ひとつ屋根の下の恋
飯田源兵衛×飯田ミヤコ


「も・・・だ・・・め・・・あ・・・ぁあああ―――――!」

風に夏の匂いがまじり始めたある夜のこと。離れ座敷の閨の中には、睦みあう
二人の熱気がこもっている。
祝言の夜からまだ数ヶ月、娘むすめしたところが抜けないミヤコを、
大切に抱こうと心がけてはいるものの、初々しくもけなげに応えてくるさまが
いとおしくて、ついつい熱情が奔りすぎてしまう源兵衛だった。
源兵衛の激しい突きあげに、だんだんと身体がずり上がり、何度目かの
絶頂とともにミヤコの頭は布団から落ちてしまった。
自らもミヤコの中にそそぎ込んで、息をおさめていた源兵衛が、畳の冷たい感触に
ふと気づくと、白いのどをさらして、ミヤコがぐったりとしている。

「おい、大丈夫か?」

あわてて抱き起こし、布団に横たえる。なかば気を失っているミヤコのほほを
そっとたたくと、目をあけて弱々しくほほ笑んだ。

前の晩、いくら源兵衛に責めさいなまれても、翌朝は必ず誰よりも早く起きて、
登志とともに台所に立つミヤコだった。閨の中では愛情こまやかな源兵衛だが、
母や使用人の前ではミヤコに対し亭主関白にふるまった。けれどミヤコは、源兵衛に
「だらず!」を連発されても、つらくはなかった。家のこと、家業のこと・・・、
わからないことを少しでも早く覚えて、源兵衛の役に立ちたかった。

ふっくらと可愛かったミヤコの顔は、少し輪郭がするどくなった。普通なら
嫁の苦労のせいで、となるところだが、姑の登志はむしろきびしい源兵衛から
庇ってくれるほどだし、その源兵衛も、二人きりのときはやさしかった。
ミヤコの憂愁は、べつのところにあった。
初めての夜、源兵衛は、かたくなだったミヤコの心を辛抱づよくほぐし、やさしく
女にしてくれた。結ばれた後、「二人だけのときは、本当の名で呼んでほしい。」
と照れくさそうに頼まれた。身体も心も強そうなこの男が、誰にも見せない心の中の
やわらかい部分を、自分にだけ見せてくれた。・・・その瞬間から、恋におちていた。
ひとつ屋根の下に暮らす、それも正式な夫婦になった相手に、恋をして苦しい
というのも変な話だが、出会った夜に身も心も奪われ、嵐に巻き込まれるような恋に、
淡い想いすら知らなかったミヤコの心が惑わされずにいられるはずもなかった。

骨がきしむほど愛されても、身体が離れたとたん、さびしさに襲われる。
こんな自分は、なんと欲のふかい女なのだろう・・・。
それは、幸せなさびしさというものだよ、と教えてくれる人は誰もいなかった。

次の朝、台所で朝飯の後片付けをしていたミヤコは、かまどの前でうずくまり、
食べたものを少し戻してしまった。
医師が呼ばれ、帰りがけに、部屋の前で心配そうに待っていた源兵衛に向かって

「奥さん、おめでたですぞ。よかったですな。」

と声をかけた。部屋に入ると、ミヤコが

「あなた・・・私、ややが・・・。」

しあわせそうにそう告げた。かたわらの登志もにこにこしている。源兵衛は感激で
言葉も出ず、ただうなずいた。

それからの数ヶ月はまたたく間にすぎた。ミヤコはつわりがひどく、暑い季節とて
華奢な身体がますます小さくなるようだった。源兵衛ははれものにさわるように
ミヤコをいたわり、ようやく秋風の立つ頃には安定期を迎えた。
栄養を摂るように勧められ、そうつとめた結果、ミヤコは結婚当初のように
顔に丸みを帯びて、はためには幸せそうに見えた。

だが、このごろのミヤコは、妊娠前とはまた違ったかげりを心にかかえていた。
源兵衛の子を身ごもったとわかった時、よろこびと誇らしさで胸がいっぱいになった
ミヤコだったが、同時に、これで闘いから降りることができたような安堵感もあった。
けれど、おだやかな日々の中で、寂しさを感じずにはいられなかった。
源兵衛が、近ごろあまりミヤコのそばに寄らなくなったことも気がかりだった。
梅雨明けごろまで、源兵衛はミヤコのまだふくらみもせぬ腹をなでては、たわいもなく
喜んでいた。それが、このごろでは夜遅くまで帳簿をつけたり、寄り合いと称した
酒席に出かけたりで、ミヤコには早く寝るように言いつけて、自分は遅くなってから
寝床に入るようになった。
源兵衛は侠気があって村の若者たちに人望があつく、なにかと会合に呼ばれては
夜出かけることが多かった。それでも、以前は夜おそく帰ってきてからもとめられ、
そんな時はしらじら明けまで愛してくれたものだった。
そういう生業の女で、無聊をなぐさめてでもいるのだろうか・・・。男同士のつきあいで、
そういう店に行くのは、しかたのないこと・・・ものわかりよくそう思おうとしても、
自らの身にきざまれた甘い記憶がミヤコをくるしめた。

ある夜、寄り合いから帰ってきた源兵衛は、夫婦の部屋にそっと入ると、ミヤコを
起こさないように静かに布団に入った。

・・・部屋にはミヤコの香りが満ちている。
この部屋で過ごしたさまざまな夜々のことが脳裏によみがえり、たまらなくなる。
源兵衛は、どうしようもなくきざしてきた自身を、自分で慰めはじめた。
ミヤコの美しい肢体、その惑乱のさまを思い浮かべ、息を荒げていると・・・。

