リュート×春子×東海林
番外編


「あ・・んっ・・リュート・・」
「春子、今日はどうしたの?いつもと燃え方が違うね」
「う・・るさ・・い・・はや、く・・」
「――欲しい?」
「・・はや・・く・・」
「わかったよ」
「ああっ・・!」
「――春子・・今日は特別に色っぽいね・・」
「・・んっ・・」
「俺と春子がこんなことしてるとこ・・あいつが見たらどう思うかな・・」
「・・?」
「あいつのこと考えてるんだろ・・」
「・・」
「ほんとはあいつとしたいんだろ・・春子・・」
「・・!」
「ほんとに欲しいのはあいつなんだろ・・」
「・・訳のわからないことを・・やめなさい・・」
「いいよ・・もう一度目を閉じて・・あいつのこと考えなよ・・」
「やめなさい・・!」
「俺をあいつだと思えよ・・」
「・・やめ・・」
「ほら・・名前を呼んで・・何て呼ぶの?」
「やめて・・!」
「やめていいの・・?こんなに濡らしてるのに・・ほら」
「あんっ・・あっ・・」

「吐いちまえよ・・ほら・・どうした・・?」
「ああっ・・!」
「楽になるぜ」
「あ・・んっ・・」
「ほら・・!」
「・・誰が・・あんたなんかに・・」
「・・」
「誰があんたなんか・・っ・・!」
「あんたって誰のこと?言いなよ」
「・・い・・や・・、あ・・」
「・・悪態つきながらそんなに締めつけて・・あいつのことなんだろ?」
「ああっ・・!」
「あいつが憎らしいよ・・春子をこんなに乱して・・」
「んんっ・・!」
「呼んじまえよ・・名前を・・」
「あ・・ん・・」
「呼べよ・・!」
「・・あ・・しょう・・」
「聞こえない」
「・・しょう・・じ・・ああ・・しょうじ・・しゅにん・・」
「へー・・いつもそうやって呼んでるんだ、心の中で・・」
「・・やめて・・」
「自分でする時もそう呼んでたの・・?」
「い・・や・・」
「じゃあ行くよ、春子・・!」
「ああっ・・あん・・あっ・・!ああんっ!」
「春子・・っ!」
「・・しょうじ・・しゅに・・、東海林主任っ・・ああっ・・!」

「――ねえ、春子」
「・・うるさい」
「今の、テープにとったんだよね」
「え?」
「あいつに聞かせたらどうなるかな」
「――リュート!!」


数日後。

「いらっしゃい。来ると思ったよ」
「・・」
「あいにく春子はまだ帰ってないけど」
「お前か」
「ん?」
「こんなもの送りつけたの、お前か!」
「――気に入った?」
「・・外で話そう」
「いいけど」

「・・どういうつもりだ」
「全部聞いた?面白かっただろ?」
「どういうつもりだって聞いてるんだ」
「春子、意地っ張りだからね・・俺がキューピッドになってあげようってわけ」
「・・」
「声だけでも十分、いろっぽいだろ?たまんなかった?」
「お前・・おかしいんじゃねえのか」
「春子があんたの名前呼んでよがってるの聞いて、どうだった?」
「・・いいかげんにしろ」
「あんたの名前呼ぶたんびに、いつにも増して締め付けんだよね」
「やめろって言ってるんだ!」
「なんで?あんたが聞きたがってるものを聞かせてあげたのに」
「お前は・・イカレたクズ野郎だ」
「何怒ってんの?大丈夫、俺と春子はただのセフレだから。
春子があんたのこと考えて悶えてる時に、俺のもの使うだけだよ」
「やめろ!」
「抱いてやりなよ、ショウジシュニン。どうやって手なずけたか知らないけど、
春子、あんたに抱かれたら泣いて喜ぶよ」


目が覚めると、そこは見知らぬ部屋。
あの後、リュートの胸倉をつかんだ後の記憶がない。
みぞおちに鈍い痛みが残っている。

「くそっ・・デカイ図体しやがって、イカレ野郎が・・」

ドアが開いた。
大前春子が入ってきた。

「・・とっくり・・?!」
「気がつきましたか。それにしても迷惑ですね、階段から落ちるなんて」
「・・え?」
「幸い頭に損傷はないようです。落ちる前のことは責任持てませんが」
「――おい、ちょっと待て。階段から落ちたって?」
「そう、私が疲れて帰ってきたら、あなたが階段から落ちて気絶したので
介抱してやれと、押し付けられたんです」
「・・あいつにか?」
「リュートのことですか?」
「・・あいつ・・」
「目が覚めたなら、お帰り下さい」
「ああ・・すまなかった」
「本当に迷惑です」
「・・」

