恋人じゃない人
東海林武×黒岩匡子


「東海林くん、飲む?」

そう言って私は彼にブラックのコーヒーを渡す。

「ああ…ありがと、匡子。」

彼はコーヒーを受け取り、飲む。


それが合図。






その日の晩。
会社から少し離れたラブホテルの一室。






ベッドに装備されている鎖。
なぜか鞭と蝋燭まで親切に置いてある。


ちょっと、刺激が欲しくて
SMルームなんて選んでしまったけど
実際入って見ると何だかドキドキする。

彼は子供のように鞭を伸ばして遊んでいる。

「うわ、すげー。俺こんなの初めて見たよ。…で
どっちがM?」

「もちろん東海林くん、あんたに決まってるでしょ?」

「え〜〜俺かよ!?」

「あったり前でしょ!!ほら、早く脱ぐ!!」

「はいっっっ!!」

そう返事すると彼は背広を脱ぎ出した。
上半身裸になると、私は彼の手首をベッドの鎖に固定する。
そして床に脱ぎ捨てた服の中からネクタイだけ取り出して
目隠しした。

「ちょっと待って、目隠しはやりすぎじゃ…」

「いいの、この位しないと面白くないでしょ?」

「でも、何されるかわからないって言う不安が…」

「それがいいんじゃない。」

なんだか面白くなってきた私は、ベッドの横にあった蝋燭を手に取り
火をつけて彼のお腹に垂らしてみた。

すると彼はびっくりして
まな板の鯉のようにお腹を冷やそうと必死で体を動かす。


「あっつ!?おい、何すんだよっっ!!」

「あはっ、お笑い芸人の罰ゲームみたいー」

彼の反応が可笑しくて、つい笑ってしまった。

「笑い事じゃないだろっ、俺は蝋燭垂らされて興奮するほど
変態じゃないぞ!!」

「ほんとに?最初この部屋に行こうって言ったのは東海林くんでしょ?」

「そりゃそうだけど…」

「じゃあ蝋燭はやめてあげる。その代わりあんたは今から
私の下僕よ。」

「ああ…わかったよ」

「下僕はタメ口じゃなくて敬語で話しなさい!!」

「はいっっ!!よろしくお願いします…ってすごいプレイだな」

彼はぼやきながらも私の言葉に従う。

会社では、いつも部下に偉そうにしているこの彼が
ラブホでSMプレイを楽しんでいるなんて。
会社の人たちが彼のこんな姿を見たらどう思うかね?
なんてことを考えてみる。


東海林くんと私は会社の同僚でもあり仲のいい友達だった。
だけど、一年前ぐらいだったかな。
二人で飲みに行った帰り、終電に乗り遅れて
仕方なく入ってみたラブホテル。
お互い何もしないと約束して入ったものの
薄暗い照明に、ピンクのダブルベッドの雰囲気に負けたのか
最初は離れて寝ていたのが、気が付けば裸で抱きあっていた。


その日以来、時々会社帰りに会っては
セックスしている。
仕事中にどちらかがブラックのコーヒーを
差し出して飲み干したら今日はやるぞ、の合図。
いつのまにか出来た私達の約束。

だけど、お互い恋愛感情はない。いわゆるセフレ。
二人とも恋人はいないし
仕事でたまったストレスを発散するために
やっているようなもの。

でも、最近はただセックスするだけじゃ物足りなくなってきていた。
それはきっと東海林くんも同じだったのかも。
だから今日も普通の部屋を選ぼうとしていたら

「なぁ…今日はちょっと冒険してみないか?」

なんて言ってきたんだと思う。

そういう訳で、ベッドに繋がれた男とそれを笑いながら見る女。
今までのセックスはどっちかっていうと
彼が主導権を握っていたけど
今日は私が女王様。
そう思うとなんだかちょっと興奮してきた。
私ってSのケがあったのね…。


「ねぇ…どこ舐めて欲しい?」

服を脱ぎながら彼に問い掛ける。

「え…どこでも…」
「どこかちゃんと言わないと舐めないわよ」
「じゃあ、首から…」


私は彼の首に跡がつかない程度にキスをしていった。
すると彼は小刻みに体を揺さぶる。
首からゆっくり胸まで舌を下ろしたところで
目隠しされているのをいいことに
不意打ちで今度は腰周りをぺろっと舐めいてく。

「あっ…ああっ」

彼は声を出して喘ぐ。
腰周りを舐めながらゆっくりと手を
彼のズボンに伸ばす。
太ももから…滑らすように上へ、上へ。
ファスナーの部分まで到達すると
そこはもうヨットの帆のように張っていて
触るとすでに硬くなっていた。
ズボンの上から、焦らすように優しく触る。

「ねぇ、もうこんなに立ってるわよ」

「はぁっ…やだっ」

「なに女の子みたいな声出してんのよ、ここをどうして欲しいの?」

「な、舐めて…くだ、さいっ…」

「よしよし、いいコね」

私はベルトを外しゆっくりズボンをずり落とした。
パンツも一緒に、なんて下品なことはしない。
パンツの上から優しく撫でてあげる。
撫でるスピードを上げれば挙げるほど、彼の息がどんどん荒くなる。
するとパンツに小さなシミができた。
そろそろ焦らすのもやめてあげようと、パンツを脱がす。
少し先が濡れた彼の性器を私は飴を舐めるように
口の中で転がしていく。

