鈍かった幼馴染み
ラスカル×まやちょん


「今年もまだ10日ほどありますが、とりあえずお疲れさまね。
今夜は無礼講、楽しんでいって頂戴ね。…皆さんグラス持った?では、乾杯!!」

ウララ学園長の音頭を合図に、銘々のグラスを高く上げて一斉に大人達は叫んだ。

「乾杯!!」

今夜はウララ学園の教師達の忘年会。
お祭り好きなここの教師達が生徒達の目を気にせず普段以上に騒げる、
年に一度の無礼講中の無礼講の夜である。

「ラスカルー!今年もお疲れ様ー!!」
「痛い痛い、絡むなバラバラマン!」
「おいバラバラマン、てめぇラスカルから離れろよな!」

学生時代からずっと変わらず仲の良い3人組。
バナナ組のラスカル、リンゴ組のバラバラマン、オレンジ組のまやちょんのいつものやり取りを、
周囲は毎年よく飽きないものだと微笑ましく眺めていた。

教師達がそれぞれ歓談をしていると、宴会場の一角でウララ園長が突然手をたたいた。

「皆さん、皆さん、聞いて頂戴な。
今日お久しぶりにゲストで来ていただいてたおゆき先生、今度ご結婚なさるそうよ」

おめでたいニュースに宴会場がにわかに色めきだつ。

「…嫌ですわ園長先生、わたしもつい口が滑ってしまって…」
「あらあらあら…そんな素敵なニュースを黙ってたなんておゆき先生も水臭いですよ?
新しい職場の方ですって?」
「…えぇ」

真っ白いおゆきの顔が仄かに赤く染まるのを見て、一同から祝福の声がかかる。
ラスカル達3人も我先にとおゆきに心からのお祝いをし、
順番待ちをしている他の教師達にその役を譲って宴会場の端のテーブルに着いた。

「そっかぁ、おゆき先生が結婚ねぇ」
「幸せそうだったな」
「いいないいなー、結婚かぁ、僕らも呼んでもらえるよねー?」

ふとラスカルが、グラスの果実酒をクイッと飲み干して、
おゆきの結婚話で盛り上がっているまやちょんとバラバラマンに向き直った。

「なぁ、私達3人の中で一番に結婚するのは誰だろうな」

まやちょんはピクリと眉を上げ、「さぁな」とだけ小さく言ってさらにカクテルを喉に流し込む。

「…僕だと思うよ…」

バラバラマンは両手で持ったグラスを見つめながら言った。
微妙な空気の中、ラスカルとまやちょんはバラバラマンを横目で見た。

「…なんでだよ、バラバラマン…」

おそるおそるまやちょんは聞いた。

「…だって僕、故郷に帰ったらフィアンセがいるんだもの」

宴もたけなわになり、宴会場の教師達はしたたかに酔っていた。
特にまやちょんは普段では考えられない飲み方をし、ツブれかけていた。
バラバラマンにフィアンセがいる。
もちろん同僚の幸せを心から祝いたいという気持ちはあるが、
それよりも自分の問題がまったく進歩していないのが悲しくなり、
案外酒豪なよしこ先生を相手に無茶な飲み方をしていたのだ。
そんなまやちょんを眺めながら、一番隅のテーブルでラスカルとバラバラマンはサシで話をしていた。

「…フィアンセって…初耳だぞお前」
「まぁ、フィアンセというか、許婚かな。言う必要もなかったし」
「やっぱりバラ人間の女性なのか」
「正直な話僕らは同じ種族でないと子孫を残せないんだ。
でも誤解しないでよ?親の言いなりとかじゃないから。
確かに相手の子が生まれてすぐに決まった許婚ではあるけど、
僕はちゃんとその子と結婚したい、愛してるって思ってるんだから」

普段ニコニコしてるバラバラマンから「愛してる」なんて率直な言葉が出たことに
ラスカルは驚きを隠せなかった。
バラバラマンはラスカルをチロリと見ながらグラスに口をつけた。

「……ラスカルこそどうなのさ?」
「…何がだ」
「呆れた…。鈍感もそこまでくると病気だね」
「…別に…何も気づいていない…訳では…」

バカ騒ぎをする教師達の影で無茶飲みしているまやちょんをボンヤリ見ながら、
ラスカルはさらに一口果実酒を呷る。

「…ラスカルは昔から差別もえこひいきもしないもんね。
誰かを特別視しようにも、その方法が分からないんだよね」
「…………」
「職業柄さ、『幸せになって欲しい人』なんて数え上げてもキリがないじゃない?
でもラスカル、僕には分かるんだ。
『幸せになって欲しい人』と、『自分が幸せにしたい人』とか『一緒に幸せになりたい人』は違うよ。
それを気づかせてくれた人が例のフィアンセでさ…」

ラスカルはバラバラマンのノロケを話半分に、手酌で自分のグラスに果実酒を注いだ。

「まやちょん先生、まやちょん先生、あらあら困ったわねぇ」
「園長、やっぱりまやちょん起きませんか?」
「…わたしと同じペースで飲むなんて…無茶するからよ」
「えぇ、よしこ先生、バラバラマン先生…困りましたねぇ」

