双眼鏡-4
ニケ×ククリ


「はぁ、はぁ、はぁ…ククリ、良かったよ…」
「勇者様ぁ…―あっ」

ゆっくり、ククリの中から俺自身を引き抜く。
ああ、エッチってこんなに良いものだったのか。

「…すきっ、勇者様」

はぁ…マジで、やばいくらい気持ち良かった…。


…………。

……………。

―――ぅえ?

「え、い、今っ…何て?」
「んっ、ん〜ん、…な、何でもなぁい」

ククリがそんなこと言うなんて。
…聞き間違いか?

…いや。
確かに、今小さい声で”すき”って言った。
多分、―いや、絶対言った!

「ばか、何でもないわけないだろ!…つか、ちゃんと聞こえてたってば」
「やだっ…もぉ、じゃあ聞かないでよぉ…」

「な、もう一回言ってくれよ〜」
「だっ…だめぇ〜〜!もう言わない!」

ククリは顔を赤くして、俺の顔を見ないように目をつぶってる。

…くぅ〜、そんな顔されると俺のイジワル魂が燃えるんだよなぁ。
もっともっと、赤くしてやれっ。

「…なぁ、ククリ」
「もぉ、言わないったらぁっ…」

「好きだよ」
「…ぇ」

どっかん。
…なんて効果音はしないが、そんな音が聞こえるかと思う程のククリの表情。
まぁ、こんなに真っ赤になっちゃって。

「ゆ、ゆ、勇者さまぁ〜〜っ…」
「ん?どうしたんだよ」

「べっ、別にぃ…あのぉ、う、うぅん…」

恥ずかしそうに俺の胸に潜り込む。
ククリの顔がめちゃくちゃ熱い。
期待通りのリアクションをしてくれるから、まったく面白いもんだ。

「なぁ、俺ククリのこと…好きだよ」

思いっきり耳元で囁いてやった。

「!!」

ぼぉっ。
今の音は本当に聞こえたんじゃないか?

「や、や、やだぁっ…もう、か、からかわないでぇっ!」
「何言ってんだよククリ、誰がからかってるって?」

「ゆ、勇者様がぁ〜」
「俺は真剣に言ってるんじゃないか!失礼な!」

とは言っても、こんなに顔がニヤけてたら…やっぱだめか。
でも、ふざけてても効果はあるらしい。

「愛してるよ、ククリぃ〜」
「〜〜〜!!」

ちゅどぉーん。
…いや、そんな音はしない。


しかし、そんなことを何度も繰り返してるうちに

Σばっこぉ―――ん!!

…とククリにしばかれてしまったので、その遊びはやむなく終了となった。

そして間もなく、トマの足音が聞こえた俺たちは慌てて寝床を整え、
何とかトマにバレることなくその場をやりすごした。

トマは結局、一晩中テントを往復しながら修理に励んでいたようだ…

―そして、次の日。

「〜あぁ、よく寝たぁ…」

テントのすき間からもれる朝日がまぶしい。

起きると横にはククリの姿が。
昨日あんなことをしたとは思えないくらい、安らかにすやすやと眠ってる。

トマ…はいない。
まーだやってんのか?あいつは。

「…〜んん」

と、その時。
ククリのお目覚めだ。

「ククリ、―はよぉ」
「あ、勇者様、おは…――あっ!」

途端に顔を赤くして、うつむいた。

「…お、おは…おは、よぉ…」

昨日のことを、思い出したんだろう。

「なぁ、ククリ?」
「…ん、な、なぁに…?」

「昨日のこと、トマには内緒な」
「う、うんっ」

「―こんなこと、してることも内緒だぞ」
「―えっ?…んぅ」

軽く、唇にキス。

「ゆっ、ゆぅ、勇者さまぁあ〜」
「…ん、じゃあちょっと外出てくるわ」

俺も明るい場所でククリの顔を直視出来るほど冷静ではいられない…
照れ隠しも兼ねて、トマを探しにいく。

「よ〜し出来たぞ!」
「…ん?」

近くの湖の側から、トマの声が。

「おーい、トマぁ」
「あっ、勇者さん!すいません遅くなってしまって…
ようやく完成したんですよ、見て下さいこれ!」

トマの手や足元にはガラクタ…
…いや、工夫の凝らした道具が大量に置いてあった。

「よくこんなに作ったよなー。…最初は修理するとか言ってたのに、
途中から色んなもん作り始めてただろ」
「いやー…はは、申し訳ないです。次々とアイデアが湧いてしまって…」

「いや、まぁいいけどさ…」
「勇者さん、まずこれなんですが…」

トマは一つ一つのアイテムの説明をし始めた。

…目が輝いている。
まぁ聞いてやるとするか。

「で、ですね…こっちは火薬を…」
「ほお。…って、うぉ!?」

ふと足元に目をやると、あの双眼鏡があった。

「えっ!?ど、どうしました?勇者さん」
「トマお前、これいつの間に!」

昨日は確かに俺とククリの寝床付近にあったはず…!

