100%
可児収×菊池理花


「ん・・・・」
誰の声だっけ? 

「あ・・・れ?」

声を出してるのが自分だってようやく気づいて私は目を開けた。体に毛布がかかっている。
私・・・どうしたんだっけ? あ・・・可児くん?
ハッとすると同時に下から可児くんの声がした

「お前寝過ぎ」
「可児くん?」

声のほうを見ると可児くんがベッドにもたれて座りながら、雑誌を読んでいる。

「可児くんやないよ・・・お前どんだけ寝んねん」

雑誌から目を離さずに可児くんが言う
そっと体を起こして見ると下のテーブルの上にはからになったお皿が置いてあった。

「可児くんいつから起きてたん?」
「3時間くらい前。」
「う・・・そ・・・」

私は頭を押さえた

「起こしてくれたらよかったやん」
「起こしたわ。」

可児くんはぶっきらぼうに言った。

「目え、覚ましたらお前の頭が胸の上に乗ってるし・・・おかげでムチャ怖い夢見たやろ!」

こわい夢って・・・

「声かけても揺すっても起きへんし・・・ようあんだけ無防備に、男の前で寝れるわな」

自分かって、子供みたいな顔で寝てたやん。
それに誰の前でもってわけちゃう・・・可児くんやから安心して・・・
そういうと可児くんはフフッと笑った。

「あんまり安心されるのもオモロナイわ。まあ、理花が寝ている間にいろいろさせてもらったし」
「えっ?」
「首んとこのキスマーク消えへんかもしれへんから、ちゃんと隠しーや」

私はカッとなって首に手を当てた

「な・・・なにっ?」

「何回もキスしててんけど、全く反応無いもんな・・・おまえちょっと不感症ちゃうん?」

相変わらず背中を向けてる可児くんに私は叫んだ

「へ、変態!」
「何言うてんねん。目の前にエサ、ぶらさがってんのになんもせえへんなんて、男とちゃうわ」
「エサって・・・へーそんな風に女の子のこと見てるんや。」

なんか、頭に血が上ってきた。
昔の可児くんの噂が頭にこびりついて、想像の中で出来上がった、昔の彼女と可児くんがイチャイチャしてるのが浮かんでは消えて・・・

「女の子やったら誰でもいいんや・・・」
「お前、何言ってんねん」

静かやけど、少し怒りをはらんだ可児くんの声がした。
ちょっと、こわい・・・
でも、なんかもう止まれへん!

「私の他にも誰かと付き合ってるんやろ? 嘘ついてもアカンからね。もう全部バレてるんやから」
「・・・・・・・・・・・」
「この前デートしてたって、すごい噂になってるし」

可児くんはパタンと雑誌を閉じた

「そうか・・・寝不足の原因はそれ?」

そう言って可児くんはゆっくりとこっちに体を向けた
その可児くんの顔を見たとたん、猛烈に後悔した
わたし・・・最悪やん・・・こんな言葉で問いつめるのは絶対やめようって思ってたのに・・・
これでもどうやって切り出そうかって・・・いろいろ考えて・・・
でも、言ってしまった言葉はもう消えない。

私達二人はしばらくにらみ合っていた。
それから、可児くんはゆっくりと立ち上がり上から私を見下ろした

「エサ・・なんて言葉使って悪かったかもしれんけど・・・俺はホンマに好きな奴としか、そういうことせえへんから・・・
したいとも思わん」

すごい真剣な目に押されてしまう・・・
可児くんは大丈夫・・・絶対裏切ったりしないって・・・

「そ・・・そう」

私は声をうわずらせながら小さくつぶやいた。

「分かったわ」
「分かったって何が?」
「信じるわ・・・可児くんの言葉。」
「ホンマに?」
「信じる言うてるやん!」

私はそういうと毛布の中にもぐり込んだ。

「なーんか、投げやりやな」

可児くんの言葉にギクッとなる・・・するどい・・・なんか、全部見透かされてるんちゃうん。
でも、これ以上こじらすと可児くんに嫌われてしまうんちゃうかって・・・そんな思いが先に立つ
その思いはどんどんしこりになって残っていくのかも・・・・

なんて思ってたら、いきなり毛布をすごい勢いで引き剥がされた。

「わっ! なにするん?」
「ホンマに信じてるんやったら、しょうもない噂いちいち気にするな!」

耳元で怒鳴られてビクッとなった。

「お前はアホか・・・どんな噂が流れとったかしらんけど、本当のことは一つしかないんやで? 
俺が女の子と歩いとった・・・それだけやん。それを勝手に彼女やとか、デートしてたとか・・全部想像の産物やろ? 
なんでそんなもんに惑わされるねん。」

可児くんの言う通りや・・・返す言葉もあれへん・・・
でも・・・でも・・・わたしかってそんな強ないやん。
目が潤んでくる。いやや・・・こんなとこで泣きたくない。でも、意志に反して涙がこぼれ落ちる。

「私かて信じてたわ。」
「・・・・・・・・・」
「でも、100%までいけへんねんもん。どんなに信じよう思っても、最後の10%は、不安になって・・・」

私は手をグッと握った。

「私のこと好きなんやったら、あとの10%ちゃんと信じさせてよ!」

あーあ・・・言ってしまったやん・・・
もう、最悪!を絵に描いてる・・・可児くんは又、怒るやろうか?

