天界の生活
ニケ×ククリ


魔王ギリを封印し、天界へやってきてから早くも一月が経とうとしている。
ニケとククリは、相変わらずのんびりとした生活を送っていた。

「ふぁ〜ぁ・・・天界もいいトコロなんだけど、逆に何も無さ過ぎてつまんないなぁ・・・。」
「そうね・・・あたしもパパやママに会えたのは嬉しいけど、おばあちゃんの家の方が楽しかったなー。」

天界というのは、実に平和なところである。住んでいる人も温厚な人ばかりで、争いごとなど
ニケとククリがこちらへ来てから一度も起こったことがない。
しかし、地上で魔物達と来る日も来る日も戦っていた2人にとっては、いろんな意味でつまらない場所であった。

「つまらなさ過ぎて・・・平和ボケになっちゃうな。」
「ほんと。」

と、その時。ニケの顔に何か冷たいものが落ちてきた。

「ん?何だ・・・?」
「あ、勇者様・・じゃなくてニケくん・・・」
「別にその呼び方、慣れないんなら「勇者様」のままでもいいよ。で何?」
「見て、あの黒い雲・・・。」

ククリの指差す先には、今にも雷が落ちてきそうな黒い雷雲が。

「こりゃあまずい・・・ククリ、雨が降り出す前に家に帰ろう!」
「うん!」

2人は雨が本格的に降り出す前に家へ帰ろうと、家路をひた走った。

「ふう・・・なんとか間に合ったな。」
「よかったぁ・・・服が濡れちゃうかと思った・・・。」

何とか雨が降り出す前に家へ戻れた2人。その直後、雨は本降りになった。

「あと少し遅かったらどうなっていたことか・・・。」
「もう、勇者様ったら大袈裟ね。」
「ははは・・・。」

2人はリビングに向かい、そこにあるソファに腰掛けた。

「雨が降るとは思わなかったなぁ・・・今から何する?ククリ?」
「そうねぇ・・・お裁縫の続きでもしようかしら。」
「裁縫・・・?ククリ、そんなことするの?」
「うん、こっちに来てからたまにお母さんに教えてもらってるの。」
「そうなんだ。知らなかったなぁ・・・。」

ククリはこっちに来てから、ククリの母に裁縫を習っている。
何せ地上では唯一のグルグル使いとしてニケと一緒に冒険をしてきたのだから、
裁縫などする暇はなかった。しかし、今は戦いがあるわけでもなく、
特に何もすることが無いので裁縫を教えてもらっているというわけだ。

「ところで何作ってるの?」
「それは・・・ヒミツ。」
「何でだよ・・・教えてくれたっていいじゃないか。」
「そのうち分かるようになるよ。」
「そう?つまんないなぁ・・・。」
「ごめんなさい。」

で、当のニケは何をしているのかと言うと、ククリの父に付き添って農作業をしている。
まだこちらに来て一ヶ月ということもあり、慣れない作業はつらいものだが、来た当初に
比べれば格段に仕事は出来るようになっている。

と、奥の部屋からククリの母が走ってきた。

「ククリ、大変よ。あなたのお部屋が雨漏りしてるわ。」
「うそ!大変!」

ククリはソファからぴょんと飛び起き、自分の部屋へ走る。それにニケも付いていく。

雨漏りはなんとククリのベッドの上からしている。ベッドは既にびしょ濡れだ。

「あーあ、どうしよう?これじゃあ寝られないよぉ・・・。」

ククリが悲しげで、少し泣きそうな声で言う。
あとから追いついたニケも、その雨漏りの大きさには唖然とした。

「これは派手に雨漏りしてるなぁ・・・おばさん、修理とか出来ないの?」
「どうかしら?村の大工さんは最近仕事が詰まってるそうだし、うちに来てもらえるのはだいぶ先かもね・・・。」
「おじさんはこういう修理とかはできないんですか?」
「あの人は大工仕事が全然できないのよ。」
「そうですか・・・。」

しばらくの沈黙の後、ニケはふと気づいた。

「それじゃあククリはどうするんです?ここじゃあ寝られないだろうし・・・。」
「そうねぇ・・・部屋は空いてないし・・・。」
「あ、あたし・・・勇者様の部屋で寝たいな・・・。」
「・・・え?」

ニケはこの発言にビックリしたのか、言葉が暫く出なかった。

「いいかも知れないわね。ニケくんの部屋は広いし、2人ぐらい寝れるわね。」
「いや、その、僕は困らないんですが・・・その・・・。」

しかし、良く考えてみればククリと寝るなんて普通のことであった。
地上ではギップルテントの中で2人仲良く寝ていたわけだし、宿屋でも2人一緒の部屋になることも多かった。

