聖なる夜に
神宮司要×三枝優華


パーティー終了後、優華、要、山田の三人は大通りを歩いていた。

「今日さ、蛍来なかったじゃない?家で寝てる方がいいなんて
ほんと干物街道まっしぐらなんだから」
「あいつらしいのう。こうと決めたらテコでも動かん」
「確かに。こう、何者にも振り回されないっていうか、
自分をしっかり持ってるんですよ。ライブラリーカフェの時も
『絶対諦めません』って言われて私、この人には敵わないなって
思いました」
「ねえ二人はさ、好きな人に幸せにしてほしいタイプ?幸せにして
あげたいタイプ?」
「俺は惚れた女を幸せにしたい。一生かけて守っちゃる。
惚れた女が笑っていてくれることが俺の幸せじゃ」
「姐さん、どうしてそんなこと聞くんですか?」
「蛍にね、以前相談されたの。手嶋君と付き合ってた時に彼から
『蛍さんは僕が幸せにします』って言われたんだって。その時に
すごく違和感を感じてね、どうしてだろうって。最後には
『自分の幸せは自分で決める』って別れたのよね。蛍らしいなと
思ってさ。で、優華は?あ、タクシー来たわ。じゃ、またね」
「お疲れ様でした」
「お疲れっす」

「で、優華はどうなんじゃ?」
「幸せ…そうですね…私は蛍さんほど強くないから『自分の幸せは
自分で決める』なんて言い切れないな」
「そうかのー?優華も結構頑固じゃと思うが」
「そんなことないですよ?」
「んで?」
「私は…誰かに幸せにしてもらうとか、自分で決めるとかそういうんじゃ
なくて、好きな人と二人で幸せを作っていきたいです」

そう言って優華は要の目をじっと見つめた。

「優華…俺はお前のことが好きじゃ。精一杯幸せにしてやりたい」
「私だけが幸せじゃ不公平じゃないですか。要さんの幸せは?」
「さっきも言うたが、俺は優華が幸せでいてくれることが俺の
幸せじゃ。他に何もいらん」
「それじゃ嫌です。私も好きな人には幸せでいてほしいです。
要さんと…二人で幸せを作っていきたいです…」

最後は消え入りそうな声になった。

「もう一回言うて?」
「え…」
「もう一回言うてくれたら俺は幸せになれる」
「私も…要さんのことが好きです…」

要は優華を抱きしめた。

「俺は…世界一の幸せ者じゃ!」
「きゃあっ!苦しいですよ〜!」

二人は要の部屋にいた。要の部屋はすっきりと片付いており、
インテリア事業部の社員らしいシンプルながらもセンスの
ある家具に囲まれていた。

「要さんらしいお部屋ですね」
「寒かったじゃろ?今熱いコーヒーいれるけん。それとも
ワインの方がええか?あ、膝掛けか何かいるか?もうちょっと
したら部屋が暖まるからそれまでガマンしてくれ」

要はエアコンをつけるとちょっと緊張しているのか部屋の中を
せかせかと動き回る。

「要さん」
「ん?待ってな。コーヒーもうすぐできるから」
「要さん、隣に座って下さい。それから私、ワインがいいな」
「え?あ、うん」

ワイングラスと赤ワインを持ってきて優華の隣に座ると
いつも自信満々の要からは想像がつかないほど落ち着きがなかった。
逆に優華の方が落ち着きを見せていた。

「乾杯」
「か、乾杯」

要は一息に飲み干す。

「なんか不思議じゃ。優華が俺の部屋におるなんて」
「そうですか?私はいつかこんな風になるって思ってましたよ?」
「どうして…」
「わかったんです。私が一番私らしくいられるのは要さんの前
だって。だからかな、マコト君との恋に悩んでた時も随分甘えて
しまってたし、『要さんじゃ無理なんです』なんてひどい事も
言っちゃった。要さんなら許してくれるって…あの時はごめんなさい」
「さすがにあの時は傷ついたな」
「ごめんなさい…」
「ええって。もう昔のことじゃ。今は優華がここにおって俺を
好きって言ってくれた。それだけで嬉しい」

要は優華の肩を抱き寄せた。優華の甘い髪の香りが鼻孔をくすぐる。

「要さん…」

潤んだ瞳で見上げる。
要の唇がそっと優華に重なる。始めは触れるだけの優しいキス。
次第に強く、唇を求め合う。舌がまるで別な生き物のように
からみあってゆく。
唇が離れる瞬間のなんともやるせなく、切ない気持ち。
……このまま片時も離れたくない…優華はそう思っていた。

要は優華を抱き上げるとベッドに運んだ。ふわりと降ろすと
優華にキスの雨を降らせた。
気がつけば優華は服を脱がされ、生まれたままの姿になっていた。

「明かりを消して下さい…恥ずかしいです…」

シーツで身体を隠そうとするも、要に阻まれてしまった。

「優華のすべてが見たいんじゃ。隠さんでくれ」
「せめてもう少し暗くして下さい…」

要が明かりを落とすと、淡い闇の中で優華に白い肌がまるで
発光しているかのように浮かび上がっていた。

「綺麗じゃ……」

要は感嘆した。このままいつまでも見つめていたいような気持ちに
なった。

「要さん…そんなに見つめないで下さい…」

優華は今のこの状態から早く脱したかった。なぜなら触れられても
いないのにもう濡れ始めていたからだった。

(もうこんなになってるなんて私…どうしちゃったの?)

