小ネタ61
番外編


研究室のドアが勢いよく開いた。そして次の瞬間、湯川に複数の粒が薫の威勢の良いかけ声と共にぶつかる。

「鬼はー外ー!福はー内ー!」

湯川は顔をしかめた。

「内海君…一体なんのつもりだ?」
「何って、今日は節分ですよ!だから豆まきに来ました。先生は物理だとか数式だとかで頭いっぱいだから伝統行事にも目を向けなきゃ!」

湯川は呆れた顔で、

「全く。ここは研究室で精密な機械などが置いてある。豆まきをして機械に不具合がでたらどうする?」
「あ…すっすいません…。今片づけますね…。」

そう言うと薫は箒とちりとりを取り出した。
研究室には無言の時が流れていた。薫の箒を掃く音と湯川のパソコンのタイプ音だけが虚しく響いていた。
薫はさすがに反省していた。

(やっぱりまずかったかな…。掃除終わったら帰ろう…。)

そう考えていた薫の背後で、ビニールを広げる音がした。

「何やってるんですか?湯川先生?!」

湯川は黙々と実験機材にビニールシートを被せていた。

「これなら実験機材への被害は抑えられるだろう。」
「え…?湯川先生…。」
「今日だけ特別だ…。」

そう言いながら湯川は早速薫に豆をぶつけていた。


この後二人が栗林さんにこっぴどく叱られるのは言うまでもない。






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