欠けた月(非エロ)
美作あきら×牧野つくし


司たちの身勝手さに腹を立て、でもあんなメルヘン全開の家に
すぐに帰る気にも慣れずに公園のブランコで時間をつぶす。
広がる星空を見上げながら、F4でもない、ジュニアでもない、
双子の兄でもない、ただの「個」でしかない俺に戻る。

そんな俺に声をかけたのがボンビー庶民、牧野だった。
牧野つくし。司が、あの司が惚れた女。

牧野は俺の隣に座ったと思ったら、月を見て俺に似ていると言う。
その理由を聞いてるうちに、俺は俺の中にある欠けた月が
満たされていくのを感じた。
特別美しいわけでも、お金を持っているわけでも、スタイルがいい
わけでもない女。だけど、俺を満月に変えることができる女。
この女を手に入れたら、俺は常に満月でいられるかもしれない。

でもこいつは、あの司が惚れた女。親友の惚れた女。
だから絶対に手を出しちゃいけない。


そう思った直後、さっきまでの司の身勝手さを思い出し腹が立った。

(・・・俺は司のことを考えてやってるってのに、あいつは好き勝手に・・・)

まぁ、その好き勝手・身勝手・傍若無人っぷりが司らしいのだが。
だが、今の俺は司の味方じゃない。

(お前が好き勝手にやるなら、俺も今くらいは好き勝手にしてやる)

「どーしたの?」

呑気に星空を見上げていた牧野が俺の方を見て微笑む。
その顔は完全に安心しきっている。
雲のない星空の下、公園のブランコに1組の男と女。女はともかく
男はそうそう転がってはいないレベルのイイ男。
普通にドラマになる展開だろーが。なのに。それなのに。
目の前のこの女は安心しきっている。少しはときめけ。
ああ、もう。色んな意味で司に合ってる気がしてくる。
お似合いだよ、お前ら。牧野の気持ちは知らんけどな。

「美作さん?」

そう聞きながら俺の顔を覗き込んでくる牧野の唇に、俺は体を
動かしてそっと自分の唇を重ねた。牧野の体がこわばる。
そりゃそーだ。
次の瞬間顔を真っ赤にして「な、な、な、な、な、何すっ・・・!」と
日本語にならない言葉を叫ぼうとした。叫ばれるとうるさいので
とりあえずまたも自分の唇で牧野の口をふさぐ。とりあえず黙っとけ。

抵抗し暴れようとする牧野の腕を掴み、そのままキスを続けた。

「・・・ん・・・・んぁ・・・」

息継ぎの合間に、ボンビー庶民の割にはなかなかイイ声を出す。

(ふーん。じゃぁ、もう少しいじめてみようかな)

少し開いた牧野の口に舌をねじりこむ。

「んんん!!」

牧野の目がかっと見開かれた。「んー!んー!んー!」より激しく
声にならない抵抗の悲鳴を上げる。
そんな悲鳴は聞こえないな。っていうか、俺のキスを受けて何でまだ
こいつは抵抗するんだよ。・・・まーなー。大人の女を口説くような
そんなシチュエーションじゃないしな。ちょっといつもの俺らしくはない。
だが、いつまでも抵抗されると自分のキスのテクニックを全否定
されているようで面白くない。
牧野の舌を吸い上げ、絡ませ、歯茎を舐め、上顎・下顎を
交互に舐めまわす。牧野の頬が少し赤みを増し、

「・・・んふぅ・・・」

と多少色気混じった吐息をもらすようになった。

(お?いける?)

そう思ったはいいけど、これから先どうしようか。俺の両手は牧野の
両手を押さえているから抱きしめることも体をまさぐることもできない。
手を離したら確実にこいつは暴れるだろう。

(うーん、どうしようかなー)

と舌を強引に絡ませながら考えていた時、ふとある思考が頭をよぎる。

(ここに道明寺が通りかかったら、俺、殺されるのかなー)

こんな小さな公園を、天下の道明寺子息が通り過ぎるわけはない。
いくら道明寺が牧野に惚れてるって言っても、夜道が危険だから
送るとかそういう心配りのできる男じゃない、司は。

(あいつもなー、もう少し大人のふるまいっつーか余裕を持てれば・・・)

