えっちなほん
番外編


それは魔王ギリが封印されてから数ヵ月後の話だった。
ニケ達を始めとするアラハビカの住人達はつかの間の平穏な生活を取り戻していた。
ある日アラハビカの中心街のバザールではとあるトカゲの一郎と称される商人は
なかなか客が来ないからと退屈しながらため息をついていた。が、その時彼に声が掛けられた。

「御免」
「ん、いらっしゃい。なんか用か?」

彼に声を掛けたのは3人のタテジワネズミだった。客として訪れたのだろうか。

「御意。我らは『えっちなほん』というものを探索している」
「はぁ?お前もそうゆう趣味だったのか?」

商人は彼らの問答に唖然する

「否。カヤ様からの使いにて調達して参った」
「購入するが我ら、カヤ様からの任務なり」

無表情で直情的な問答を放つ3人に商人は少々たどたどしい口調で対応する。
兵士の任務とはいえこいつら何も感じないのだろうか?と思いつつもカウンターの席を外れた

「あ、ああ分かった。じゃあちょっとこっちについてきてくれ」

商人はタテジワネズミ達を別の部屋へ連れ込み、扉の表に関係者以外立ち入り禁止と書かれた
プレートを掛け、誰もいないのを確認しつつ自らも部屋に入り扉のノブに触れた。

「あ、タテジワでし!」

それと同時に店のオープンエリアから4人の姿を発見したチクリ魔とサーチアイが現れた。
商人はギョッとする。

「これはチクリ魔様」

それに対しタテジワ達は彼女に敬礼する。

「こんな小さい店で何やってるでしか」

敬礼するような声で恥じらいもなくチクリ魔の質問に答える。

「我々は任務遂行中です」
「えっちなほん購入せり」
「御意!」
「へぇ〜あんた達も見かけによらずそんなことに興味があったでしか!!タテジワの趣味がまたひとつ判明したでし」

それを聞いて早速チクリノートに書き込む彼女にトカゲの一郎はやれやれと言った表情でタテジワネズミ達の代わりに答えた。

「こいつらがそんな奴に見えるかい?カヤとかいう魔族に頼まれて来たんだとよ」
「そうだったんでしか。まぁ考えてみればタテジワに限ってそれはねぇ」
「笑止」

チクリノートに書き込んだことを消しゴムで訂正するチクリ魔。
今の所彼女が判明しているのは、あのスケベな勇者のニケと
グルグル使いに気のあるレイドだけぐらいだと思っていたチクリ魔は少しホッとした。

「タテジワは分かってないみたいだし、あんた選んでやるでし」
「ああわかったよ、子供は帰った帰った。……さーて、何がいいかなぁ…」

チクリ魔はサーチアイに乗っかり基地へ帰り、金庫の下にあった一冊の本を取り出す。
表紙を見るとかなり独特の雰囲気を醸し出していた。タテジワネズミ達は首を傾げながらそれを見詰めていた。

「まぁ、お前さんらの年なら見ても悪くはないと思うがな」

トカゲの一郎はそそくさと本を紙袋に入れる。
タテジワネズミの1人はカヤから貰った代金を手渡すと紙袋を受け取った。


そしてその夕方、アラハビカの中の住宅地にある元ギリ軍基地。
タテジワネズミ達は各々の装備を外しエプロンを着、夕食の支度をしていた。
今食卓にいるのはチクリ魔ひとり。レイドは今朝から魔学に没頭しており、
カヤはアラハビカ近所の仔魔物を集めて魔法を教えるのが日課であった。
チクリ魔はサラダのトマトを頬張りながら今2人何しているのか監視してこいと
送り出したサーチアイの帰りを待っていた。

「ギリ様が封印されてから数ヶ月レイド様は何をしておられるか」
「笑止。レイド様ならば次の手を考えて頂けよう」
「それにしてもカヤ様はなにゆえに子供の魔物に魔法を伝授するようになったのか」
「いかにも御意。どうせなら我らの方が有能であろうに」
「カヤ様とて無力な子供を贔屓するとは笑止千万」

3人の薄っぺらで独りよがりな内容のつぶやきに腹立ちつつもチクリ魔は夕食を済ませ書斎で今日の情報の整理を始めた。
それから一時間後。

「チクリ魔様、前部屋の清掃終わりました」
「ん?あー、ご苦労でし」

タテジワネズミの一人はチクリ魔に報告するために書斎へやってきた。
チクリ魔はちょうどその時に情報の整理を終えたところだ。
互いの仕事が終わり、片付けをしている最中にタテジワネズミはチクリ魔に質問した。

「チクリ魔様、『ふぇらちお』とは何ですか?」
「!!!?」

突然のことに驚きを隠せないチクリ魔は口の前に人差し指を当てて静かにするように促した。
廊下に顔を出して誰もいないことを確認すると急いで全ての扉を閉めた。
ホッと胸を撫で下ろす彼女にタテジワネズミは疑問符を浮かべる。

「それ、どこから知ったでしか!?」
「さっきのカヤ様の本に書いてありました」
(やっぱり…)

静かに答えた。

「あ、あの、か、カヤ様に訊けばいい答えが返ってくると思うでしよ…?」
「カヤ様はいませんし、レイド様も『忙しいから邪魔するな』と、だったら情報通のチクリ魔様なら知ってるかもしれないと思いました」

確かにチクリ魔はギリ軍の情報収集役として働いていたので、もちろんそんな意味は知っていた。
しかし羞恥により中々言い出せない。

「えーと…だからその。アレを、口で…するんでし」

あまり説明したくないのが本心だったが、手ぶりを付けて極力言葉を使わずに教える。
だがタテジワネズミはなかなか理解ができなかった。
そして追い討ちをかけるように続けて彼は思いもしない事を言ってきた。

