複雑な気持ち
西門総二郎×牧野つくし


類がロンドンに行ってから数日後。
六本木をブラついてたら見覚えのある後姿が見えた。
優紀ちゃんだ。
友達としてつかず離れずの付き合いを続けてきたけど、会うたびに思いが募り、いつしか掛け替えのない存在になっていた優紀ちゃん。
俺は、あのときの一期一会の意味を間違えていたのかもしれない…。
“友達”としての一線を越えないように接してしまっていた…。
優紀ちゃんは、俺の知らない男と一緒にいた。
どうしようもないどす黒い感情が俺を襲う。
これは嫉妬だ。
俺は女に関する嫉妬なんてしたことがない。
初めての感情だ。
俺にも人並みの感情があったんだな…。

「西門さん?」

牧野だった。
そういえばコイツ、類の見送りに来なかったな…。
あんなにいつも一緒にいたのに。
司が見たら暴れるぞって、いつもあきらと話していたくらい。

「おう、牧野、久しぶりだな。」
「西門さん、何、ボぉ〜っとしてんのよ?」
「いや…別に…。」
「優紀?」
「…優紀ちゃん?」

俺は優紀ちゃんを見かけたことをごまかした。

「今、優紀の後姿に見惚れてたでしょ?」
「……。」
「今まで一緒にいたのよ。あそこのカフェで。あの男の人は、最近優紀と付き合い始めた人なの。」
「…そっか。」
「妬ける?」
「んなことねーよ。」

俺はポーカーフェイスを保つのに必死だった。
俺と牧野は、近くのホテルのバーに入ることに。
出てきた料理をおいしそうに頬張る牧野。
司や類がこんな牧野に魅了された気持ちがわかるような気がした。
アルコールも入り、酒の弱い牧野は次第に目をトロンとさせた。

「何で類の見送りに来なかったんだよ。」
「…だって…、あたし、類に振られたんだもん…。」
「類に振られた???」

コイツは確か、司と付き合ってるんだよな?

「類ったら、あたしを慰めるだけ慰めて、逃げてったのよ。」
「どういうことだ?」
「………道明寺とはもう一年以上も連絡取り合ってないの。で…、類と…。」

はぁ…。
類とヤリまくってたってか…。

「類と本気で付き合ってたって思ってたのはあたしだけだったみたい…。類は道明寺に罪悪感を感じたみたいでさ…。ロンドンに行っちゃったの…。」

なんだってぇ〜???
どっからどう見ても、“牧野命”の類がぁ〜???
っつーか、司だってそうだろ。
よりにもよってこの二人が牧野を手放すだぁ〜?
俺には信じられねー。

「司とは連絡してねー、類には振られたなんて、誰が信じるんだよ。」
「あたし…。」
「はぁ…。」
「あたしは結局、それだけの女なのよ…。」

そう言って泣き出す酔っ払いの牧野…。

「そういう西門さんはどうなのよっ? 何で優紀に自分の気持ち言えないのよ。」
「今はその話じゃねーだろ。」
「あたしも優紀も、所詮、F4にとってはただのパンピー女なのよねっ!」
「んなわけねーだろっ!!」

俺は牧野の手を取ってスイートに連れ込んだ。

「おまえにしても、優紀ちゃんにしても、俺らにとってどうでもいいわけねーだろ。いつだって特別な女なんだよっ!!」

ほとんど勢いだった。
牧野の唇を奪い、ベッドに押し倒していた。

「…んっ…ん…。」

聞いたことがない牧野の声に、俺は欲情した。
ブラウスを脱がせ、下着をずり下ろして牧野の小さなふくらみを揉みしだく…。
ピンク色の頂を指先で転がすと、甘い声が漏れてきた。

「はぁン…、ダメ…、ダ…メだよ…、に…しか…ど…さ…。」

ダメだと拒否しながら、体は俺を求めている。
頂を硬くしながら、喘ぐ牧野がなぜか愛おしく感じる。

この体を、類は何度抱いたんだ…。
優紀ちゃんのように、切なく喘ぐ牧野…。

下半身に手を伸ばすと、そこはしっとりと潤み、俺の知っている牧野とは違う印象がさらに俺をかき立てる。

「それ以上は…、ダ…メ…。」
「…俺を類だと思って…、今だけでいい…。俺も違う女だと思うから…。」
「はぁ…、ああ…、る…い…。」

牧野の瞼から涙がこぼれていた。
類のことがほんとに好きだったんだ。
それなのに類…。

「あ…、ン…、もっと…、もっとぉ…。」

あんなに奥手だった牧野が、類を求めて腰を動かす。
クチュクチュと泡立つ牧野の秘部を、丁寧になぞる。
たまらなくなった俺は、そのまま牧野の中に進入した。

すっげーいい…。

男慣れしている女たちを相手にしていた俺にとって、牧野の体は優紀ちゃんのとき以来の快感を覚えていた。
この体を独占していた類に、嫉妬する。

「ヤ…、あ…、あン。ダ…メ…。」
「類と…、どっちがいい…?」
「…そ…そんな…ぁ…、あ…あン。」
「…いいンだろ…、いいって言え…。」
「あ…、いいン…ぁ…、もっとぉ〜、あン…、もっとぉ…。」

ダメだっ。
持たねーっ!!

「はぁ…うぅ…、あン、ああああ…、ダメっ、あ…、イ…クっ…。」

仰け反る牧野の中で、俺も果てた…。




「西…かど…さん…。」
「…ん?」
「……ごめんね…。」
「何が?」
「……あたし…、類のこと考えてた…。」
「いいよ…。」
「でも…。」
「…俺もさ…、おまえじゃねー女、考えてた…。」

俺は嘘をつく。
牧野が類のことを考えてたことなんか、わかってた。
俺は俺の腕の中で喘ぐ牧野がかわいいと思った。
でも、それは愛情とは違っていた。
互いに慰めあっていたんだってことはわかる。
だから、俺は牧野に嘘をついた。
牧野を抱いて、俺はやっぱり優紀ちゃんのことが愛おしいんだって思っていたんだけど…。
なんだか複雑な気持ちだ。

「優紀?」
「…ああ。」
「やっぱりね。」
「でもさ、今、このときだけは、ただの男と女でいようぜ。」
「…そうだね。一期一会?」
「ふっ…、そうだな。」

そう。
こんな夜は、名前も知らない男と女でいてもいいだろう。
明日からはまた、ダチである牧野つくしと西門総二郎になるんだから。

「な、もっかいしようぜ。」
「////はぁ?」
「今夜だけ。」
「………。」






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