傀儡魔法
レイド×ククリ


どうしてこうなってしまったのかわからない。
ククリは知らない部屋のベッドの上に座っていた。
どういうわけか、身体は動かない。
辺りを見渡せば、ベッドには天蓋がついているし、カーテンはレースだし、ドレッサーには小間物まで置かれている。
おかしな感じだ。
あまりにも理想的過ぎて、これは夢ではないかとククリは思う。
しかし、意識ははっきりしているし、身体を動かそうと何度試みてもまったく動かない。
そこで、ククリは記憶を辿るだけ辿ることにした。

―確か・・・そうだ。
勇者様と喧嘩をしたんだ。
喧嘩って言うより、勇者様が悪いのよ、あれは。
だってあんないかがわしい見世物なんかに行くから・・・。
しかも、こそこそと、やかなんじ。
だからあたし、とっても頭に来て闇雲に走って、迷子になっちゃって、それから・・・。
・・・・・・それから、魔物にあったんだ。

そこからは思い出せない。
ククリはようやく気づいた。

―あの時、何かされちゃったんだわ・・・あたし。


レイドが久しぶりに登城した午後、メイドのひとりがレイドに声を掛けた。
普段はメイドなどから軽率に話しかけられることを厭うレイドだが、彼女の一言でそんなことも忘れてしまった。

―一体どういうことだ・・・?離れに向かえなどと・・・。

離れ、というのはレイドが自分の私邸の隣に設けた邸宅のことだ。
ククリを魔族に迎えた暁には、そこに住まわせようと考えて作らせた。
本望は一緒に暮らすことなのだが、まだ青いレイドには想像しただけで恥ずかしくて実行される見込みはなかった。
そのくせ、願望だけが一人歩きして、内部はどんどん飾られていくのだった。
その、役目を果たしていないところへなぜ・・・と考えながら、到着したレイドは扉を上げた。

別段何もない。
いつも通りの閑静な部屋が広がっている。
何なんだ。
思って次々に扉を開く。
最後は臥室だった。
そこだけが、他と違っていた。
そこはレイドが作り上げた青写真そのものだった。
つまり、完成形だったのである。
愛らしいもので埋め尽くした室内。
その中で、もっとも輝く小さな少女―ククリは本当に美しかった。
レースが幾重にもほどこされた服を着て、リボンで結われた髪には僅かに水滴が見られた。
まるで、姫だ。
レイドは、自分の理想とするその姿にすっかり見入ってしまった。

一方、ククリはそれどころではなかった。
レイドが室内に入ってから、身体の呪縛が解けたような感じがしたのだが、やはり思うように動かず、勝手に動こうとさえしている。
それだけではない、鼓動が早くなっていく。
レイドを見るとなぜかドキドキした。
これまでは気づかなかったが、レイドが結構きれいな顔立ちをしていることがわかる。
そんなことを考えていると、身体がだんだん熱を帯びてきた。

―やだ、あたし、どうしちゃったのかしら。
これじゃレイドのことを好きになったみたいじゃない・・。

違う、それは違うと否定する心とは反対に、ククリの身体はついに勝手に動き出し、レイドに近づいていった。

レイドは目を見張った。
ククリが切なそうな顔で自分に身を寄せてきたからだ。
何度も夢に見たことだ。
やはり素晴らしかった。
しかし、夢想と現実との間の見境がつかなくなるほど病んではいない。

「お前・・・もしかして」

レイドはククリを検分する。
そして闇の世界に伝わる傀儡魔法に思い至った。
人間の肉体を傀儡するのは難易度が高い魔法だが、ここは魔界、目の前の少女にそういうことをする者がいてもおかしくはない。

「魔法、かけられてるのか・・・?」

言うと、ククリは涙を流しだした。

「・・・そうなんだな?言え、一体どいつにやられた」

どういうつもりか知らないが、こんな風に彼女の身体に手を出すなど万死に値する、とレイドは携えている刀に手をかけた。
だが、ククリは答えない。

言葉まで封じられているのか、操られているのか、ククリは口を固く閉ざしていた。
レイドに擦り寄るその身体は燃えるように熱い。
レイドは察した。

「まあ、おおかたは予想がつく。待っていろ。すぐ解いてやるからな」

レイドがそう言うと、ククリは淡く微笑む。
そのあどけない表情を見て、レイドは胸が熱くなると同時に、そんな少女をこのような状況にした者への憤りが強くなった。
一刻も早く彼女を解放したい一心で、部屋を飛び出そうとしたがそれは制止された。
ククリが彼を放さないのだ。

「れ・・・ど・・・、行かないで・・・」

すべては傀儡。
わかっている。
わかっているのに、レイドは切なくなった。
そんな自分を振り切るように、レイドはククリを押し戻す。
そして瞬時に手元から鎖を出現させ、彼女の両手を拘束した。

