十三夜
西門総二郎×松岡優紀


夕方、総二郎が稽古をつけて自宅に戻ると、庭で優紀が花を見繕っていた。
優紀はこのところ接客のため、日中は大抵着物を着て過ごしている。
奥の花を取ろうとさらに手を伸ばしたときに、少し着物の裾が乱れ、白い足首が覗いた。

「いい眺めだな。」

縁側で戸にもたれていた総二郎のイタズラ心に火がついた。

「優紀。」
「おかえりなさい。お稽古お疲れ様でした。」

近づいてくる総二郎を小首をかしげて見つめている。

「ちょっと、相談があって……。」
「何でしょう?」

黙って総二郎の後に続く。

行き着いた先は北西の蔵だった。
中に入るとひんやりした空気が二人を包む。
いきなり優紀の腕を取り、荒々しく唇を吸ったかと思うと壁に押し付ける。

「着付けが崩れてしまいます。」
「大丈夫だから。」

懇願する優紀の身体の向きを変え、壁に両手をつかせ、着物の裾を素早く捲り上げる。
長襦袢、肌襦袢、裾除けと順々に捲り上げると、白い太ももが薄暗がりの中で浮き上がって見えた。
総二郎の言いつけのとおり、事情の許す限りショーツは身に着けないようにしている。
二〜三度、長い指が腿の内側を往復したかと思うと、いきなり突き立ててきた。

「…っ!…痛っ……」
「優紀っ!、すぐに終わる!」

いつもならしつこいくらいに前戯に時間をかけるはずが、今日は様子が違っている。
何度も突き上げられているうちに、優紀の口からも喘ぎ声が漏れる。

「ぁ…やぁっ……あ…」

その声を合図に、さらに突き上げる。ひときわ大きくなったかと思うと、すべてを中に注ぎ込んだ。
まだ繋がったままだ。

「そう…じろうさん……」

はぁっ…はぁっ…乱れた呼吸を整わせながら、優紀から引き抜いた。
自分の衣服を整え、着物を直してやる。

「悪ぃ、急にしたくなって…」

一瞬あきれた表情をし、その後クスクスと笑う優紀の首筋から耳までが紅潮している。

「部屋に戻りましょうか?」
「そうだな。」

蔵から出る頃には、外はすっかり暗くなっていた。

庭へ回ろうとした優紀の足がぴたりと止まった。

「?」

総二郎が追いかける。
うつむいた優紀が小さな声でうったえる。

「そ、そうじろうさん…」

さきほど注がれたものが、身体から溢れ出たのだった。

「あはっ、あははっ!」

隣で大笑いしている。ひとしきり笑い終えると、目尻の涙を拭きながら言う。

「ゴメン、着替え手伝ってあげるから。なんなら、夕食前にもう一回ヤル?」

最後はもちろん、小さな声で。

「いいえ、お腹がいっぱいになってしまいます。」
「ゆうきちゃんも言うようになったよね。」

生意気なこと言って、あとで後悔するぜよ。心の中でほくそえむ。
優紀の手をとり、ゆっくりと歩き出す。

見上げれば南西に十三夜の月。長い夜になりそうだ。






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