幸せの階段(非エロ)
高野誠一×雨宮蛍


しかめっ面だった部長の顔がふっと柔らかな
笑みに変わった。

・・・・・・、節約美男って自分で言うだけの
ことはあるな〜

とホタルは思う。

「どうした・・・アホ宮」
「べべべ・・・・別にぶちょおの顔に見とれてた
わけじゃありませんよっ・・・・・て、あっっっ!!!」

うっかり言ってしまった自分が恨めしい。

「ほほ〜う、私の魅力の虜になったか」

少し意地悪そうに笑いながら、恥ずかしくってそっぽを
剥いた私の頭を優しく撫でてくれる。

「アホ宮・・・、もう痒いところはないか?」

急に何を言うのかと身構えたら、こんなことを聞いてく
るので気が抜けた。

「なっ・・・治りましたから大丈夫ですよ」

部長は納得したように頷く。

「携帯は切ってあるか?」
「何でですか?」

さらに続けられる意味不明な質問だけど、慌てて
少し乱雑な中身のカバンの中を探って携帯を取り出して
確認する。

「携帯を切っとけ」

取り出した携帯の電源を切ろうとパカと開いた。

「あ・・・っ」
「どうした?」
「充電なくなってました・・・というわけで切れ
てます携帯」
「・・・・・・仕事でも使うんだ、ちゃんとしときなさい」

少し冷たい眼で私を睨んで、あきれたようにため息。
そして部長はまたさっきの見とれてしまった笑みを
浮かべた。

「じゃあ・・・もう邪魔者はないか」

部長はそうつぶやいて、私の腕を引いた。

「あっ・・・・・・」

私の体が勢い余って部長の胸の中にすっぽりと
収まる。
そっと部長の顔を見上げると、真剣な顔が見えた・・・。

「眼をつぶりなさい」
「・・・はい」

痒みも携帯の邪魔もなくなった私達の初チュウ

幸せの階段を一つ登った気がした。






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