――そんなこと言ってるけど、おまえ・・。
考えまいとしても、テープで聞いた声が頭からはなれない。

『ああっ・・しょうじ・・しゅにん・・』

あの声は本当に大前春子の声なのだろうか。

『いつもそうやって呼んでるんだ・・自分でするときも?』

やめろ。やめろやめろ。
あれは何かの間違いだ。イカレ野郎の陰謀だ。まさか、この大前春子が・・。

『ああっ・・あんっ・・あ・・東海林主任・・!!』

最初にテープを聞いた時も、いけないと思いながら、
気がつけば最後まで聞いていた。
ニセモノだ、何かのいたずらだと頭では否定し続けながら、
大前春子の声に欲情した。
他の男と絡んでいることに激しい嫉妬を覚えながら、抑えがたい劣情にさいなまれた。
そして自分の名を呼びながらよがる声・・。
信じられない、間違いだと思いながらも、その肢体と表情を夢想した。
フラメンコを踊っている時のように、汗で光る火照った体が一糸まとわずに
男の体と絡み付いている。
あるいは服を脱ぐのももどかしいまま、黒いドレスをはだけて
男のなすがままに弄ばれ、後ろから貫かれている。
あるいは、一人ベッドで声を殺しながら自慰にふけっている・・。

もしも本当に、大前春子がそんな姿で自分のことを考えていたとしたら・・?

頭がおかしくなりそうだった。
下腹部が熱い。

テープを聞いた後、ついに夢想の中で大前春子を陵辱した。
誰もいない会社のデスクに押し倒して、体を貪った。

『誰が・・あんたなんか・・』

辛うじて憎まれ口を叩く彼女を責め立てて、よがり声を上げさせ続けた。
上の口で悪態をつきながら、下の口では決して離すまいと締め付ける。
その感触を夢想しては、何回も達した。

――その大前春子が、今、目の前にいる。

帰宅して、自分の部屋に運び込まれた東海林を見つけた時、
息が止まりそうだった。

「階段から落ちたんだ。しばらく休ませてやってよ」

リュートが真顔で言う。
少しでもからかうようなそぶりがあったなら、断固拒否しただろう。
だが、リュートの口調には本当かも知れないと思わせる何かがあった。
それでも疑いと恐れは消えない。
リュートが何か企んでいるのではないか。
東海林に何か恐ろしいことを教えてしまったのではないか。

もし、あのテープを東海林に聞かれたら・・。

それを思うと、気が狂いそうだった。
部屋の外に出て、必死で冷静になろうと試みる。

「私としたことが・・」

だが東海林はなぜ今夜、一人でここに来たのか・・?
考えるほど最悪の結論が頭をよぎってしまう。

もう、考えないことにして、ドアを開けた。

目覚めた東海林は、置かれた状況を理解するのに手間取っているようだった。

「目が覚めたなら、お帰り下さい」「本当に迷惑です」

いつものように畳み掛けて、体よく追い返そうとした、そのとき。

――顔をそらしていた東海林と、眼が合った。

初めて見る顔。
男の眼をしていた。

ああ、まさか。

東海林がゆっくりと立ち上がり、ドアの前の自分に近づいてくる。
じっと見すくめられて、動けない。
眼だけではなく全身を、舐めまわすように見つめながら、
東海林が目の前にやってきた。
体じゅうを愛撫されているような錯覚に陥り、めまいを感じる。

「とっくり・・」
「・・」
「俺・・聞いちまったんだ・・お前が・・」
「――!」
「お前が、俺を・・」

カーッと顔が熱くなり、体が震えた。
逃げなくては。
とっさに部屋を出ようとして、腕をつかまれた。
ドン、とドアに押し付けられる。

――ああ、そういえば。この男はこう見えても、私を片手で引き上げたんだった・・。

それは、リュートにテープをとられたあの日のことだった。

「逃げるな・・逃げないでくれ」

東海林が耳元に顔を埋め、ささやく。
熱い吐息。初めて聞く、掠れた声。
東海林の唇が、耳元をかすめる。
いつもの自分なら即座に張り倒すはずなのに、体に力が入らない。