「あなた・・・、大丈夫ですか?」

うなされているとでも思ったのだろう、ミヤコが声をかけ、のぞきこんできた。
源兵衛は、はだけた浴衣からそそりたつものを、あわてて隠そうとしてはね起きた。
ミヤコは、驚いて声も出ないようだったが、やがて意を決して、

「・・・私に・・・させて下さい。」

白い手をのべて、源兵衛のたかぶりを、そっとにぎった。

「よ、よせっ・・・。」

口ではあらがったが、ふいをおそわれた驚きと、あたたかくやわらかい手のここちよさに、
力が抜けて、それ以上は何も言わず、ミヤコのするにまかせた。

・・・だが、いかんせん、おぼこなミヤコのすることゆえ、ただ握ったりはなしたりする
のみでは、蛇の生殺しのようなものだった。

「口で・・・してくれんか。」

たまらずに源兵衛が頼むと、ミヤコは、驚くほど素直に、源兵衛の股間に顔を寄せた。

「待て。それじゃあ腹が苦しいだろう。」

源兵衛が横になると、ミヤコは少し下の方に下がって自分も横になった。

・・・目の前に揺れているものは、これまで幾度となくミヤコを貫き、啼かせてきた
ものだが、こうもまのあたりに見ることは初めてだった。ミヤコは少しこわいような、
いとおしいような、圧倒されるような気持ちで、手をそえて先端にそっと口づけた。
絹のような感触に、そっと唇をすべらせる。不意にゆらりとゆらめき、驚かされる。

「い、いきなりそこはよせ・・・。口に・・・ふくむんだ。」

源兵衛の言葉に、口を開けてみるが、ためらわれて、胴の部分を横ぐわえにしてみる。
唾液が出てきて、すこし円滑になり、だんだんと先端の方に移動して、口にふくんだ。
ずっと口を開けているので口角が痛くなり、また深くふくみすぎてえずきそうになる。
だが、ミヤコは涙目になりながらも一生懸命源兵衛のそれを口で愛した。
源兵衛は、敷布をつかみしめて、凶暴な衝動をおさえていた。
目を閉じて、規則的な動きを繰り返すうち、ミヤコは、なんだか下を犯されているような
錯覚にとらわれ、夢中で口を動かした。

元々自分で刺激していたこともあり、また清純なミヤコが思いもかけぬ隠微な行いを
する図に、源兵衛はほどなくして強い射精感をおぼえた。

「もっ・・・もうええ。放せっっ・・・!」

ミヤコが驚いて口を離すのと同時に、源兵衛の放ったものが、ぴしゃりとミヤコの
ほほにかかり、とろりと垂れた。

「うっ・・・げほ、げほん!・・・」

一瞬おそく、少し飲んでしまったらしく、ミヤコがせきこんだ。
源兵衛は、あわててミヤコの背中をさすった。
すこし落ち着いて顔を上げたミヤコの口の端から、おのれの放ったものがこぼれている。
源兵衛はたまらずにその唇を奪った。
長く、深い口づけに、ミヤコは気が遠くなりそうになりながら、夫の背にしがみついた。

・・・唇がはなれ、まっすぐ見つめてくるまなざしに、素直な言葉がでた。

「もう、こげなふうにしてもらえんのかと思っとりました・・・。どこぞの女の人と・・・。」
「だらっ!そげなことしとらんけん、さっきのようなことをせねばいけんのじゃないか。」
「だって・・・。最近、お仕事やら寄り合いやらで、いっしょにおってもくださらん。

もう、私のこと、いやになったのかと・・・。」

「・・・いっしょにおったら、欲しくなってしまうだろうが。」

ミヤコは、驚いて源兵衛の顔をみつめた。源兵衛は、照れくさくなってがばっとミヤコを
抱きしめてささやいた。

「俺はな・・・ようけ子供がほしい。俺と、お前の子だ。商売女に病気をうつされてみろ、
お前が子を生めん身体になってしまう。だけん、俺はよその女と寝たりせんと決めたんだ。
それに・・・お前で充分間に合っとるけん。他の女はいらん。」

・・・お前に惚れとるけん・・・そんな言葉は決して出てこないけれど、ミヤコはちゃんと受け取った。

「俺たち、ちょっこし焦りすぎとったかもしれんな。これから何十年もいっしょに
おるんだけん。ゆっくりやったらええ、な・・・。」

ミヤコは、源兵衛の広い胸の中に抱き込まれながら、やっと息ができる、と思った。

月が満ちて、ミヤコは無事に女の子を産んだ。
ミヤコが産褥の床をはらってひと月ちかくが過ぎ、自室で赤子に乳をやっていると、
源兵衛がやって来た。
白く張った乳房から、まぶしそうに目をそらし、赤子を見て相好をくずした。

「暁子はよう乳をのむのう。」
「ええ、よう肥えて・・・。」
「・・・お前は、どげだ?もう、身体の方はええのか。」
「はい。もう大丈夫です。」
「・・・それは、もう夫婦のことをしてもええ、という意味か?」
「え・・・。は、はい・・・。」

消え入りそうな声で、ミヤコが答えた。
源兵衛も真っ赤になり、急にそわそわと、

「ほんなら、俺は店があるけん・・・。」

部屋から出て行った。

夫が去った後を、目で追うくせはまだぬけないけれど・・・。

(もう、大丈夫だけん・・・。)

ひとつ屋根の下の恋は、終わったわけではない。
かたちを変え、おだやかに、これから何十年もつづくのだ。

障子ごしのやわらかな日差しの中で、おなかがいっぱいになった暁子が
小さなあくびをした。






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