ふたりだけのヒミツ
花沢類×牧野つくし


「俺、見合いの話がきてるんだ。
もう結構、いい歳だし、後継者としても妻帯じゃなきゃ、何かとマズイって言われてさ。
だけど、このままじゃ俺、牧野のこと、あきらめられない。
最後に一度だけ、あんたの全てを感じさせてくれない?
すぐに決めなくてもいいから」

あたしと司が結婚して既に三年の月日が経った。
F4の面々も経済界の若手リーダーとして、取り上げられることがたびたびだ。
そんなある日、あたしは久々に花沢類に呼び出された。
そして、いつになく思い詰めた類からそう言われたのだ。


私は考えて考えて決意した。
類はあたしの初恋の人で、兄で、一心同体で…たぶん心は一生離れない。
身体を重ねたほうが、より絆が深まるはずだし、
それにそうすることが今まで類があたしに尽くしてくれた恩返しだと思ったから。
司が出張中の昼下がり、あたしは花沢類と会う約束をした。

…安全日まで計算して。

「今日は、類の全てを受けとめるつもりだから」

あたしがそう言うと、類は嬉しそうに、あたしの耳たぶを甘噛みした。
服を脱いだ類は意外に引き締まった身体をしていて、
普段のけだるそうなイメージからは考えられないほど、あたしの全身に口づけてくれる。
彼の唇があたしの足の指まで到達して、左の親指を口に含まれたとき、
今までにない感覚が全身を支配した。
類の舌は、あたしの親指を含みながらも、指と指の間を執拗になめ回している。

「そんなとこ、イヤ」

あたしは初めての感覚に戸惑いながら、類に訴えた。

「気持ちいいでしょ。たぶん司は、こんなことまでしてないはずだよね。
今まで感じたことのない快感を、俺が牧野に教えてあげるよ」

類の唇は、次第にあたしの中心に迫ってくる。
司にはもう何度も見られているけれど、類に見られてしまうと思うとやっぱり恥ずかしい。
あたしは自然に太ももに力を入れていたらしい。

「牧野、力を抜いて…」

類の両手が太ももにかかり、舌先があたしの花芯を動き回る。
あたしの一番感じやすい尖った部分にも、やさしく舌をはわせてくる。
決して力を入れたり、焦ったりしない。
こんなところまで本当に類らしい。

「ん?」

ふいに類が声を出し、動きを止めた。

「これ、司につけられたの?」

三日前に司が太ももにつけたキスマークが見つかってしまったらしい。
あたしは慌てて隠そうとしたのだけれど、類は動じていない。

「ふーん。じゃあ、もうひとつつけてもわからないよね」

そういうと、花沢類はあたしの太ももを激しく吸い上げた。
そして司につけられた愛跡の横に、噛みつくようにしながらくっきりとした痣をつけた。

あたしの中心は、もうどんどんと密が溢れ出ていて、
全身のどこを触られても感じてしまう。

「…牧野」

類が真剣な目をして、あたしを見つめた。
あたしは微かに頷いた。
類があたしの膝をそっと押し広げる。
そして中心に自分のモノをあて、やさしく入ってきた。

…司のより太い。

長さは司ほどじゃないけど、
だけど…このぐらいの長さのほうが、奥にぶつかって痛くないかもしれない。

「大丈夫?」

類がささやくように言う。

「…痛くない?」

類はどこまでもやさしくて、あたしは首を横にふることしかできない。
何か言ったら涙がこぼれそうな気分になってしまったのだ。

「やっと、…俺、やっと、牧野の中に入れた…」

類がビー玉の瞳を心なしか潤ませながらそう言うから、あたしはなんだか鼻の奥がツーンってなった。

「ねえ、牧野、いい? 動くよ」

そういって花沢類は小刻みに動き始めた。
決して激しく大きく突き上げるのではなく、ただ、細かく動くだけ。
それでもかえってアソコが密接に擦れ合っているようで、入り口のところがものすごく熱い。
しびれるような感覚が、身体の奥を徐々に熱していく。
司に十分開発されきったと思っていたのだけれど、類はあたしがいままで全く知らなかった快感を確実に引き出していく。

「ねぇ、あたし…あたし、もう変になっちゃう…。どうしたらいいか、わかんない…!」
「変になっちゃっていいよ。そんな牧野を見たい」

少し掠れたような声で類が言う。
こんな声の類も、こんな皮膚の温度も、今まで知らなかった…。
あんなに近くにいて、何でもわかっているような気がしていたのに…。

あたしは快感の置き場所をどこにしたらいいかわからなくなってしまって、
次第に低い唸り声みたいなあえぎ声が出始めた。
こんな声、今まで出したことないかもしれない。
あたしの変化を感じたのか、類は次第にグラインドを大きくする。

「ねえ、類…、類…、もう、もう…あたし…」

目の前に何も見えなくなって、息の仕方も忘れちゃうぐらいのあたし。
類のモノで満たされたあたしの中がヒクヒクと動くのがわかる。
もうすぐ激しく痙攣してしまいそうだ。

「牧野、ごめん。俺、もう我慢できなさそうだ。いっていい?」

ふいに類が呻くように言った。

「うん、そのまま…、そのまま出していいから…!」

類のモノが一瞬もっと大きくなったように感じた瞬間、あたしの中がもっと熱くなった。

「司と比べて、どうだった?」

ベッドに横たわったまま、まったりと類が言う。

「…そんなこと聞くの反則だ…ょ。」

あたしはどう答えたらいいかわからない。
司は司、類は類。前戯から動き方まで、全てが違っていて、比べることなどとてもできなかった。
セックスって、相手が変わっただけで、こんなにも違うんだ…。
あたしは類と身体を重ねたことに、素直に感動していた。
類を愛しているってこともよくわかった。
司への愛とは明らかに違うけれど、あたしは類のことも愛していたのだ。

「ふーん、俺とのセックス、意外によかったんだ。

それに俺、牧野のこと愛してるんだなーってことが、本当によくわかったよ。
きっと全然別の人と結婚して、その人のことも愛していくんだろうけど、
俺、牧野への愛は一生持ち続けるだろうな」

類が今あたしが考えていたのと同じようなことを言ったから、
あたしはきっと真っ赤になってしまったに違いない。

「司に一生言えない、ふたりだけのヒミツができちゃったね」

類はそう言うと、背中からあたしのことをそっと抱きしめた。

数ヶ月後、類は結婚した。

あたしと司も結婚式に呼ばれた。

「何だか、少しおまえに雰囲気が似てるな。やっぱアイツ、おまえのこと…」

司があたしに話しかけている。
確かに類のお嫁さんは、どことなく昔の自分を彷彿させるような、そんな雰囲気を持っていた。
あたしは類とのたった一度の逢瀬を思い出して、お嫁さんにちょっとだけジェラシーを感じていた。

そのとき、あたしと類の目が合った。
類はそんな雰囲気を敏感に感じ取ったのか、微かに笑うと、あたしに向かって軽くウインクした。






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