当直
藍沢耕作×冴島はるか


「藍沢先生…起きてください」

冴島は隣で寝ている藍沢の肩をゆすった。起きる気配がない。

「藍沢先生…早くしないと他の先生たちが来ちゃいますよ?」

冴島は起こすのをあきらめ、身支度をし始めた。
冷静になって考えてみるとなんだか不思議な気分だ。
仕事の話しかしない相手と、こんなことになっているなんて…
しかも、ここは病院だ。
なぜこんなところで…
思い起こせばほとんど衝動的なものだ。

当直に当たっていたのは冴島、森本、そして藍沢の3人だった。
森本は、急患がきたら呼んでくれ、といってどこかへいってしまった。
急患はなく、これといって何も起きずに時間だけが過ぎた。

「冴島。ちょっといいか?」

藍沢が話しかけてきた。冴島はうなずいて藍沢のあとをついていった。

「藍沢先生?どうかしました?」
「いいから」

藍沢は、黙ってろ、とでもいうような目で冴島を見た。
冴島は大人しくついていくことにした。

「中に入れ」

藍沢は半ば命令口調で言った。
そこは外来の診察室だった。
冴島は藍沢にとりあえず従った。

「何か探しモノですか?」
「座れ」

冴島は少し不愉快な気持ちになりながらも藍沢の言うとおりにした。

「これでいいです…か…?」

突然冴島の額に藍沢の手が振れた。
冴島は反射的にその手を払った。
藍沢の触れた部分が熱い。冴島は自分の鼓動が速くなっている事に気付いた。

「やっぱりな…」

藍沢が呟くように言った。

「…なんですか?いきなり…」
「冴島。熱あるだろ」
「え?」

藍沢は体温計を冴島の前に差し出した。
拍子抜け。まさにそんな感じだった。
冴島は体温計を受け取るとわきの下に挟んだ。
藍沢がため息をつきながら横にあるベッドに座った。

「お疲れみたいですね」

冴島は藍沢を見ずに言った。

「いや…。そっちこそ、熱まで出して…」
「不覚です」

藍沢はいつも自分のことは話さない。それがなんだかもどかしく思えた。

「藍沢先生は、そうやって、いつもはぐらかすんですね…」
「何が?」

カシャンという音を立てて体温計が床に落ちた。

「冴島?」
「どうしてですか?」

冴島は藍沢に近寄ると、そのままベッドに押し倒した。
藍沢は驚いた表情を一瞬見せたが、すぐに冷静な藍沢へ戻った。

「やっぱり熱があるな…」

冴島はそっと藍沢の上にのった。

「そうかもしれません」

そう言うと、冴島は藍沢に口付けをした。

何度か唇を重ねると、冴島は服を脱ぎだした。

「ここで?」

藍沢は驚きを見せた。

「いやですか?」

藍沢はゆっくり起き上がると、冴島を抱きしめた。

「別に、いやじゃない」

冴島は自然と頬が緩んでいた。
藍沢は下着姿になった冴島をベッドに押し倒した。
冴島は藍沢の首に手をまわした。

「いいのか?」

藍沢は確認するように言った。

「はい…」

冴島は藍沢を強く引き寄せた。
藍沢はそれに答えるように口づけをした。
優しいキスはだんだん激しく、淫らになっていった。

「藍沢…先生…」
「…冴島」

二人は同時に達した。
ティッシュで拭き取りゆっくり離れ息を整えた。
冴島は全身の力が抜けたようにベッドに身体をあずけた。
藍沢は冴島の頭をそっとなでた。
いつもとは違う藍沢に少し戸惑った。

「藍沢先生?」
「ごめん、大丈夫か?」
「なんで…あやまるんですか?」
「平気か?」
「安心してください。責任とれなんて野暮な事、言いませんから」

冴島は冗談めかして言った。

「それに、今日は平気な日なんで。大丈夫なんです」






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