「やっ・・・!」
「辛いだろうが、魔法が解けるまで我慢してくれ」
「れいどぉ・・・」

レイドは振り向かず進んだ。

レイドが向かったのは、推定した魔物の生息する森だった。
魔物はレイドの姿に気づくと、なぜか満足げな笑みを浮かべる。
レイドの心中など気づく様子もなく、魔物は意気揚々と語りかけた。

「レイド様、お気に召したですか、あの魔法」
「やはり貴様か・・・」

間髪をいれず、レイドは抜き身を魔物に向ける。
ようやく魔物も、レイドが殺気立った目で自分を見ているのに気づいた。

「れ、レイド様・・・?」
「今すぐあの娘の魔法を解け」

レイドの意外な要求に魔物は困惑した。
絶対に喜ぶと思っていたからだ。
王子が敵方の娘にご執心、という噂は魔界では周知されているし、そのせいで本来の使命がおざなりになっていることも少々問題になっていた。
ならば、じれったい彼にその娘を献上すれば、何かしらの功績になるのではないかという考えだったのだ。

「レイド様・・・あの娘に懸想していたのではなかったですか?」
「・・・早く解け」
「それは・・・、できない、です」

魔物は説明した。
ククリにかけた魔法は特別なもので、目的を果たさなければ解けないということ。
彼女の身体の熱は疼きから来るもので、時間が経てば経つほど苦痛を呼び起こすこと。

「お前を斬れば、効力は切れるか」

説明を聞き終えたレイドの言葉はさらに冷たいものだった。
その低い声色に魔物は恐怖心を感じた。
本気だ。
肯定すれば触発、王子は自分に剣を振りかざすだろう。
レイドは逆鱗に触れられ、遂に声を荒げていった。
何度見たわからない、ククリを娶る夢。
ずっと手に入れたかった。
だが、こんな形でしか手に入れることが出来ないのなら、永遠に出来ない方がいい。
そのレイドの潔癖さは、魔界では理解されず、時に疎まれてさえいる。
魔物はばつが悪そうにしていたが、内心は自分の非を認めたくないようだった。

「レイド様のことを思ってしてるですよ。・・・綺麗事言ったって、あの娘がレイド様に振り向くことはないですから」

痛いが、事実だ。
レイドは思った。
とうに魔界中に知れていたのだ。
自分の恋情も。
それがどこへも行くあてなどないということも。
少女が自分を選ぶことは未来永劫決してないということも。
そして悟った。
責めるべきは、目の前の魔物ではなく、彼女に眷恋し、それを周りに悟られるほど盲進した自分自身であるということを。

「・・・・・・娘の身体を解放しろ。そうすれば命だけは見逃してやる」

レイドは魔物に詰め寄り、変わらず冷酷な顔で言い放った。

「は、はい〜」

魔物は即座に頷いた。
そうするしかなかった。

ククリの元に戻ったレイドは、まず彼女の両手首から鎖を外してやった・

「痛かっただろう」

もう大丈夫だから、といいながら白い手首についた痕をさする。

「レイド・・・」

ククリは違和感を感じていた。
自由になったはずなのに、身体がどこか解放されていない気がする。
変な感じだ。
口を開けば、異様な吐息がもれそうになり、途切れながらククリは話した。

「・・・あのね、まだ、変なの。熱くて・・・それで」
「わかってる」
「えっ?」

レイドはククリを抱きしめた。
こうなったのも、すべて自分のせいだ。
ならば、傷つけるのも、嫌われるのも、自分だけがいい。

「な、何・・・・?」

レイドは不思議そうに見つめてくるククリの顔を引き寄せ、唇を重ねた。

「っ!?」

強引に舌を割りいれれば、ククリが驚き、苦しそうなうめきを上げた。
一度口付ければあとは夢中で舌を絡め、そのままベッドに押し倒す。
こんなキスはしたことがなかったのだろう、抱きしめられた身体がひくりと震えた。
火照っていた身体が、深いキスによってまた熱をあげる。
ククリの身体がさらに痺れると、レイドは唇を放し、着ているワンピースに手をかける。

「あっ」

一気にワンピースを剥がされて、ククリは恥ずかしさのあまり息を呑んだ。
そのまま、スリップもはだけられるとククリは堪らずレイドの手を掴んで小さく叫んだ。

「やだっ・・・!やめてぇ・・・脱がさないで」
「熱いんだろう?」
「だからって・・・」
「じゃあ着たままでするのか?」

レイドの言葉の意味が、ククリには理解できない。

「・・・どういうこと・・・?」

可哀想に、この娘は本当に何も知らないのだ、とレイドは哀れみの目でククリを見つめた。
自分だって一応初めてなことに変わりはないが、育った環境上猥雑な情報など節操なく入ってきていたし、身分上でも女性に誘われることも少なくない。
しかしもとより、そんなものに興味はない。
ククリだから興奮するのだ。
抵抗する両手は片手で抑えるに事足りた。
スリップをたくりあげ脱がせると、僅かだが二つの膨らみがふるんと顔を見せた。

