LOVE
可児収×菊池理花


「・・・・や。」

触れている唇を放さないままで、収の手が、理花の体の線を沿うように動こうとした時、理花は思わず拒絶した。
抱きしめられる時。
キスをする時。
あんなに幸せな収との触れ合いが、なぜこれ以上がこんなに怖いのか。
この恐怖の理由は自分でも分からず、しかし体は強張ってしまうのだ。

「・・・やっぱり、まだ駄目・・・か?」

収は少し戸惑った表情で、しかし理花を気遣うように優しく声をかけた。

理花は、そんな収に対して拒絶してしまう自分に腹が立った。

「俺が、怖いんか?」

いつも同じところまで来て拒絶を示す理花に対して、収はいつもこの質問を問う。

「ち、違う・・・。」

それに対し、理花もやはりいつもと同じ答えを返す。

いつもなら、ここで収は引き下がる。
しかし、今日の収の反応は違った。
うつむいている理花に向かって、収は思わず詰め寄った。

「じゃあ、何や?なんでだめなんやっ。」

理花は驚く。収の言葉にも、そして彼の余裕の無い表情にも。

「可児くん・・・。」

収は理花の両肩を掴み、吐き出しそうになった自分の気持ちをぐっと呑みこみ、
苦しそうに一言呟いた。

「俺が嫌いなら、そう言えや・・・。」

理花はその言葉を聞いた瞬間、収の首にしがみついた。
そうしないと、収が自分に愛想を尽かして離れてしまうかも知れない、と感じたから。

「違うんや!そうやなくて・・・。」

可児くんに嫌われたくないから、と理花は続ける。

「・・・なんで俺が、おまえのこと嫌うんや。」

理花は収にしがみついたまま、答える。

「だって、だって、私スタイル悪いし、顔だってかわいくないし・・・ハダカの自分なんて、恥ずかしくて見せられへんよ!」
「・・・そんなこと気にしてたんか・・・。」

「それにHしちゃうと私に飽きちゃうかも知れへんよ?つまんない女だって、思うかも知れへんよ。」
「ぷっ」

収は思わず吹き出す。

「おまえって、ほんとに・・・。」
「??」
「そんな簡単に飽きるなら、最初から待たないわ。それに・・・。」

収は理花の耳元で囁く。

「俺だって・・・怖いんやで。」

意外な収の言葉に、理花は驚く。

「俺に飽きたら・・・って考えるし、さ。」
「・・・。」
「でもさ、俺は理花やから、したいんやで?」。
「理花の全部を知りたいんや・・・。」

その言葉を聞いて、理花は思った。
私も可児くんを知りたい。
可児くんの特別になりたい。
今までの怖いという気持ちが、どこかへ流れていくのが分かった。
自分らしくないセリフを口にしてばつの悪い顔をしている収の頬に、理花は軽く唇を触れさせる。

