勝手に続編妄想(非エロ)
番外編


それなりにいいシーンもあったけど、2の部長キャラ崩壊に萎えてしまった。
原作テイストをもっと取り入れた続編にして欲しかったな。

3年間(原作では5年間)離れていたホタルと部長が、ホタルの本社復帰で再会したものの
ホタルはマンション、部長はあのままあの家にいる。
意地をはりあって、もう他人みたいになった二人がしゃ一緒に出張して、
悪天候から遭難しそうになって、山小屋で一泊。

(原作のホタルが脱ぎます!」と勢い込んだら、部長「ゴメン、暑い?」シーンを入れる)

東京に戻ると、ホタルの住むマンションの部屋が水浸しになってしまって使えず、ホテルを取るお金もないが
意地を張って「友達のところに泊まりますから」宣言するホタルだけど、山小屋での遭難が効いて発熱。
気がついたら、あの縁側のある家のかつての自分の部屋で部長に看病されてる。

「さっさと直して、すぐ出て行け」

と口では言うけど、ホタルを気遣う部長は
ホタルのために病人食を作ったり、好きな漫画を買ってきてやったりする。

「なるべく早く帰宅するから、それまで安静にしていなさい」

といつものように出勤する部長が
帰宅すると、家の灯りは消えている。

「また、いなくなったのか・・・」

動揺したのか、着替えることも忘れてスーツで縁側で一人座る部長。
その時玄関が開く音がして、思わず飛び出す部長の前に、ビール缶でいっぱいのコンビニ袋を抱えたホタル。
彼女が着てるのはもちろんジャージ。気が抜けたのと照れ隠しに

「全く、君は!会社を休んでおいてなんだ」

と叱責して、

「病人がすきっ腹にアルコールを流し込んでどうする。
少しだけ待ちなさい、今私が何か作ってやるから」

と台所にたった部長が見たのは
テーブルの上にセッティングしてある夕食。

「これ、君が?」
「はい、部長にお世話になって、お礼がしたくて。でも作ってみたら
酒の肴みたいな料理ばかりになっちゃって、そうしたらビールもいるかなぁ、って」
「それでコンビニへ?」
「はい」
「上はパジャマで、下はジャージで」
「はい」
「ちょんまげにすっぴんで」
「はい」

ため息をつく部長を心配そうに見るホタル。

「とりあえず、手を洗ってきなさい。それとこれは没収だ」

ビール缶を取り上げられて

「部長のケチ!ぶーだ!」

もう笑ってしまう高野。

テーブルの上には、きんぴら、焼き茄子、ジャーマンポテトに、モッツァレラとトマトのサラダが載っていた。

「見事に酒の肴だな」(離れていた3年の間に料理ができるようになったのか)
「香港じゃあ、日本食のお惣菜は高級品は高くてそれで自分で作るしかなくて」
「そうか。じゃあ、いただこう」
「あい!」

ホタルはうれしそうに言うと、高野と共にテーブルについた。

「牛蒡はちゃんと灰汁抜きしたか?」
「えええ?ポリフェノールが抜けちゃいますよぉ。」
「日本古来のやり方だろう」
「だから〜、最近の研究ではぁ、牛蒡の灰汁抜きはせっかくのポリフェノールをぉ」

3年前そのままに、二人はたわいない言い争いをしながら
高野とホタルは別々に暮らした3年の歳月を噛み閉めていた。

(一緒にいたら)
(一緒にいられたら)
(こんな時間がもっともっと)
(もっとたくさん過すことができたのに)

どうして、3年も離れてしまっていたのだろう。
香港の転勤話が来た時、ホタルは高野が「行くな」と言ってくれさえしたら
社を止めても高野の側にいるつもりでいた。
「寂しい時に寂しいと言えない」部長だったから、深雪さんを追わずにいたのだ。
心の底では好きで寂しかったのに、「ぶざまなことはしたくない」大人の男の矜持を守った上で
深雪さんから戻って欲しかったのだ。そんな部長が、深雪さんのためにさえしなかったこと
男の矜持を捨てても「側にいてくれ」と言ってくれたら、
自分の心に巣くうもの、出会う前のまだ若い男だった部長が愛し、妻にした人深雪さんへの嫉妬から
自由になれるのではないか、とホタルは思っていた。
高野は、若いホタルの栄転にもつながる香港行きを彼の感情で制止させるのは
管理職としてのプライド双方が許さなかった。
そして、彼の男性としてのプライドは、愛していたのに、ずっと大切だったのに、
伝えきれずに彼の元からある日突然去り、彼ではない男と愛し合っていた妻に想像以上の深手を負わされていた。
彼なりにどれだけ愛して大切に思っても、その愛が空回りで、気がついたら一人だった
そんな思いをもう一度するくらいなら、最初から孤独を伴侶に選んだ方がマシだった。
けれどもし、ホタルが自分から「部長の側に私はいたい」と言ってくれさえしたらとひそかに願いながら。
恋愛には不器用だと骨の髄まで自覚してる高野は、新しい恋もまた失うかもしれないことに怯えていた。
ホタルはそんな高野の心を理解するには若すぎた。
そして、二人はお互いに大切なことを言葉にしないまま、ホタルの転勤をキッカケにして別れた。

