忘れられない夜
国沢亜門×牧野つくし


インターホンがなって道明寺が突然部屋に入ってきた。
どしゃぶりの雨の中、びしょぬれになっているあいつにとりあえずタオルを貸してバスへと案内する。

「どうしたの?珍しいね、ここにくるなんて」

バスから上がり濡れたストレートヘアーのままのあいつに話し掛ける。

「ああ・・・」

いつになく静かなあいつの顔をそっと覗き込む。

「コーヒーでも入れようか?」
「いや、いい」

突然腕をつかまれ、引き寄せられる。大きな胸の中はいつもながら安心する。
そのままキスをされ押し倒される。

「え・・・?ここで・・・?」

壁が薄いからという単純かつ重要な理由で私の部屋では今だかつてしたことはない。突然の行動にちょっと驚いたけれども、あいつの上手なキスに流されてしまう意志の弱い私。

「ねぇ・・・、ちょっと控えめにしてね、ここ壁薄いんだから」

そういうのが精一杯だった。

「んん・・・」

耳たぶを甘く噛む唇が時折熱い息を吹きかける。
あいつのキスはいつも上手だったけれど今日は特にすごく感じる。思うように声を出せないって状況がきっとそうさせるんだろうなって思っていた。
いつのまにか服を脱がされあいつのキスを体中に受けていた。

「感じる・・・?」

少し笑いながら意地悪そうにいう言葉も今夜は何故かぞくぞくさせる。

「だって・・・久しぶりだから」
「そう、だな」

何がおかしいのかあいつは笑いをこらえながら私を見つめる。いつもいつもそんな風に余裕たっぷりの様子で私を翻弄する。最初追い掛け回されていたのは私のほうだけど、いまはひょっとしたら私のほうがもっともっとあいつのこと好きかもしれない。

「ね・・・意地悪しないで」

ぎゅっと首に手を回して抱き寄せる。

「早く・・・ちょうだい・・・」

以前ならこんな言葉口が裂けてもいえなかった。でも今日は本当に久しぶりだからちょっとせっかちに求めてしまう。

「しかたねぇな」

くすっと笑ってさっさと準備をはじめるあいつもやっぱり私と同じ気持ちなんだよね。

「おまえって・・・・ヤらしくなったよな」

私の両足の間に手を伸ばしそっと襞に触れる。

「誰のせいだと思ってんの」

本当は余裕なんてないのに精一杯強気の台詞を吐いてみる。
あいつの指はいつも以上に私の中をせわしく動き、敏感な部分を攻め立てる。

「あ・・・っ・・・そこっ・・・」

腰が浮き上がりそうなほどに感じる指の動き。思わずあいつの背中にしがみつく。
同時に首筋と耳の周りを唇が這う。

「イってもいいんだぜ」

そっと囁かれる言葉にびくっと反応する。

「やっ・・・声・・・でちゃう・・・」

私の言っている意味を察し、洩れそうになる悲鳴をあいつはキスで押し殺す。
声が出せない分、もっと刺激が強くなるようで私は自分から腰を振りながらあいつの指を求めてしまう。本当はこんなのでいきたくない。早くあんたが欲しいのに。

イったあとでそっと指が引き抜かれる。

「ひゃっ」

残念そうな響きに聞こえてしまったかと言ってしまったあとで恥ずかしくなる。

「気持ちよかった?」

また意地悪な発言。答えがわかっててわざと聞いてる。

「うん・・・でも・・・あんたとする方がやっぱりいい」

一瞬あいつは何ともいえないような複雑な表情を見せたが、またいつものようににやりと笑って私を抱きしめた。

「俺も・・・おまえとするほうがいい」

準備を終えたあいつがそっと身体を重ねてくる。

「好きだ・・・・」

囁きながらあいつのものがゆっくりと中へと入ってくる。
何だかいつもよりも強く押し広げられる感じ。そう、はっきりいって痛いくらいに。

「ねぇ・・・」
「・・・ん?」
「今日なんかすごく感じるんだけど・・・」
「そうか・・・?」

そうやって私を見下ろすあいつの顔は何かいいたげだった。何を言いたかったのか聞きたかったけどそれよりもあいつを早く感じたかった。

「ね・・・もっといっぱい動いて」

あいつの動きにそっと身を委ねながら私は少しいつもと違う感じを抱いていた。

今日のあたしはやっぱりどうかしてる。
久しぶりだから? 初めてのこんな状況だから?
ううん、なにか違う。
そっと見上げた私は道明寺のもう乾いた・・・・真っ直ぐな髪の毛をみて凍りつく。
濡れてない・・・真っ直ぐな・・・ということは

亜門!!!

「やっと気づいたか?」

平然と腰を動かしながら亜門が言う。

「言っとくけど途中ではやめねぇからな」
「な・・・ちょっと待ってよ!」

必死で抵抗する私を押さえ込み、下半身を強く激しく突いてくる。
ば、ばかな・・・止めなくちゃ。頭ではそう思っているのに快感が押し寄せる。

「あいつより・・・うまいだろ?」

亜門の言葉がわずかに残った理性を呼び戻す。

「なっ・・・」
「言えよ・・・司よりいいって」

何も答えないでいる私のうなじに唇を這わす。

「い・・・いやっ・・・」

喘ぎながら首を振る。

「こんなに俺のこと締め付けてきてるくせに、強がるなよ」

激しく何度も攻めながら、私の茂みに手を伸ばし、指先は芽に触れる。

「あぁっ・・・いいっ・・・いっちゃうっ・・・」
「言えよ、『亜門 いい』って」

目を開けるとそこにいるのはまるで道明寺で でも本当は違っていて それなのにその快楽に溺れてしまう。
なんてことしてるんだろう、私。ここにいるのは道明寺じゃない、なのにやめてってその一言がどうしても出てこない。快感が次第に私を高みへと追いやる。押し返そうとする身体になぜかしがみつき、何度も背中をくねらせ腰を動かす。
感じたくないのに感じてしまう。思考が飛ぶってこういう事を言うんだ。初めてわかった。

「いいっ・・・亜門・・・」

あいつの肩にしがみついたまま そのときを越えた。

道明寺のことを思いながら、亜門に抱かれた。
同意だったといえるのか いえないのか、それは私にもわからない。
ただいえるのは、このとき以来私は濡れた髪の道明寺にはけっして抱かれなくなった。ということ。
なぜって、うっかり亜門の名を呼んでしまいそうになるから。
あの忘れられない夜のことを思い出して。






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