良い事(非エロ)
藤川一男×冴島はるか


あの悲惨な千葉での脱線事故から数ヶ月。
緋山の怪我の後遺症も治り、フェロー達はすっかり元通りの日常を過ごしていた。

「何かあった?」

術後の片付けをしている白石は、同じく隣りで作業する藤川に唐突に話しかけた。

「え?…何が?」

藤川はポカンとして白石を見る。白石は手を休める事なく、

「いや、何か良い事あったのかなって。嬉しそう…ってかニヤけてない?」
「あっ…わかる?わかっちゃう?白石には。」

作業をする手を一旦止めて、いかにもその"何か"を話したそうに藤川が近付いてくるのを
少々引き気味に見やりながら白石は仕方なしに「…うん。」と返事をした。

「実はさ、俺今日誘われてるんだよね〜…女の人に。」
「へ〜!」

その話題に白石は若干やじ馬的な気持ちが芽生えて話に食いつく。

「相手は誰なの?お婆ちゃん?」
「んなわけねーだろ…」

藤川は周りに人が居なくなったのを確認し、小さな声で答える。

「……冴島…さん。」

白石は信じられない!という表情で口を両手で覆い、目を丸くしている。

「いやさ、前にね、彼女に食事に行かないかって誘ったんだよ。

勿論変な意味じゃないんだけど。…でもウザいって断られ続けてたの。」
話の途中で白石がプッと吹き出す。

「でも、今日は何故か冴島さんの方から誘ってくれてさ。

何かたまには俺と話してみたいんだって。決してデートじゃないって強く否定されたけど。」
苦笑いする藤川に、白石は今度は少し微笑んで「そうなんだ。」と返した。

「いいんじゃないかな?楽しんできなよ。」

作業を終えた白石は、「頑張ってね」と藤川に軽くウィンクして廊下の向こうに去って行った。






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