司の相談
F3


「で、何? 俺らに相談って?」
「類は呼ばなくてよかったのかよ?」
「………………………………」

「そんなムスッとしてないで何とか言えよ」
「本当にさー、呼び出しといて不機嫌なのやめろよ」
「………………………………」
「もう一時間以上お前の話し待ってるんだぜ!?」

「………………………………
 俺は牧野のために頑張ったつもりだった」
「そりゃわかってるよ。4年かかるはずだった仕事の引き継ぎ1年で
  終わらせて帰って来たの、牧野のためだろ?」
「俺も1年で仕事引き継ぐって尋常じゃないがんばりだと思うけど」
「ちげーよ。ま、それも頑張ったんだけど…、…あっちだよあっち」

「あっちってどっち? わかる? 総二郎?」
「まさかあのあっちではないよな。司と牧野に限って…」
「いや、司が帰って来て一ヵ月。もしかして…」

「…そうだよ。そっちのあっちだよ…」
「すっげーじゃん!!司がついに脱童貞!!よかったなー」
「二十歳を前に脱童貞! 牧野もやっと鉄のパンツを脱いだか。
  俺らは本当に嬉しいよ!」
「ん? じゃあ何でそんな不機嫌なんだよ」
「だいたいいつそんなことが起きたんだ?」

「俺が帰って来た日、お前らがパーティー開いてくれただろ。その夜」
「うわー、司もやるね。速攻じゃん」
「牧野が『今日は泊まっていく』って言い出してさ。
  あの後、俺の部屋にいったわけよ。女から泊まるって言い出したんだぞ。
  俺だってバカじゃない。牧野もついにその気になったと気付いたわけよ」
「で?で?  何で不機嫌? 実は牧野にヤル気がなかったとか?」
「いや、そんなことはねー。最初は緊張してたみたいだけど…。
  かわいいんだぜ、あいつ。肩なんかふるわしちゃってさ…
  ん?お前ら楽しんでね?この話」
「いやいや、真面目にきいてるよな!?」
「当たり前だろ、なっ」

「それで、二人でベッドに入って、俺がいなかったあいだの話しとか
  してるうちに、まーそういう雰囲気になってだな」
「それで?それで?」
「うわー、盛り上がってきたね!」
「お前ら、絶対楽しんでる。
  ……………………………。 で、服を脱がせたわけよ」
「おー!!司頑張れ!!」
「実況中継してるわけじゃねーよ……。
  そこからぐらいかな、おかしくなりはじめたのは…」

「牧野のやろー、恥ずかしがって、毛布にくるまっちまってよ。
 『恥ずかしいから見ないで』とか、言いやがる。
  惚れた女の裸見たくねー男がどこにいるってんだよ。
  で、毛布取り上げようとしたら怒っちまって…」
「………………」
「………………」

「牧野も頑固で毛布絶対取らねーんだよ。
  だから、そんなもんかぶってたらできねーって、こっちもイライラしてきて」
「………………」
「………………」

「だけど、俺も鬼じゃねーから、無理強いはよくねーって考え直して
  嫌だったらやめてもいいって言ったんだよ」
「………………」
「………………」

「そしたら牧野は『いやじゃない』って。それから二人して沈黙になって…。
  一時間くらいだまってたかな」
「………………二人とも裸で? 一時間沈黙?」
「おう、裸で一時間くらい」
「………………よく萎えなかったな」
「……あきら、つっこんじゃダメだ……」

「司、そんな恐い顔すんなっ。そんでどうなったんだよ」
「そしたら牧野が『私はわからないから全部道明寺にまかせる』」って」
「牧野えらい!大人になったな、牧野も」
「そうだなー、牧野イイ女じゃねーかよ」
「牧野がイイ女なのは俺が一番よく知ってる!!」
「ほら、司怒んない怒んない、褒めてるんだから」

「……………恥ずかしい話しなんだけどよ、俺も初めてなもんだから、
  どっからどーいけばわかんなくなっちまって」
「初々しいねー」
「うっせー!!!しょーがねーだろ。心底惚れてる女をこれから
  抱こうってときに頭なんかまわるかよ!!!」
「司、落ち着いて。ごめん、ちゃんと聞くから」
「…わからないながらも色々やったんだけど、牧野のやろー、
  うんともすんとも言わねーの」
「声出すの恥ずかしかったのかもな」
「そうなのかな…。でも、わかんねー。
  感じてるかとかもさっぱりわかんねーから、『嫌じゃねーか?』
  って聞いたら『大丈夫』って答えてさ。
  だから、いれようとしたんだよ」
「!?!?!!」
「!?!?!!」

「うんともすんとも言わない女にいれようとしたのか!?」
「大丈夫っていうからOKだと思ったんだよ」
「いやー、大丈夫ってそういう意味じゃ…」
「なかったんだろうな。
  あいつ急に『まだ無理!!早い早すぎる!!!』とか叫びやがって」
「そりゃそうだろ……」

「でも、俺だって初めてで何もわかんねーし、
  散々焦らされて待たされてやっとできると思ったら叫ばれて、
  俺のメンチ丸潰れじゃんかよ」
「……メンツね……」
「……あきら、つっこんじゃダメだ……」

「あきらだって総二郎だって、そこまでいったら最後までやるだろ?」
「やるけどさ、もうちょっとほぐしてあげないと」
「そそ、じゃないとはいらないしね」
「………、やっぱはいんねーか」
「ん!?」
「司、マジでそのまま入れたわけ!?」
「我慢も限界だったんだよ…」
「でも、いや、それはちょっと」
「牧野も何かゴチャゴチャ言い出して、すげーうるさいんだよ。
  色気も何もあったもんじゃねーの。俺のイライラもかなりきてて
 『ゴチャゴチャ言ってっと入るもんも入んねー!!  
   俺にまかせるって言ったんだから黙っとけ!!!』って」
「黙っとけって言って、そんで、もしかして…」
「そう、牧野の足をぐいっと広げて…」
「ぐいっと……?」

「…」
「マジ!?」
「つーか、でも入んなかった。少しだけはいったっていうのかな?
  いや、あれは入ってねーだろーな」

「かわいそうな牧野。俺マジで同情する」
「俺も同情する」
「なに言ってんだよ!!!そしたらあいつ『ギャー!!』とか言って
  俺の顔に思いっきりグーでパンチしたんだぜ!!」
「そりゃするわな」
「するする。しかたない」

「あいつそのまま服着替えて帰っちまいやがった」
「司が悪い」
「そう、司が全部悪い」
「………………。」

「それから、牧野とは会ったのかよ?」
「…まーな。」
「牧野はなんて言ってた?」
「『こないだのことは忘れてあげるから、二度とあんなことしないで!!』
  って言われた。それから、二人になれる場所とかに行こうとすると
  あからさまに嫌がるようになっちまったんだよ」
「まー、しょうがないかもな、
  牧野だって色々期待してた部分あったんだろうし」

「はー、何でうまくいかねーんだよ。これがあれだろ。セックスレス」
「……司達の場合はどっちかっていうとプラトニックじゃ……」
「……あきら、つっこんじゃダメだ……」

「とにかくだな、わかった。
  司の相談てのは、この状況を何とかして欲しいってことだろ?」
「…まー、そんなもんだ」
「ったく、素直じゃないな。」
「ま、仕方ないか」
「仕方ないな」

「司、俺らにまかせとけ。愛のセックス講義してやるぜ」






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