でも、覚悟していた可児くんの怒声は飛んでこなかった。
かわりに可児くんは私の後に腰を下ろし、そのまま後から抱きしめてきた。

「可児くん・・・」
「じゃあ、ゆうてみいや。俺どうしたらいいん?」
「・・・・・・・・・」
「理花の不安が無くなるんやったら、なんでもしたるわ」

静かに響く可児くんの声に私は固く目を閉じた。

「じゃあ・・・しばらくこのままでいて・・・」
「ええよ・・・」

可児くんの腕に力が入る。すごくあったかくって、心地がよくって・・・ここにいればなんの心配もないんだなって・・・気がしてくる


「少し・・・落ち着いた」

可児くんの腕の中で私はつぶやいた。

「これで不安解消?」
「3%ね」
「じゃあ、次は?」

私はちょっと考えて小さく言った。

「私のこと・・・どう思ってる?」
「アホやと思ってる」

可児くんの即答に力が抜ける。

「あのね〜!!!」
「嘘やって」

笑いをはらんだ可児くんの声がして・・・次に耳に熱い息を感じた。

(好きやで・・・)

確かにそう聞こえた・・・もう一回言って欲しいけど、言ってくれへんやろうな・・・

「わ、わかった」
「これでもう大丈夫か?」

可児くんの声に私は首を振った。

「5%up」
「厳しいなーこっちは死ぬほど恥ずかしい思いしてんのに・・・」

ボソッとつぶやく可児くんに思わず笑みがこぼれる

「じゃあ、これで98%やな・・・残り2%は?」

私は唇をなめた・・・どうしよう? でも、これ聞かなきゃ絶対後まで引きずる気がする・・・

「あの日、可児くんと・・・一緒におったのは・・・誰?」

一瞬沈黙が流れた。でもすぐに背中からクックッと笑う可児くんの声が聞こえてきた

「そっか・・・そりゃそれ聞かなあかんわな・・」
私は小さく頷く
「あれはやね・・・也寸志の彼女」

大友くん・・・の彼女????
えっ???


「可児くん・・・あんた、大友くんの彼女にまで手え出したの?」
「お前なー」

可児くんは腕をほどき、かわりに私の肩をつかんで振り向かせた。

「自分の彼氏をそこまで信用できへんのか? このボケ!」
「ボ・・・ボケって・・・普通自分の彼女にそこまで言う? アホと馬鹿は許すけどボケは許されへん! 」
「だって、せやろ?」
「冗談やって(汗)」
「冗談きついわ!」

可児くんは私の目を見てゆっくり言った。

「也寸志にプレゼントしたいから、何がイイか選ぶの付き合ってくれって・・・まあ、俺センスいいから」
「本当?」

私はおもわず言った。

「なんか、それってムチャクチャベタな、話しやん・・・」
「そのベタな話しに振り回されたんは誰やねん!」

可児くんの声に肩をすくめる・・・

「ごめんなさい」

やっぱ、ちゃんとあやまっとこう・・・チラッと可児くんを見るとまだ、軽くにらんでいる

「悪かったけど・・・なんていうか・・・いつもこんな風に話できたら不安の入る余地もないんやけど・・・
会われへんかったら、やっぱ、いろいろ考えてしまって・・・」

私はふと思いついて可児くんに聞いた。

「可児くんは・・・不安になれへんの?」
「俺? なるわけないやろ!」

そっか・・・それだけ私のこと信じてくれてるんや・・・なんか、嬉しいやんv

「俺以上の男がおるわけないもん。」

あ・・・・・
それって、私を信じてるんじゃなくて、自分にムチャ自信があるんやね・・・
この、自信過剰男・・・

「そう思えへん?」

って、同意も求めてくるし・・(笑)

「うんうん・・・そうやね」
「軽くあしらうなや!」

可児くんは手に力を入れるとそのまま私を押し倒した・・・

「ち・・・ちょっと待った」
「これ以上待たれへんわ!」
「なんで? さっき私が寝てる間に散々弄んだくせに・・・」

可児くんの動きが止まり・・・それから呆れたように言った。

「おまえ、それでなんも感じてへんかったら、俺、ムチャ自信なくすで・・・お前マジ不感症やん。
寝てる女襲ったってオモロナイやろ」
「そんなもんやの?」
「そんなもんやの! ったく・・・ごちゃごちゃと・・・何時間焦らしとんねん」

可児くんは私の腕をベッドに押しつけて体重をかけてきた

「いや・・・あの、別にいややないけど・・・その・・・おなか減ってんねんけど・・・」
「あぁ?」
「ここ何日間か食欲無かったからあんまし食べてないし・・・でも、今日可児くんに会えたら安心したせいかムチャおなか減った・・・」
「そういうの自業自得って言うんや」
「えーーーー」
「あとで、俺がムチャおいしい明太子スパ作ったるわ」

明太子・・・それってさっき私が作ったやん!

「あれ、味薄い。もっと醤油入れなアカン」

む・・・むかつくむかつくむかつくーーー
そういいながらきれいに食べてたんは誰や!

あーもういいわ。なんか、体から力が抜けた。
可児くんの熱い唇をまぶたに頬にそして私の唇に感じる。
言ってることとは裏腹で、ムチャ優しいキスやん・・・

私は可児くんの首に手を回してギュッと抱きしめた。

「可児くん・・・好き。」
「・・・・・・・」
「やっぱ、可児くん以上の男はおれへんわ」

そっと可児くんの顔を見ると少し赤くなっていた

「今ごろ気づくな・・・」

ボソッと返す可児くんがすごく愛おしかった。

ごめんね・・・でも、もう大丈夫・・・
こんな愛おしい時間をもっともっと重ねていきたい
どんな時でも可児くんのこと100%信じられるように・・・






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