を小さな手が握る。震えているのはどちらも同じ。

(愛する人に・・・・・・看取られながら・・・・・・・・・旅立てるのは・・・・・・・・・)






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