機嫌(非エロ)
高野誠一×雨宮蛍


「通行の邪魔だ、アホ宮」

相変わらず縁側でジャージ姿で転がっている彼女に言うと、彼女は唇を尖らせてわざと邪魔をするようにごろごろした。

「何だ、何か嫌なことでもあったのか」
「別にぃ〜」
「何かあったんだな」
「別にぃ〜」
「あっそ」

私が彼女をまたごうとすると足首をがっと掴まれる。バランスを崩し転びそうになったところを何とか持ちこたえた。

「危ないだろ!」
「ぶちょおって何でもてるんですか?」
「話を聞け、話を。…私がもてるのは当然だろ。完璧だもん」
「でも細かいし、よく怒るし、甚平だし、もんとか言うし良いとこばかりじゃないですよね」
「君がしっかりしてないから怒るんだ。誰かまわず叱るわけじゃない」
「…叱るのは私だけってことですか?」
「あぁ。嫌ならちゃんとしなさい」
「わかりました!私は一生しっかりしませんから一生叱ってください!」

何なんだこの女は。いきなり上機嫌になりにやにやし始め口笛を吹き始めた。下手くそめ。

「機嫌は…直ったのか」
「え?あぁ、ちょっとぶちょおがもててるのを知っちゃって不安になったけど、ぶちょおは私にべたぼれだってわかったので元気になりました!」
「べたぼれなんて言ってないぞ」
「またまたぁ。さっき私だけを叱るって言ったじゃないですかぁ〜」

叱る=べたぼれ?
アホ宮の脳内はよくわからないけれど、幸せそうだしまぁいいか。

お茶を飲み猫と戯れ部屋に戻ろうとすると、アホ宮がアホ面で眠っていた。前髪をあげジャージを身につけ口は開いている。頬を撫でるとくすぐったそうに首を振った。ほんのしばらく彼女の顔を見ていると何か言いたげに口がぱくぱく動く。寝言か?

「ぶちょ…ぶちょお…」
「ぶちょおだ」
「びー…る」

こいつ!夢の中でまでビールか!額を軽く叩くがもちろん気づきもしない。彼女のアホ面がむかついて、ちゅーしてやった。

「これでどうだ」
「ん…、びー…る」

二度とキスしてやらねぇ。アホ宮に新聞紙をかける。
おやすみ、良い夢を。






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