「優華…」

再び二人は深いキスをした。次第に耳、首筋と唇や舌を這わせながら
手は胸をまさぐる。

「あぁ…っ!」

固く尖った先端に唇が触れると思わず大きな声が出てしまう。

「もっと声を聞かせてくれ。優華の声も好きじゃ」

もっと声を聞きたくて二つのバラのつぼみのような先端の片方を強く
吸い、片方を指で愛撫する。

「あ…あぁん…もう…イヤぁっ…」

自分だけが聞く事を許された優華の甘い声に要は酔いしれた。
もっともっと声を聞きたい、感じて欲しい。要は優華の存在を
確かめるように脇腹、ヒップ、太ももから爪先へと唇を這わせた。

「きゃぁっ…!」

そして最も敏感な部分に指を這わせる。優華は思わず腰が浮いた。
たっぷりと潤ったそこはもう、要をいつでも受け入れる用意が
できていた。

「優華、いくぞ」
「はい…」

要はゆっくりと奥へ進んだ。

「優華、好きじゃ…」
「私も大好き…」

二人はやがて高みへと登りつめ、果てた。

優華は気を失ってしまったらしい。
要は優華の髪を撫でながら愛しい思いで見つめていた。
しっかりと彼女を抱き寄せ、二度と離れないようにと願いながら
眠りに落ちた。

翌朝、要が目を覚ますと優華はいなかった。

「あれは夢…?」いや、そんな筈はない。髪も、声も、背中に
回された手の感触もはっきり覚えている。
優華…後悔してるのか?だから帰ったのか?

その時、寝室の外からかすかに物音がした。慌てて飛び出すと
優華がキッチンで朝食を用意していた。

「優華!」
「あ、起こしちゃいました?おはようございます。できてから起こそうと
思ってたんですけど…きゃっ!もう、何か着てきて下さい!」
「あ…ああ、すまんすまん」

とりあえずジーンズとセーターに着替えると、朝食の用意ができていた。

「勝手に冷蔵庫の食材を使っちゃいました。すみません」
「十分十分。だけどあまりなかったじゃろ。男の一人暮らしなんてロクな
ものが入っとらん」
「そうですね」

くすくすと優華が笑った。

「ではいただきます」

ぱんと手を合わせ、食べ始める。テーブルに並べられたのはトーストに
オムレツ、サラダ、コーヒー。美味しそうに食べる要を優華は
ニコニコと眺めていた。

「うん、うまい!ん?なんじゃ、食べんのか?」
「なんか嬉しくって。好きな人が私の作った物を美味しそうに食べる
の見てたら幸せだなって。ずっと見ていたいです」
「見られてたら食べにくくなるじゃろが。冷めるし早よ食べよ」
「はい。ところでさっき、何で慌てて出てきたんですか?しかも何も
着てないんですもん。びっくりしちゃいました」
「…帰ってしまったかと思ってな。後悔したんかと思って」

見る見るうちに優華の顔が曇った。

「何で後悔なんかするんですか?後悔させるようなことしたんですか?」
「いや、まだ信じられなくて…」
「要さんが好きだから、要さんとなら…私…だから気持ちを伝えたのに
まだ信じてくれないんですか?!」

優華はうつむいてしまった。要はあわてて優華に駆け寄った。

「すまん!本当にすまん。そんな優華の気持ちを信じてないとか
そんなんじゃないんじゃ。夢みたいっつーか、まだ夢の中のようでっ…?」

優華は屈み込んで見上げる要の左頬をつねった。

「ふふっ。痛いですか?」
「ゆうがっ?!」
「夢じゃないでしょ?」
「いでぇ…お前、嘘泣きじゃな」
「要さんが私のことを信じてくれないからです」

つねられた頬をさすりながら要は立ち上がった。

「そうじゃな。まだ信じられんから信じられるまで優華にもっと
もっと好きって言ってもらわなんとな」

要はまた優華を抱き上げた。

「きゃあ!何するんですか!私まだ食べてないのに!」
「後で食べればええじゃろ。寒いし腐らん。それに俺はもう食ったで、
エネルギー補給完了じゃ」
「もう、ひどい!」

要は優華にぽこぽこ叩かれながらベッドルームに消えていった。






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