「あっ…はぁっ…気持ち、いいっ…」

彼は首を横に振りながら喘ぐ。
そんな姿を見ていると私も興奮してきた。

「ねぇ、私のも舐めて。」

「え…」

私は自分の体を180度回転させて
彼の頭上で股を広げた。

普段は上から舐めてもらうなんて、恥ずかしくてしないけど
今は目隠しされて見られてないし。
そう思うといつもより大胆になってしまう。

「ほらっ、早く。」

そう言って私は自分の膜を彼の口の前に差し出した。

彼は舌を伸ばしゆっくりと舐めはじめる。

「やんっ…」

生暖かい感触が余計に刺激を与えて私は声を出してしまった。

「もっと、気持ちよくさせなさいよ」

そう言うと私は彼のものを舐めるスピードを上げ
手も使ってどんどんと刺激を与える。

彼も私の中を舌でかきまわす。唾と液が混じりあい
ピチャピチャといやらしい音を立てる。


「ああっ…出そうっ…」

彼がそう言うと、私は動かしていた手と口を止めた。

「だめよ、我慢しなさい。」

「えっ…?」

私は体制を元に戻し、ベッドの上にあるコンドームを取り
つけてあげる。

「いい、私がイクまでイッちゃだめよ。もしイッたりしたら…」

「し、したら…?」

「また蝋燭垂らすからね。」

「いや、それだけは…」

「わかった?わかったら返事する!」

「はいっ…!」


何だか素直に従う彼が少し可笑しくて
笑いつつも、私は彼と接続する。
最初から上位にいるのは初めてだ。
とりあえず体を上下に動かしてみると、ベッドが
ギシギシと音を出してシーツが揺れる。
私の中も振動によってなんとも言えない快感が。

「あっ…ああんっ…」

声がしらずしらず出てしまう。

「きょう…こも、気持ち…いいのか?」

「うんっ…感じるっ…」

下でマグロ状態になっている彼に私は言う。

「あんたっ、拘束されてるんだから…ちょっとは
抵抗しなさいっ」

そう言って私は彼のお腹をつねった。

「いたっ…はっ、はいっ…」

彼は腕を動かし鎖を引っ張る。
けれど鎖は外れることはなくただジャラジャラと音を立てる。

「いやっ…あっ、やめてっ…!やめて、下さいっ」

大根…どこのしょぼいAVよ。
けど彼も一生懸命やってくれてるんだろうし
そんな姿がちょっとかわいい。

「ダメよ、そんなに抵抗したって」

そう言うと私は上下に動かしていた体を
さらに左右へ動かす。
私の中で彼が暴れているように動く。
私は彼を締め付けるようにぎゅっと下半身に力を入れる。
すると彼は息を荒くして、自分の腰も動かしはじめた。

二人の荒い息に、ベッドの軋む音、そして鎖の音。
全てが交じり合って何か不思議な感覚に落とされる。

「あっ…イキそう…」

「おっ、俺も…」

全身に痙攣が起こったような感覚に犯されて
私は一線を超えた。

中でビクビクと反応する彼。
私は息を整え、中のものを外した。

すると包まれたコンドームの中で白い液がたまっていた。

………。

先にイクなと、言った筈なのにこの男は…。


私は少し汗ばんだ彼の体の上に再び
蝋燭を垂らす。

「うわっっっ、熱いって!!ちょっ、やめて!!」

また体を動かしじたばたする彼。

「あたしより先にイクなって言ったでしょ?」

遠慮なくもう一滴垂らす。

「ちがっ…先にイッてないって!?同時、同時進行だってば」

「ほんとに!?嘘だったらこのままほったらかして一人で帰るわよ!」

「えっ!?それだけはやめて下さい!!っていうか早く外して…痛い…」

泣きそうな声で彼は私に訴える。
そんな彼を見て、やっぱり可笑しくってまた笑ってしまった。




私は彼を拘束していたものを外してあげた。
手首には少し後が残っている…。
明日までには消えるかしら?
身なりを整えながら、彼は冷蔵庫からビールを取り出す。
すると私の素肌にぴたっと当てた。

私は思わず「ひゃあっ」と変な声をあげてしまった。

「ちょっと何すんの!?」

ぎろっと睨むと彼はちょっとびびったのか

「ごめん、もうしないから…」

そう言った後、ぽつりとぼやく。
「これから匡子に無茶な仕事を押し付けるのはやめよう…」

「待ちなさい、何でそうなるのよ!?」

「だってまたお仕置きされる…」

「そんなこともうしないわよ!SM嬢じゃあるまいし」

「いや、あの時の匡子の声は本気だった!」

そんな会話を続けながら私達はしばらく話しつづけた。
私達の事後にピロートークなんて甘いものはない。
大抵仕事の事とか、愚痴とかたわいもない会話が続く。

ビールを飲みながら今日あったことを話す。

「そういやさ、今日派遣の子達が仕事中にチャットしてて
注意したのね。そしたら泣き出してさぁ…もうほんとやんなっちゃう」

「あーまたあいつらか。ほんっと派遣はやる気ねーなー。
部長も何ですぐクビにさせないんだろう?」

「まぁ、派遣会社との関係もあるからすぐに切れないんじゃない?」

「そうか?俺だったら派遣なんか入れずに正社員しか雇わないんだけどなぁ。」

「だったら早く部長まで昇任してよね、東海林くん」


「おう、でも匡子より先に出世したら後が怖そう…」

「何ですって!?」




友達以上だけど、恋人でもない不思議な関係。

でも、今はこの状態が心地いい。

それでも時々は刺激のあるセックスがしたいと思う。
ああ、やっぱり私って生粋のSなのかしら…。






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