新鮮な気持ち(非エロ)
藤川一男×冴島はるか


その患者はわがままし放題で藤川と冴島を悩ませていた。傷の消毒が終わり立ち去ろうとすると急に暴れだした。
それを止めようと二人で押さえ鎮静剤を打った。その際冴島が怪我を負っているのに気がつく。
多分、抑えているときに怪我をしたのだろう。

「冴島、手診せろよ。」

藤川は血に染まっている冴島の右手をつかむ。

「大丈夫です。自分でやりますから・・・藤川先生は気になさらないでください。」

冴島は藤川の手を取り払おうとするが藤川は離そうとしない。

「俺が診る。あの患者を管理しなかったからあんなことになったんだ。俺には責任があるんだよ。」

そう言うと藤川は冴島を消毒液臭い診察室に連れ込み乱暴にベッドに座らせた。

「何するんですか!!」

「お前が素直に治療としないからだろう!!無理すんなよい、痛いくせに!!」

藤川は血が出ている手を丁寧に消毒し、仕事に差し支えない包帯の巻き方で巻いた。

「どうだ、動かしても痛くないか?あと動かし辛くないか?」

「はい、大丈夫です。」

「お前はフライトナースで忙しいからさ、邪魔にならない巻き方したから・・・」

「お気遣い、ありがとうございます。」

「本当に素直じゃねえな、お前。そういう時は普通ありがとうだろう?気遣いとかじゃなくてさ・・・俺、別に冴島に感謝されたくて
手当てしたえわけじゃねえし・・・」

「そう言っても感謝しろってさっき言ったじゃないですか?」

「お前はああ言えばこう言うだな。もう少し素直になんないと彼氏できねえぞ。」

「大きなお世話です。そう言う藤川先生だって彼女いないくせに・・・」

「俺はいいんだよ、たく・・本当に素直じゃねえな。折角、美人なんだからさもっと、トゲトゲしないで優しくなれば?」

「それって、どういう意味ですか?」

藤川は何を言っても食いかかってくる冴島の頭に手を乗せた。ポンポンポンと優しく三回叩く。
キョトンとしている冴島に今できる最高に笑顔をつくった。

「そんなに肩肘張ってたら、その内倒れちゃうよ。少しは回りに弱み見せたら?それに、お前が倒れちゃうとみんな心配するから・・・口では気に食わない
って言っていても緋山だって、お前のこと信頼してんだからさ・・・」

今まで言われたことがない言葉をかもあの藤川に言われて冴島は動揺していた。

「本音とか愚痴とか吐きたかったら俺に吐けよ。俺、医者としてじゃさきっと冴島には役不足だけど・・・愚痴ぐらいは聞いてやれるからさ・・・なっ。」

そう言ってもうまるで妹に語りかけるように優しくあたまを撫でる。冴島は兄弟にあたまを撫でられた経験がないため、新鮮な気持ちだった。
なんだか、照れくさいような・・・恥ずかしいような・・・相手が藤川だからこそ少しむかつく気持ちもある。
ただ、優しく撫でてくれる手があったかくて心地よくて・・・もう少しこのままでもいいと思ってしまった。

「まあ、俺より女の方が愚痴りやすいだろうけどさ、たまには俺にも聞かせろよ。白石がビビッたって言ってた本性ってやつをさ・・・」

藤川は最後に一回ポンとあたまを叩いて診察室を出て行った。冴島はしばらくその場から動けなかった。
そっと今まで藤川が手を置いていた場所に触れてみる。あきらかに自分の体温だけじゃない藤川に手のぬくもりが残っていた。冴島はふと自分の体温と心拍が上がっているのに気づく。
あんな、無能な男に胸が高鳴るなんて信じたくないが実際、自分でもわかるくらいドキドキしている。これは恋なのかまだわからないが藤川はいい人なのは真実でこれからはもう少し話てみようと思った午後だった。






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