(童貞捨てれば少しは変わるかもしれないけど、誰があの野獣を
セックスまで導けるんだよ・・・)

(って、童貞じゃないジローですら時として司と同じレベルに落ちるんだから、
司が童貞捨てたところで何も変わらないか)

(類は類で時々何考えてるのかわかんねぇし・・・)

などと物思いにふけっていた間に、どうやら俺のキスは止まっていたらしい。

「ぐぉっ!!!!!!!!!!!」

わき腹に鈍く重い衝撃が走って、そのまま後ろに尻餅をつく形で
倒れこんだ。よく見ると、ブランコに座ったまま足を高く掲げた牧野。

(蹴りかよ・・・)

痣になって痛くなるんじゃないかな・・・って思うほど両手でブランコの
鎖を強く握り締め、肩で息をしながら腰をかけて右足を高く上げている。

「牧野」
「近づかないで!」
「パンツ見えてる」
「あsghjkl;あwwすぁがsjdgk;;l;あsあぽいうytれsdfghjkl!」

これ以上まだ赤くなるかってくらい顔を真っ赤にして、両手でスカートの
裾を押さえる。目は激しく俺を非難している。

「・・・美作さんがこんなことするなんて・・・」

牧野、あんたが俺の何を知っているっていうんだ。

「ひどい・・・」

俯いて泣く?でも別にレイプしたわけじゃない。いや、これもレイプか。
でも、俺は、・・・俺は?あれ?

「今度はこういう手を使うんだ・・・」

・・・は?手?え?

「でもねぇ!!」

がばっと立ち上がって、牧野は腕で唇を強く拭った。
無理やりキスしたとはいえ、腕で思い切り拭ってる姿を見せられると
凹む。そんなに俺のキスは良くないですか。 orz

「この牧野つくしをバカにしないでよ。そんな手にはまるほどバカじゃないわ」

・・・手?牧野、お前さっきから何を話して・・・。

「暴力の次は、今度は色仕掛け!?よっくもまー、くだらないこと次から次へと
思いつくわね。でもねー、そんなんで落ちるほどこの牧野つくしは安くないのよ!」

何度も唇を腕で拭って俺の前に仁王立ちしている牧野。

( ゚Д゚) ポカーン

「手」ですか。「手」と来ましたか。
ちょっと予想外の返事が来てしまい何て答えていいのかわからない俺に
対して、牧野は「夕飯支度しないといけないから、私もう帰る」と言った。

「・・・ああ」

呆然と俺は返事をする。この牧野の性格だからこそ、司も惚れたんかな、と
漠然と思いながら。

ああ、そうか。牧野の手を握る俺の力が弱まったのは司たちのことを思ってた
時だったっけ。全く。こういう時ですら好き勝手に俺の邪魔をしやがって。
苦笑いするしかなかった。三日月も特に満たされていないし。

帰り支度を終えた牧野が立ち止まる。体の向きはそのままに、
顔だけこっちに向ける。怒った冷たい視線。が、そう思ったのも束の間
牧野がやさしく微笑んだ。

「美作さんってさ、やっぱりキスうまいんだね。ちょっとだけ・・・気持ちよかった。」

言い終わった途端顔を真っ赤にして、逃げるように牧野は走り去った。

(・・・何だ、あいつ)

俺は自分の胸の中にある月が、瞬間満たされて三日月から満月に
近くなっている気がしていた。満たされた感じは、正直気持ちよかった。

しかし。
さすがF4に対抗した女だ。思考回路が全く読めない。

「司ー・・・。あれは手ごわいぞー」

ぼそっと俺はつぶやいてから、家路につく。

(もうちょっとちゃんとキスしたかったな)

(牧野の声、思ったよりかわいかったな)

(三日月が満月に変わっていく心境は、快感だな)

等々思いながら、何かもったいないことをした気にもなった。

でも、牧野は司が惚れた女だし。牧野が満たしてくれる感じとは
ちょっと違うが、F4も俺の月を満たしてくれる。
親友の惚れた女だから、自分の感情がこれ以上突き進まないように
ブレーキとロックをかける。

「俺って・・・友達思いの奴。」

とりあえず、あの家に帰ろう。どうせ司たちは明日謝ってくる。






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