「そうか・・・オレって結構ククリと一緒に寝たりすること多かったんだな・・・。」
「ニケくん、それでいいかしら?」
「あ、はい。大丈夫です・・・。」

「また勇者様とお話が出来るし・・・嬉しいな。」
「そ、そう・・・?」

ニケは少し慌てたが、気を取り直して布団をニケの部屋に運ぶ手伝いをしに、ククリの母と押入れへ向かった。

「ククリ、窮屈かもしれないけど暫くはこれで我慢してね。雨漏りは早いうちに直してもらうから。」
「うん、分かった。」
「じゃあ、私は夕飯の準備があるから、あとはよろしくね。」
「はぁ〜い。」

ククリの母が去った後、ニケがククリに話しかけた。

「とんだ災難だなぁ。ククリ。」
「ホント。どうしようかと思っちゃった。」
「あ、あのさぁ・・・こうやって2人一緒の部屋で寝るのって・・・久しぶりだな。」
「そうね・・・。まだギリを封印しちゃう前は勇者様と一緒に寝ることが多かったわね。」
「だよなぁ・・・。」
「どうしたの、勇者様?何か気になることでもあるの?」
「いや、特にないんだけどね・・・その・・・久しぶりだな、って。」
「・・・変な勇者様。」

そうこうしているうちに夕飯の時間がやってきた。しかし夕飯になってもニケの様子は相変わらず変だ。
妙にそわそわしている。ククリはうすうす気づいていたのだが、ここ数日ニケの様子がおかしい。
何でもないのに戸惑ったり、ククリのことになると顔を赤らめて急に黙りこんでしまったり・・・
明らかに普段のニケとは違うと、ククリは感じていた。

(勇者様・・・本当に大丈夫かなぁ・・・何かあったのかしら?)


ニケはさっさとご飯を平らげると、部屋に戻っていった。
その後を追うようにククリも部屋へ向かう。

ニケはベッドの上で大の字になって寝転んでいた。

「勇者様〜・・・何かあったの?」
「いや、別にどうってことないんだけど・・・」
「お願い!何があったのかはっきり教えて!」

ニケは起き上がり、理由を説明した。

「いや、そのね・・・えーと・・・・・・」

が、はっきりと理由を説明しようとしない。

「何があったの?」

ククリが問い詰める。

「その・・・・・・気になって・・・仕方ないんだ。」
「何が?」
「えーと・・・その・・・」

ニケはまた口ごもってしまった。

「何が気になるの?教えてよ!」
「何でそんなに聞きたがるんだよ?」

ニケが少し怒ったような口調で問い返す。

「それは・・・その・・・勇者様の・・・そんなに悩んでる勇者様を・・・見たくないから・・・。」
「あ・・・。」

少し間が空き、ニケが言った。

「最近・・・ククリが・・・ククリの事が・・・気になって仕方ないんだ・・・。」
「え・・・ど、どういうこと?」
「だからさぁ・・・ククリの事が気になってるんだ・・・最近ずっと。」

意外な答えに、ククリは動揺した。

(勇者様がククリを気にしてる・・・?どういうこと?あたし、何かしたかしら?)

「その・・・多分、な・・・オレ・・・ククリが・・・好きなんだ。」
「・・・え?」
「だからさぁ・・・ククリが好きだから・・・ずっと・・・気になっちゃうんだと思うんだ。」

久しぶりに聞いた、ニケからの「好き」という言葉。
初めて「好き」と言ってもらったのは、「恋するハート」の魔法陣の中。
しかしそれ以降は言ってもらったことが無かった。
お互いの距離が近づいたせいか、「好き」とか「嫌い」とかあまり気にしなくなっていた。
しかし、さっきの一言で急速にククリのニケに対する想いは再び燃え上がった。

「ホントに・・・ホントに・・・ククリの事、好き?」

ククリの声が震えている。嬉しいのか、びっくりしているのか。
ニケはゆっくりと答えを返す。

「もちろん・・・オレは・・・ククリが・・・好きだよ。」
「ホントに・・・?ホントに好きなの・・・?」
「・・・嘘言ってどうするんだよ。」

ククリはポロリと涙をこぼした。

「おいおい、泣くなよ・・・。」

ニケがククリを慰める。しかし慰められれば慰められるほどその涙の数は増えてしまう。

「だって・・・だって・・・勇者様が・・・ククリを・・・「好き」って・・・言ってくれたんだもん・・・。」
「・・・ごめんな。ククリの気持ちに気づけなくて・・・。」
「・・・いいの・・・勇者様が・・・ククリのそばにいてくれたら・・・。」

