俺達らしい
高野誠一×雨宮蛍


トントン。
背後から肩を叩かれた。
あいつ…大人のホタルさんを気取って俺の振り向きざまにチューしてくるに違いない。
お前の行動なんてお見通しのコンコンチキだ。
けど、そうはさせるか。

静かに振り向くと、ヘヘーンと得意げな顔して俺めがけて飛び掛かってきた。予想通りだ。
俺はそんなホタルをガッシと抱きしめた。

愛おしい…
3年間で手紙1通の君が、俺を想ってあんないじらしい手紙を書いてくれたなんて…
君らしくアホでトンチンカンな内容だけど、とにかく泣けた。
そして、意地っ張りで頭の固い自分が滑稽に思えた。

今、君を抱きしめながら思いを新たにする。
俺には、ホタル、お前しかいない。
繋いだ手は二度と離さない。
俺は一生、君の縁側になる…

「ぶ、ぶちょお…あの…」

どれくらい抱きしめていただろうか、ホタルのか弱い声で我に返った。

「ホタル…俺の部屋においで」
そう言って、お姫様抱っこしてやる。
「ヒャッ」
突然の展開に目を白黒させていたが、次第に幸せそうな笑顔になっていく。
かわいい。

部屋に入り、そっとベッドに横たえる。
たまらず私はホタルにのしかかるが、やはり干物女には展開が急過ぎたのだろう。
暗闇の中、野獣到来か?!と身構えて固まってしまったようだ。
そんな彼女に言った。

「先程はご近所の手前、中学生みたいなチューしかできなかったが、いつだったか言ったろ。
初めてのチューはお互いを貪るような熱く激しいチューだ、って。
一度決めた事はきちんとやる俺だから、きちんとやるぞっ」
「は…はぁっ!」

色気もムードもあったもんじゃないが、それが俺達らしいんだ。
フフッ。

ついでに気になる事が一つあるので、この際言っておく。

「その前髪のミョンミョンと後ろに束ねたチョンマゲは邪魔だから予め外しなさい。」
「…ハァァ?こっ、これは!私のっ、何ていうか…トレードマークなんですぅ!」
「そんな色気の無い子にチューは出来ません!」
「チェッ」

ふて腐れながら、髪ゴムを解く。
いつものアホな言い争いで緊張も解れただろうか。

髪をおろすとひどく大人びて見える。

「綺麗だよ…ホタル…」

艶やかで甘い香りのする髪に両手を差し入れ、優しく、ついばむように唇を重ねる。
お互いを甘噛みする唇が次第に熱を帯びる。
経験の少ないであろうホタルがそっと舌を差し込んできた。

こんな時にも一生懸命な君。
いじらしい。愛おしい。離したくない。
そんな想いが溢れて、俺も正に貪るように舌を絡ませる。

…あぁん、んんっ…

ホタルの喉の奥から声にならない甘い吐息が漏れはじめた。

止まらない、止められない。
ホタルの背中に手を回し、ブラを外しTシャツを脱がせる。
ついでにジャージもパンツも一気に下ろしてしまう。

耳元から首筋、ふくよかな胸へと唇を滑らせ、至る所に小さなキスを落とし、指先は柔らかな頂にそっと触れてみる。

恥じらいながらも感じてるのだろうか、ますます甘く溜め息のような息遣い。
俺を燃えさせる。

気がつくと指先は既にしっとりと濡れた秘処へ辿り着いていた。

「愛してるよ、ホタル…」

キスをしながら、静かにその敏感な部分をなぞり、掻き回していく。

先程よりも大胆に、甘く切ない声を漏らすホタルは、身をよじりつつも私の背中をしっかりと掴み、
現実と快楽との間をさまようような、妖艶な目つきで宙をみやっている。

こいつのこんな表情、初めて見た…

「…ぶ…ぶちょ、もぅ…あっ…あぁん…おかしくなりそう…」
「いくよ、ホタル」
「あっ、ぶちょお、ぶちょお…」

あの夏の縁側で出会ってから数年の歳月を経て、やっと身も心も一つになった俺達。
様々な想いが駆け巡る。
そして、守ってやりたい存在のはずの君が、何故だか今は君に守られているような…
母のような暖かさだろうか…包まれるような感覚を覚える。

「ホタル…」
「ぶちょお…」

いつしか無心に、激しく。
お互いを求め、俺達は昇りつめた。

「おはようございます」
「あぁ、おはよう」

腕の中のホタルは幸せに満たされた、大人の女の表情だ。

「ぶちょお。昨夜は…素敵なチューをありがとうございやした。
幸せすぎてとろけちゃいそうでした」
「脳みそまでとろけないよう気をつけろよ」
「ひどーい!」
「冗談だよ」
「あの。チューのお礼に私が朝ご飯作りますから、ぶちょおはゆっくりしてて下さい。」
「あ、そう?嬉しいよ。」

かれこれ1時間近く経ってないか?
何作ってるんだ。まぁ、あいつのたっての申し出だ、待とう。

「ぶちょお!お待たせしました〜。
冷蔵庫の残り物で作った、愛情いっぱいのハムエッグですぅ。召し上がれ!」
「おぉ、美味そうだな。早速いただきます。」

…ん?残り物??
ハムなんて買ってあったか?!

「って、まさかっ!100グラム1680円のパルマ産高級生ハムに火を通したのか!
通したんだな!!貴っ様〜!!!」
「ごめんなさいまし〜」
「このアホタルが!」






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