「俺はお前が好きだ。知ってるだろう?」
「・・」
「もしお前が本当に俺を・・俺を好きなら・・」
「・・何を聞いたのか存じませんが、セクハラです。やめて下さい」

辛うじて言い返すと、東海林がもう一度自分をドアに押し付け、
顔を覗き込んできた。

「・・俺の眼を見ろ」
「・・見ています」
「・・もう一度聞く。俺のことが好きか?嫌いか?」
「・・とっくにお答えしたはずですが」
「だからもう一度聞いてるんだ。俺の眼を見て答えろ」
「・・」
「――俺が嫌いか?」
「・・」

東海林の顔が近づく。

「・・なんにも聞こえねえぞ」

東海林の吐息がかかる。

「・・あなたが・・」

もう、お互い眼ではなく唇しか見ていない。

「・・なんだって?」
「・・」

鼻先が触れ合う。

「・・聞こえねえな、なんにも・・」
「・・きらい・・」

だから、自分から噛みついた。

東海林の口内を蹂躙して、くるくるパーマをかき回してやる。
熱い。息が苦しい。体中の血が煮えたぎりそうだった。

――もう、どうなってもいい。

「・・お前・・激しいな・・」

東海林は私の頭を両手で押さえこむと、荒い息を鎮めながら
顔を覗き込んで言った。

「・・やっぱりお前の声だったのか・・」

ついさっきまで一番恐れていた言葉なのに、もう何も怖くない。

「・・それが何か?」

体が熱い。
耐え難いはずの羞恥は、もはや欲情に注がれる油でしかなかった。
テープの声の主が私だと知って、東海林が下卑た笑いを浮かべて勝ち誇ろうが
私を蔑んで陵辱しようが、構わなかった。

――私もあんたを奪ってやる。

今、体の底から、この男が欲しかった。

東海林は、じっと私を見つめると――

・・突然、ひざまずいた。

想像していたよりずっと繊細な手つきで、私のハイネックセーターを
ゆっくりとまくしあげる。
ひんやりした空気が素肌を徐々にかけ上がる。
東海林の指がブラジャーのホックを外し、背中をそっと撫でる。
その感触に、私は思わず震えた。
自ら邪魔な衣服を脱ぎ捨てる。

あらわになった私の乳房に、東海林の視線が注がれる。
東海林の顔が近づくにつれ、頂が硬く立ち上がって行く。
東海林は、先端を焦らすように乳房の周りに指を滑らせた。

「・・きれいだ・・」

すっかり敏感になった先端に熱い吐息を感じて、めまいがする。

次の瞬間、東海林の唇が左の蕾を捕らえた。

「・・あ・・」

声が抑えられない。
東海林はそこを甘く噛むと、優しくしゃぶった。
右の蕾は、指先でもてあそばれる。
甘い刺激に、思わずその頭をかき抱いた。

「・・あっ・・ん・・ああ・・」
「・・もっと啼けよ、とっくり・・」

「あっ・・ん・・あ・・」

この声だ。
あのテープと同じ・・。

――お前・・こんな顔して喘いでたのか・・。

すぐにでも犯したいのをぐっとこらえる。
甘い果実をねぶって攻め立てながら、スカートをたくし上げる。
ゆっくりと焦らすように、ストッキングとパンティを下ろして行く。
とっくりが待ちきれないように身をよじり、内股をすり合わせる。

「はや・・く・・」

指で花びらの輪郭をたどる。
溢れかえっている蜜で、指が滑る。
滑るままに指を走らせ、ずぷ、と挿し入れた。

「ああっ・・!」

とっくりが大きく背中を反らせ、俺の頭を強く抱く。
立っていられないのか、膝から崩れ落ちそうになるのを
抱きとめ、ゆっくりと着地させた。
この女が俺の愛撫に悶えるさまを、もっと近くで見たい。
目をとろんとさせ、頬を紅潮させてなまめかしい唇を半開きにしたとっくり・・。
指でぬるぬるとした感触を味わいながら蜜壺を攻め立てると、
ますます淫らに喘ぎ悶える。

「あなたも脱ぎなさい・・」

とっくりがもどかしげに俺のネクタイを外す。

とっくりの反撃が始まった。






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