「や・・・見ないでえっ!」

ククリの叫びも届かないほど、レイドはそれに見入ってしまった。
抵抗するククリの手首を拘束しているのももどかしく、手を放せばすぐに鷲掴みにする。

「・・・!やめて・・・やめっ・・・!」

揉みしだく手にククリの手が重なったが、レイドの力はさらに強くなるだけで、ククリを顰ませる。
ククリのそれは思ったとおり柔らかく弾力もあったが、時折硬さのあるものを感じた。
徐にククリの顔を見れば、下唇をかんで必死に耐えているようだった。
痛いかと聞くと、ククリは顔を真っ赤にして抗議した。

「痛いわよぉ・・・なんでこんなことするのよぅ、えっち」

あまりに痛かったのか、ククリが涙を流しだした。
レイドは彼女の幼さを再認識させられ、これ以上は気後れして胸から手を放した。
こんなこと自体まだ早いのだ、とレイドは思う。
どうせならもっと先にしてやりたかった。
こんな形でなく。

そんなことを考えながら、レイドはククリの首筋に口づけた。

「ひゃっ!?」

驚く少女が可愛くて、レイドは歯を立てて甘噛みをし、次々に痕をつけていく。
レイドはどこにでもキスをしたがった。
胸や谷間、二の腕、ククリが嫌がれば嫌がるほど、愛しげに何度も印を刻む。

「やぁ・・・んっ」

ククリは今度は自分の出した声に驚いて、声をこらえようと指を噛んだのだが、レイドにすぐに抜き取られ、優しく舐められた。

「我慢しなくていい・・・もっと聞きたい」
「うぅ・・・あぁっ・・・!」

レイドはククリの胸の先端を舌で撫で上げながら、もう片方の先端に刺激を与え続ける。
ククリはその度に跳ね上がった。
声を聞くたび、レイドは興奮を覚え、ついに自分の着ているものも脱ぎ捨てた。

「きゃっ!レイド・・・」

下着だけになった彼を見て、ククリは思わず目をそらした。
普段は服の形状でよく見えないが、こうして見るとレイドの肩はしっかりと張っているし、胴も堅そうだった。
よくよく考えれば、彼は身長だって見上げるほどに高いのだし、ニケよりも早くに変声してしまっている。
さっき掴まれた手も強かった。
男の人・・・なんだよね、とククリは自分が脱がされたときよりも恥ずかしい気持ちになった。
それと同時に、ニケのことが思い出されてククリは自分の状況に幼いながも背徳感を感じ、この隙に逃げようと決意する。
しかしククリのそんな心もレイドは見透かしたのか、彼は彼女を強く抱きしめる。

「放してっ、放してよ・・・!」

レイドは何も答えない。
今更許されるつもりもない。
心が手に入らないのなら、他のすべてを奪いたかった。
どうせ一夜限りの夢なら、と。

ククリの乱れた三つ編みはシュルリと解かれた。
下ろした姿も美しく、レイドは髪にもキスをする。

「・・・も・・・やめてよぉ」

ククリの嫌がる姿は可愛らしいものだったが、あまり拒絶を繰り返されると、レイドも流石に辛かった。
悲しげに見つめ返せば、ククリは気まずそうに俯いた。

「だって・・・こんなの、何だか、えっちなんだもん・・・。恥ずかしいよ」
「・・・これからもっと恥ずかしいことするのに?まだ・・・」

このままでは収まりがつかないのに、とレイドはククリの内股を撫でた。
ここにも、ここにも痕をつけたい・・・。
そんなことを考えながら、ククリの至る所をいじる。
その手の感触が堪らず、ククリは嬌声を上げた。

「ひゃんっ!ううぅー・・なんでよっ!」
「・・・痛かったら言え」

レイドはククリを今度は優しく抱きしめた。
素肌が触れられ、体温が伝われば、不思議と怖くなくなってくる。
レイドがまた唇を胸に埋めているのが見えた。

―何で、あたし・・・こんなことされてるのに・・・、とっても、とっても恥ずかしいのに・・。どうして・・・。

どうして、気持ちよくなっているんだろう、とククリは自分を恥じた。
レイドはククリの先端を口に含んでいる。
レイドが、ククリの特別反応を示すところを狙って刺激するので、ククリはどんどん昇っていく。

「やっ、も・・・だめぇ!やぁ!」

吸い上げられて、びくっと大きく跳ね上がった。

「・・・まったく、本当に敏感なんだな」

レイドはククリの反応を楽しむように、徐々に身体を下にずらしていく。

「れ・・・だめって!待って!」

彼女の下半身にもあちこちに自分の印をつけていくと、白い下着に行き着いた。
それにも手をかけると、ククリが全力で抵抗する。

「いやぁぁぁぁ!だめ!そこは絶対だめっ!」







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