暫くすると、ククリは泣き止んだ。でも泣いていたせいか、嗚咽がなかなか止まらない。

「・・・大丈夫?」

ニケが心配そうに尋ねる。

「・・・うん。・・・ごめんね勇者様・・・突然泣いちゃって・・・」
「いいんだよ・・・ククリの気持ちに・・・気づけなかったオレが悪いんだから・・・。」

「勇者・・・様?」

ふとククリがニケに話しかけた。

「何?ククリ・・・。」
「勇者様は・・・ククリが・・・好きなんだよね?」
「あ、ああ・・・。」

と、不意に意外な質問がニケに浴びせられた。

「勇者様は・・・ククリが・・・欲しい?」
「・・・・・・は?」

ニケは何のことだか見当も付かなかった。

が、すぐにその言葉が何を意味しているのか理解した。
しかし、いきなりそんな言葉が出てくるものとは思ってもいなかったのでニケも動揺している。
ここはひとつとぼけてみようと、ニケは口を開いた。

「あ・・・あー、ククリをお嫁さんにね・・・うん、欲しいよ。」
「ち、違うよ・・・その・・・あの・・・」

ククリの困った顔もまた可愛い。ニケも悪いと分かっていながらさらにとぼけてみる。

「じゃあ・・・何?」
「それは・・・えーと・・・・・・」
「・・・何?よく聞こえないんだけど・・・。」
「・・・えっち。」

ククリが「きゃっ」と言い、赤くなって顔を手で覆う。

「ごめん・・・実は何のことか分かってたんだ。」
「もう・・・勇者様のいじわる・・・。」

と、向こうの方からククリの母の声が聞こえてきた。

「ニケくん!ククリ!お風呂が沸いたから入りなさい!」
「あ、はーい!・・・あの、ククリ。」
「・・・なぁに?」
「この続きは・・・風呂上がってからでいい?」
「うん。その方がいい・・・。」
「じゃあオレ先に風呂入っていいかな?」
「いいよ。」

ククリの了解を得て、先に風呂へ入る。
風呂の窓は風でガタガタと揺れ、雨が窓に叩きつけられている。
どうやら夕方の雨は嵐になったようだ。
そんな中、湯船に浸かりながらニケはふと、ククリの事が頭に浮かんだ。

(しかし・・・なんでオレはククリの事「好き」とか思わなかったんだろ・・・
ククリって良く見ればものすごく可愛いのに・・・なんでだろ?)

しかし今ニケはそのククリから「自分をもらって欲しい」と言われている。
なんとも複雑な気持ちだ。

さっさと風呂から上がり、ククリを呼びにいく。

「ククリー。風呂上がったから次どうぞ。」
「あ、うん。」

部屋に戻ってみるとククリはあの特徴的な三つ編みを解いていた。勿論風呂に入って
髪を洗うからだろう。

「ククリのその髪型・・・可愛いな。」

ふとそんな言葉が口からこぼれた。

「やだ・・・そんなぁ・・・。」

ククリは恥ずかしがって、風呂の方へ駆けていった。
タオルで顔を拭きながら、ベッドに腰掛ける。

(今晩はどうなるんだろ・・・。)

不安と期待が入り混じった、夜の始まりである。

眠たくなったので、布団をかぶって横になる。
しばらくボーッとしていると、カチャリと風呂のドアが開く音がした。
そしてパタパタとスリッパの足音がしてきた。ククリだ。

ニケも体を起こしてククリを待つ。

ガラリと部屋の引き戸が開く。

「お待たせ・・・待った?」
「いや、このくらいどうってこと無いよ。」

風呂から戻ってきたばかりのククリ。片手には櫛、もう片手にはバスタオル。
勿論髪は編んでいない。

「髪の毛・・・そんなに長くて大変じゃない?」

ニケが不思議そうに聞く。

「ううん。たいしたこと無いよ。」
「そっか・・・。」

髪を櫛で梳きながらタオルで拭く仕草が可愛く感じられる。
もはやニケの目に映るククリの仕草全てが可愛く思えるまでになっていた。

「でさぁ・・・ど、どうする?」
「あ、あのね・・・ククリ、勇者様のお布団で寝たいな・・・。」
「・・・あ、ああ。構わないけど・・・。」

ニケの入っている布団の横からククリが入ってくる。
ふわっ、とククリの髪が揺れたかと思うと、なんとも言えない匂いが漂ってきた。

「ククリって・・・いい匂いがするよなぁ。香水でも付けてるの?」
「え?香水なんて・・・付けてないけど・・・。」

心なしかククリの顔が赤くなっているように見える。風呂上がりだから火照っているのか、
それとも照れているのか分からない。けど可愛い。

「じ、じゃあ・・・あのさぁ・・・初めは・・・その・・・キス・・・から・・・」
「・・・うん。」

普段からエッチなニケだが、今回ばかりは緊張する。何せ普段のそれとは比べ物にならないことを
今から経験しようとしているのだから。

優しくククリの顔を両手で触る。プニプニしていて気持ちいい。ククリもキスをし易いようにと、
体をこちらへ向けてくれる。ククリの吐息まで分かる様になってきた。かなり荒い。
当然だがククリも緊張しているのだろう。

「じゃあ・・・行く・・・よ?」
「・・・うん。」

顔を近づけ、唇を重ねる。







SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