「部長?」
「雨宮?」

二人はいつの間にか箸を置いて、過去を回想していた。

「なんだよ」
「部長こそ、なんですか?」
「なんでもない。君こそ何か言いたいことでもあるんじゃないか」
「そぉですねぇ、『キミのつくった料理はおいしいよ♪』くらいは言ってもらいたいかな」
「ん〜、キミのつくった料理は旨いよ、サイコーだ」(棒)
「なんですかぁ、その気のない営業トークは。だから万年部長なんですよっ!」
「万年ホタルがエラそうに!いや、冬が来ても平気で飛んでるのはホタルじゃないな、ゴキブリだ!」
「!!」

「はぁ?」
「はぁあああ〜」

言い合った後、二人はまた無言になって食事を続けた。

「ごちそうさま。作ってもらったから私が後片付けはするよ」
「いえ、私がやります。それに部長、スーツのままだから汚れちゃったら困るでしょ」

蛍に指摘されて、自分がまだスーツのままだったことに気付いた高野は苦笑いをすると

「じゃあ、頼む」

と言って自室に消えた。

(3年前なら、「キミに食器を割られては後始末が面倒だ」とか言って
結局、部長が洗ってくれたんだけどな・・・。)

やっぱり自分はもう恋人、でも、いや同居人ですらないの部長の言う
部下の一人に過ぎない”他人”なのかもしれない。

「病気の部下を放りだす程、私は不人情ではない」

思いもかけないアクシデントをキッカケに、この家で同居を始めた初日
熱にうなされていた蛍の耳にもハッキリ聞こえた高野の言葉は、
部長としての言葉以外何者でもなかった。

(私は何を期待したんだろう)

「どっこいショウイチっと」

蛍は気合を入れると、お皿を洗い始めた。

「ホラ、貸せ」

いつの間にか傍らに着替えを済ませた高野がいた。
蛍の手から皿を取り上げてきれいに洗ってゆく。

「起きられるようなったからといって、今日のキミは動きすぎだ。」

高野の癖の一つ、咎めるような口調は相変わらずだ。
彼が着ているモスグリーンのセーターは、部屋着にしては新品のように新しく
いかにも女性が選びそうな代物なことに蛍は気付いた。
そう言えば、玄関に置いてあった、銀の靴べらも3年前にはなかった。

「何だ、皿を洗う俺に見とれてるのか?」

黙ったまま傍らで黙々と皿を拭いてる蛍を不審に思った高野は訪ねた。

「はい。40歳には見えないな、って」
「キミだって、30には見えないよ」
「あのっ!まだ20代なんですけど!」
「肌年齢は、30代じゃないのか。
香港では、紫外線ケアも禄にしてこなかったことがよくわかる肌だ」
「そっちこそ、仕事仕事で頭皮がカッサカッサなのがよく分かるヘアスタイルですよ」
「きっさま〜!」

高野は洗いかけの皿を放り出して、泡のついたままの手で蛍の頬をひっぱった。

「何れすか〜、わらしに八つ当たりしたって、増毛するわけれはぁ」
「貴様、まだ抜かすか」
「い、イタタ」
「冬になってもあつかましく飛び回りやがって、このアホタル」

言いながら、高野は蛍の顔が3年前よりずっと肉薄になったのに気付いた。

「香港支社におりました、雨宮蛍です」

高野は会社で3年ぶりに蛍の声を聞いて、顔を見た。

「高野部長、お久しぶりです。またよろしくお願いします」

あわただしく、他人行儀にそう言って、すぐに別の部署に復帰の挨拶に行ってしまった。

(もう、俺とのことは過去、か)

3年ぶりに会った蛍は、彼の知ってる丸くてポチャポチャした頬をして
高野が抱くのをためらってしまう程の少女性の持ち主だった彼女ではなくなっていて
鋭角的な輪郭をして、香港の一流店のオーダーで作ったであろう隙のないスーツを着た
蛍に似てはいるが、高野の見知らぬ女だった

「いたい、いたいれす、ぶちょおぉ」

高野の手がつまんでいる蛍の白い頬、怒りながらでもどこかうれしそうに彼を
睨みつける蛍の目は、3年前と変らないことが、高野の胸を締め付けた。

頬をつまんだ高野と、つままれた状態の蛍が、にらみ合いのような見つめあいのような状態を
打破したのは、携帯の鳴る音だった。

「ああ、私だ」
「いや、ちっとも。」

キレギレではあったけれど、高野の通話相手は女性なのだと蛍には分かった。
自室に篭ろうとした蛍を高野は手で制して、まだシンクに残った皿を指さした。

(キレイに拭いて食器棚にしまえってかぃ。相変わらず煩いオヤジめ)
(せっかく洗った皿に水垢が残ったら嫌だろーが)