「あー、いや、それなんですが、昨日勇者さん達が寝てる間に
修理したんですよ」
「し、修理?って、ことは…」

…あれで不完全だったのか。
あれで不完全だった、ということは…

「も、もっとすごいのが見えるのか!?」
「え?ええ、まぁ…多分」

トマは頭をかきながら困ったような顔をしている。
もっとすごいのって、裸以上ってことか?
ど、どんなのが見えるんだ!?

「あれ、珍しいですね。あんな所に人が…」
「〜〜人だとぉ!?お、女か?」

「…え?さ、さぁー、ちょっと近づいてみないと…」
「トマっ、行くぞ!」

「えっ、あ、勇者さん!?」

トマと双眼鏡を引き連れて森の木陰で休む人影に近づく。
少し遠いが…女と見た!
なかなかナイスバディな姉ちゃん二人。

―よぉっしゃあ!!

「勇者さん、その双眼鏡で―」
「ま、待て!俺が先に見てみる!」

「は、はぁ…」

木の陰からそーっと双眼鏡でのぞいてみる。
―さぁ、どんなすごいものが見えるんだ!?

「…………」
「勇者さん、どうです?」

「……トマ、これ…」
「なかなかよく見えるでしょう!」

…手が震えてきた。

「ああ、すげぇクッキリ見えるよ。服の生地から、服の細かなシワから、
姉ちゃんの厚化粧まで…」
「そうでしょう!いやーこれで、遠くの風景もさぞかしよく見えることでしょうね!
それは普通の双眼鏡の3倍もの倍率でですね…」

「ほぉ、3倍もの。……〜〜って、おい!!!」
「え、どっ…どうしたんです?」

「全然透けねーじゃねぇか!!これじゃ普通の双眼鏡だよ!どうなってんだ一体!?」
「す、透けるって何のことです?それに勇者さん!
これは普通の双眼鏡じゃなくて、倍率のみならず高性能な―」

「何のことです、だって!?とぼけるなよっ!これは服が透けて見える…」

と言いかけて、はっとした。
…〜もしかして、コイツ。

「お、お前…修理する前にこれで人を見たことあんのか?」
「え?…いえ、壊れた時に倍率が1倍になってたんで、これは故障だと思ったんです。
そこから人はもちろん、風景も一度もレンズを通して見てはいないですけど…」

…………。

…と、いうことはだ。

この双眼鏡は元々は高性能な双眼鏡だった。
でも、壊れた拍子に何かが狂い、服が透けて見える双眼鏡になった。

―つまり、服が透けて見えてた時っていうのは、
たまたま”壊れて”ああなっただけってことか!?

「そ、それがどうかしましたか?」
「〜トマ!それを見てりゃあ良かったものをぉ!
そしたら絶対直そうなんて思わなかったぞ!あぁ勿体ねぇ〜…」

「なっ何の話です?―あのねぇ勇者さん、この双眼鏡は〜」
「うっ、うるせえ!くそぉ〜あの姉ちゃんの裸が見そびれちまったじゃ―」

「―勇者様」


―ぎくぅりっ。

………。

背後に、ひんやりとした空気を感じる…

がっしゃん。
パリン…

思わず、手を滑らせて双眼鏡を落とした。

「〜〜ああ!な、なんてことを、勇者さん!」

トマの声など、聞こえない。

「ははっ、ク、ククリ…どっ、どーし…!」

振り返って、思わず体が固まった。
…殺意を感じる。

「…勇者様の…」

…じり。

「〜〜ぁはは…」

…じり。

い、位置について。

よーい…
〜〜ドン!

「〜〜〜勇者様の、バカっ!大バカぁ〜〜っ!!!」
「ひぃい!ご、ご、ごめんってぇ!!」

「勇者様のエッチ、バカ、スケベっ!!あ〜ん!」

怒りながら、半泣きになりながら追いかけてくる。
て、手には魔法陣の杖がぁ!

「お、落ち着けククリーっ!!殺さないでくれぇー!」
「バカバカバカっ!だいっ嫌ぁい!!」

その双眼鏡で二度と服が透けて見えることは
なかったという。

…そしてここにも泣いてる人物が一人。
その服透けの効果を知らずに、双眼鏡を直した少年である。

その足元には、苦労して修理したあの双眼鏡のレンズが、
バラバラに砕け散っていた。

「あぁ〜っ、もう、せっかく修理したのに〜!
また一から作り直しだ…しくしく…」

一番被害を被ったのは、おそらくこの少年であろう。
…いや、それとも世界一クサイセリフを半ば強制的に聞かされていた、
ふんどし魔人か。

「ギップゥゥリャアァァァ!!!」

バッシャァァァン…

この精霊の奇妙な掛け声と同時に、
一人の魔法使いによって勇者が湖に突き落とされた。

「どえぇ!うおあ、死ぬ〜!たっ、助けてぐで…ブクブク」
「バカっ、バカっ!勇者様のバカぁ!」

ばしっ、ばしっ。

その魔法使いの杖が「バカ」という言葉のたびに、
勇者を陸と湖との死の往復運動に陥らせたことは言うまでもない…






SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