「理花・・・?」
「可児くんの気持ち、分かった。やから・・・。その・・・。」

理花の気持ちを読み取った収は、ゆっくりと理花の顔に唇を近づける。

最初は軽く。そしてだんだん気持ちが高ぶるのと同時に、強く理花の唇を吸う。

「ほんとに、ええんか・・・?」
「う、うん・・・。」

やっと出た声は、震えていた。

そのままの状態で、収は理花のシャツのボタンを1つずつはずしていく。
あらわになった理花の胸を、収は手でそっと触れる。

「・・あ・・・。」

理花は思わず吐息を漏らした。
自分の声が、とてもいやらしく感じた。

収はそのまま胸を手のひらで覆い、軽く揉んだ。

「柔らかい・・・。」
「あんっ。い、いやや・・・。」

理花は恥ずかしさのあまり、収に背を向けた。
しかし収は理花の背後から両腕を回し、シャツを袖まで脱がしてそれを手錠代わりにし、理花の腕の自由を奪った。

両腕を背後に回され、理花の胸はますますあらわになった。
それを収は両手で力を加減させながら揉んでゆく。

理花の体は恥ずかしさと快感で赤みを帯びてきていた。

「い・・・いや・・・。」

理花は抵抗の意味で声を出すが、その声でますます収が興奮していることを知らない。

「抵抗したって・・・もう無駄やで?」

収は理花の背中に、舌をなぞらせる。

「俺、もう・・・止まらへん・・・。」

理花を自分の方へ向け、そのまま強引に唇をむさぼる。
その勢いに負けた理花は、ベッドに仰向けで倒れてしまう。

理花の口の中を、収の舌は余すところなく掻き回してくる。
理花はたまらなくなり、収から唇を離す。

すると収はそのまま自分の顔を理花の胸元にうずめ、硬くなった突起物に舌を絡めた。

「ん・・・あっ。」

収の舌が乳首を弄ぶたびに、理花は喘ぐ。

理花は上着を脱ぎ、収の首に両腕を回す。
それがまるで合図だったかのように、次に収は右手を理花の下半身にもぐりこませる。

初めて触るその場所はとても熱く、すでに滑らかな液体で一杯だった。
人差し指で収がなぞり上げる度に、理花は背中を仰け反らせる。

「ああっ・・・。」

悲鳴とも喘ぎともとれる声が、理花から漏れる。

「痛いんか?」

収は指の動きを止める。

「ち、違う・・・なんか、すごく・・・。」
「すごく?」
「・・・熱いんや・・・。」

恥ずかしそうに答える理花に対して、収はさらに指を動かした。

理花はこみ上げる羞恥心と快感による喘ぎを、限界まで我慢しようとしたが、無意識に声が出てしまう。

「ああっ。・・・か、可児くん、だめ・・・。」

やがて収も自分の服を脱ぎ捨て、理花のシャツと下着を剥ぎ取った。

初めて直接触れる肌と肌。
その心地良さに気が遠くなりそうなのをこらえて、
収は理花の両脚を広げた。

「ま、待って・・・。」

無意識に恐怖を感じた理花は、逃げるように腰を浮かせたが、収に押さえられ自由を奪われた。
自分の一番奥深い部分を収に見られていると思うと、恥ずかしくて目を開くことができない。
そこにふいに熱いものが触れたかと思うと、同時にものすごい激痛が理花を襲った。

「あああっ・・・。」
「理花っ・・・。」

痛みに耐えかねて収の体にしがみついた。

「・・・今、お前ん中に入ってる・・・。」

収は軽く理花の耳たぶにキスし、やがてゆっくりと腰を動かし始めた。
収が動くと同時に起こる強烈な痛みが、やがて経験したことのないような快感に変化し始めた。
自分の淫らさに驚くと共に、理花はまるで他人の声のような乱れた喘ぎを洩らした。

「あんっ・・・あぁ・・・。」

理花の声に反応するように、収は動きを早める。
突き上げられる腰に重く熱い痛みが走り、理花は今にも気を失いかけていた。
収もだんだん余裕が無くなり、ただ快感を求める雄へと変化していった。

そんな収に抱かれる喜びを感じることに、少しだけ罪悪感を持ちながら、
理花は自分の中で何かが剥がれたのを感じた。
その行為が幾度か繰り返された後、理花の上で収は達した。

理花は緊張と興奮のあまり目を開けても何も見えていなかったが、
落ち着きを取り戻してくると、目の前の収の上半身が視界に入ってきた。

「可児くん・・・。」

収は汗が滲むその体で、理花をぎゅっと抱きしめた。

「理花・・・愛してる。」

収は一度体を起こし、理花を見つめると、にっこりと笑ってまた理花の体を抱きしめた。

「すげー・・・うれしー・・・。」

収は気持ちを噛締めるように呟く。
そんな彼の気持ちに包まれ、理花は今までよりも、ずっとずっと深い幸福を感じていた。

それはまるで暖かい海の中にいるような、ゆったりとした空間。

この人で、よかった。
この人が、よかったんだ。

1歩進んでしまった関係に、また不安は起こるかもしれないけれど。
可児くんを受け入れた自分に、これからも決して後悔することはないだろう、と理花は思った。







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