「うまく説明できないのなら、どうかやってみてくださいネズ」
「へ?!」

いくら誰も居ないとは言え、いきなりそんな事を言ってくるのは余程任務に飢えている哀れな人だなあと思った。
だが、チクリ魔自身も冬場はタテジワが眠っているベットにこっそり侵入して獣毛に包まれた生足に挟まって眠ることがよくあった。
その際布団の中で妙に薄い布の中にある柔らかいものが頬や頭に当たる感触の記憶が甦ると何故か胸が熱くなる。
彼女はゆっくりと聞き返した。

「どうか伝授を!」
「本当に・・・いいんでしか?」
「御意!」

チクリ魔はタテジワネズミの正面で立ち、彼の下腹部に顔を近づける。
ローブを捲り下着を引き降ろす。確かにそこには彼の性器があった。

「え…っ」

いつも堅苦しい表情のタテジワネズミの頬が紅潮し、おもわず声を上げる。

(タテジワのってこんな……)

普段は見ることの出来ないそれに少し驚いた。
痛くしないように優しく指で握り軽く扱いて、裏筋を軽く舌で行き来する。

「くっ…!」

無論人にしたことは無いが、思っていたよりも反応を示していて安心感とはまた『別のもの』が浮かんでくる。
タテジワの赤く硬く顔を出したそれを口の奥に入れ、完全に口に含む。そして大きな音を立てて吸い上げた。
棒付きキャンディを食べるように口内全体で舐めてゆく。自慰行為すらしたことのない彼にとっては十分すぎるほどであった。

「ふお…ぉッ!…はう…ぁ」

彼に似合わない女々しい喘ぎ声といつイきそうか分からない様子を見ると、自分の体もつい反応してしまいそうだ。
その想いを振り切って愛撫へと集中する。さっきよりも丁寧に先端から根元へと移動させる。
時々強く吸い上げ先端を締め付け時折上目でタテジワネズミの様子を覗う。
羞恥と快感に頬を赤くして必死に耐えているのを確認するとまた愛撫を続けた。

「ふぁ…んくっ…、ち、チクリ魔様…ひあぁぁッ……!?」

小刻みに震えていた体が硬く反り、タテジワネズミからチクリ魔の口の中へと注ぎ込まれる。
それを残さず飲み込もうとしたが、勢いが強くて少しだけ口の周りに飛び散った。

「はぁっはぁっ…」
「わかったでしか?こうゆうのを『フェラチオ』って言うんでし」

タテジワネズミは快楽から全身の力が抜け、へなへなと腰を落とす。
飲み込みきれなかった雫を指で拭って口で舐る。その時だった。

タテジワネズミの中の何かが途切れ、息を切らしながらタテジワネズミはチクリ魔へと詰め寄る。
彼女を床に押し倒し、ワンピースの下へ貌を入れる。

「きゃぁ!?な、何するでしか!!」

タテジワネズミは催眠術にかかったような貌を見せながらチクリ魔に言い聞かせた。

「伝授のお礼です。この感覚、チクリ魔様も味わえば…淡雪の如し……」
「や、やめるでし!」

チクリ魔は身をよじり逃れようとするが、タテジワネズミの体重に押しつぶされて中々身動きができない。
その間も彼女の下着がタテジワネズミの前歯に引っかかりゆっくりと取り払われていく感覚をチクリ魔はただ見詰めていた。
自分でも顔が熱くなっているのが分かる。タテジワネズミの荒い吐息が彼女の性器に触れる。
既に少し濡れてしまっている割れ目に触られると小さな体が跳ねる。

「あっ、あたいにそんなことして… ただで済むと思ってる…でしか…」

タテジワの顔が近づきペロペロと舐め始める。ピチャピチャと音がするのが妙によく聞こえてくる。

「やっ…それは『フェラチオ』じゃ…は…ぁん」

発情してしまった人獣は耳に入っておらず、本能的に夢中になって秘部を舐め続ける。
ぎこちなさが返ってチクリ魔の興奮を誘っている。
ただ舐めるだけでは飽き足らず、前歯で甘く噛んで豆を刺激し舌を奥へと入れてくる。
その大胆な行動に彼女の内に秘めていた感情が溢れだす。

「あっ、やっ…あんたにそんなことされると…あたい……」

舐めるのを止め、今度は吸い上げる。これまでなかった快感に身を振るえさせた。
タテジワネズミに喰われ込まれそうになりながら喘ぐ。
そんな自分が今ここの部屋にはいないサーチアイに監視されているを想像すると顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。
情報収集役である自分がこんな廉恥な情報を作り、上司に知られたらチクリ魔自身のイメージが台無しになること間違いないであろう。
しかしあえてそのことは忘れて今は貴重なこの時間を精一杯過ごそうと思った。

暫く時は流れ―そして、無情にもその時間はここまでとなった。

「ち、チクリ魔様…」
「はぁはぁ……タテジワ…」

顔を赤くさせながら名前を呼ぶ。
そして快楽から消耗した体力を振り絞って上体を起こし
しゃがんでいる彼の唇を奪った。

生まれて初めての発情が冷めてきた彼にもそれが何か分かった。チクリ魔は唇を離し小さくささやいた。

「このことは、二人だけの極秘情報でしよ」
「御意」

満天の笑みを見せると、タテジワネズミも普段誰にも見せない微笑を見せてくれた。
暖かい雰囲気が二人を祝福するように包み込んだ。
これは二人しか知らないある夕闇のひと時である。






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