目で蛍と会話しながらも、高野はなかなか携帯を切れずにいた。

「来週なら時間はゆっくりとれる」
「え?参ったな・・・。そうか。とりあえず五分は待ってくれ」

携帯を切った、高野はあわただしく自室に戻り、台所で後片付けを続けている蛍に告げた。

「ちょっと出てくる」

高野はまたスーツを着て、手にはコートを持っている。

「今から?」
「悪いが君と話してる時間がないんだ。戸締りはちゃんとして寝なさい。」

銀の靴ベラを使って靴を履きながら、高野は蛍が自分の後をついてきてるのにうんざりしたように

「ホラ、玄関は寒い。いいから部屋に戻って寝てろ」

と振り向きせず言うと出て行った。
部長の携帯にかけてきたのは女性で、その女性は部長にとって、自宅で寛いでいても会いたくなる
そういう関係なのだ、銀の靴ベラ、モスグリーンのセーター、
部長の好みを良く知っていて、それを贈れるだけの経済力のある・・・。
一流企業のOLだけど、海外勤務もしたけど、貯金もロクにできてなくて
マンションが水難に遭っても、ホテルに長期滞在するだけのお金もなくて
ほんの一瞬だけ恋人だった会社の上司のところへ転がりこむしかなかった自分と
なんていう違いだろう。
いや、恋人ですらなかったかも、しれない。
だって、3年前一緒に暮らしていた時もあったのに、とうとう高野は蛍を抱かなかった。

「好きだ」

って言ってくれたこともあって、大切に思ってもくれているのも知っていたけれど

(部長にとって私は、やっぱり手のかかる、かわいい部下の女の子、でしかないのかもしれない
(私にとっても部長は、ほうっておけない上司のオヤジ、だったっけ)


3年前

「キミに香港勤務の話が出てる」
「え?」
「で、キミは行く、よね」
「部長、部長はどうお思いですか?」
「キミの上司として言うと、いい話だと思うからススメるよ。
若い内に海外勤務を経験しておくことは、大きな財産になる」
「そぅですか。部長がそうおっしゃるなら。」
「そうか、よかった。
海外勤務における諸条件について、人事の研修が2日間ある。
時間と日程については、二ツ木が出張からもどったら」
「あ、あの」
「何?」
「香港でも、日本の漫画買えますか。今連載中の漫画が佳境で
私、どうしても続きが読みたくて」
「アホ宮!」

(出発する日までずっとずっと、部長が「行くな」って言ってくれたら
「待ってる」と言ってくれたら、って思ったけど、結局言ってくれなかったな)

ぽつねんと台所に座り込んだ蛍にとって、
高野が自分ではない女性と会いに出かけてしまった家は広くて寒すぎた。
台所に行くと、3年前にはなかったワインセラーが置いてあった。
量産品にはない、ワインセラーのキレイなワイン色の塗装を見ながら
中にあったワインを取り出して、高級そうなラベルのビンの中身を鍋に入れて
しょうがをすり、火にかけた。

(部長、怒るだろーな。いいんだ、怒れば。
怒ったら、「熱があるんだもん、寒いんだもん。」
「ホットワインで温まりたかったんだもん」、そう言ってやろ)

その頃、高野は小夏の待つ店へ急ぎながら、二ツ木にメールを打っていた。

”本当にすまん、今から出てきてくれないか。小夏と二人は困ってる”

携帯にすぐ二ツ木から返信があった。

「もしもし、高野?どうしたんだよ、雨宮と復活愛かと思ったら
小夏ちゃんともかよ、40にもなって何ハジケてるんだよ」
「すまん、日程を替えてくれと言ったんだが、それなら自宅に行くと小夏に言われたんだ」
「うっわ、女のカンってやつか。雨宮がお前といる気配を感じたんだな。」
「オイ、何でそれを?会社に届けてあるのは雨宮のマンションのはずで」
「さっちゃんラインだよん♪」
「山田め、だから口の軽い女は」
「あっら〜、エラそーに!もしもし、高野部長」
「山田!」
「山田じゃないわよ。無粋な時間帯にかけてきた自覚はしてんでしょーね」
「すまん」
「あのねぇ、高野部長が香港帰りの雨宮さんと同棲、しかも3度目の、
なぁあんて人事に知れたら大変よぉ。人事の二ちゃんは、何も聞こえない大気圏に、なんて無理よぉ
だって、二ちゃんは高野部長LOVE、なんだから。」
「そそ。それにさっちゃんとは一心同体」
「もう、二ちゃんたら〜」
「切るぞ」
「切らせないわよ、高野部長。二ちゃん、今そっち向かってるから。」
「ゴメン」
「美人で色っぽくて最愛のさっちゃん放って、高野部長救出に行ってるのよ。
この借りは、蛍にキッチリ返してもらうから」
「山田、俺と雨宮は」
「ぶぁ〜か。もういい加減に自覚しなさいよ。」

そう言うと、山田は携帯を切った。
向こうから、二ツ木が走ってくるのが高野に見えた。

つづく



相変わらずだな〜、小夏ちゃん」






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