忘年会もお開きとなり教師達は帰路に着こうとしていたが、まやちょんは遂に眠り込んでしまった。

「僕がおぶっていくわけにもいきませんからねぇ」
「まやちょん先生のお家を知っているのは?バラバラマン先生だけかしら?」
「いや、園長、私も分かるぞ」

少し離れたところからラスカルが声を上げると、教師達は一斉にその方向を見た。

「今日は自転車じゃないし、私がおぶって家まで送ってくる」
「まぁまぁ、それは良かったわ。ラスカル先生、頼みましたよ」

まったく他意のない信頼しきった笑顔で、ウララ園長はまやちょんをラスカルに託した。
バラバラマンは、ほんの少し満足げだった。

ラスカルはまやちょんを背負って夜の街をトボトボ歩いた。
想像よりかなり重かったから、相当まやちょんは鍛えているのだろう。
それでもやはり自分の肩や腕よりはるかにまやちょんは細い。
この身体でどうやったらあんな動きが出来るのだろう……
そう言えばクラスにも3歳児のような体型で軽く5メートルはジャンプする生徒がいる。
「くのいち」だと聞いたが、身体の使い方が普通と違うのだろうか…
そんなことをボンヤリ考えながらラスカルは重い足取りでまやちょんの家を目指した。

ピンポーン

まやちょんの家に着き呼び鈴を鳴らしたが返事がない。
こんな夜遅くに呼び鈴を鳴らしたところですぐに出てくるはずもない。
ラスカルはそう思っていたので、辛抱強く1分置きに呼び鈴を鳴らし続けた。
しかし10回目の呼び鈴にも反応がない。
留守なのだろうか。

「おい、まやちょん。起きろ。家に着いたぞ」

ラスカルはまやちょんを起こしてカギを開けさせるしかないと考えた。

「お前んち留守みたいなんだ。カギ持ってるだろ?起きろー」

まやちょんをユサユサ揺するが、一向に起きる気配がない。

「まやちょん、おい、まやちょん!」
「ん……」

まやちょんは低く呻いて、また眠り直してしまった。
これではどうしようもない、家の門の前にまやちょんを置いて帰るわけにもいかない。
おそらくまやちょんの家族は今夜は留守だ、ここで待っていても仕方がない。
ラスカルは小さくため息をついた。止むをえんな、とばかりに。
そしてまやちょんを背負ったまま自分のアパートへの道を急いだ。

「ふぅー…」

部屋に着きまやちょんを下ろし、ラスカルは汗を拭った。

「…布団敷かなくてはな…」

たまに生徒が泊まりに来るから来客用の布団はいつでも用意できる。
洗い立てのシーツを来客用布団にかけながら、
ラスカルはまやちょんをおぶってここまで帰ってきた時のことを思い出していた。
まやちょんの家に送ろうとしていた時は努めて意識しないようにしていたが、
流石に自分の部屋へ連れてくるとなると余計な考えが沸き起こった。
先刻のバラバラマンの言葉がグルグル頭を巡り、
同時に「こんなにまやちょんは細かったろうか」と妙な気分になった。
酔っているせいだ。ラスカルはそう思うことにする。
まやちょんを抱き上げて、キチンと敷いた布団に寝かせた。

「…まったく…どうしろというんだ…
………
…上着ぐらいは脱がせたほうがいいか…」

ラスカルは若草色のまやちょんの上着に手をかけ、丁寧に脱がせた。
七分袖のシャツの先から伸びるまやちょんの腕はやはり細いが芯があって引き締まっている。
子犬のように遊んだあの少年時代、自分と何も変わらなかったはずなのに、
いつの間に自分とまやちょんはこんなにも違っていたのだろう。
式典のときぐらいしか化粧をしない肌は少し焼けているが、
自分とは違ってキメが細かく滑らかだ。
ラスカルはまやちょんの頬に触ろうと手を伸ばしたが、寸でのところで引っ込めた。

「…何をやってるんだ私は…」

あの時と同じままではいられない。
しかし自分の中に生じた感情をどう捉えて良いか分からなかった。

ラスカルは昔から、主に後輩からかなりモテていた。
告白された経験は数え切れないし、何人かとデートをしたこともある。
しかしデートの回数は多くても3回。たいてい女の子の方から
「一緒にいても女の子扱いされている気がしなくて辛い」と別れを告げられた。
そんなときはいつもフラリとまやちょんの顔を見に行く。
まやちょんは「またフラれたのかよ」と言いながら、
その時ラスカルが「食べたい」と思っていたものを聞きもせず奢ってくれた。
気がついたら隣にいて、当たり前のように同じ進路を選んだ。
自分を特別視していることは気づいているし、
そのことにまやちょんも気づいているだろう。

「据え膳食わぬは男の恥」と学生時代の友人がラスカルに言ったが、
男として確かにどこかズレているラスカルの隣に自然と居座るまやちょんの存在に、
まやちょんの気持ちを知りつつもラスカルはいつも救われてきた。
こいつが自分の傍からいなくなったら自分は一体どうなるのだろう……
多分どうにかなったりはしないだろうが、
一生バラバラマンが言う通りの「呆れた男」のままで死ぬのだろう…
ラスカルはそんなことをボンヤリ考えながら、
ひどく酔った頭を枕に押し付けてそのまま深い眠りに落ちた。

眩しいほどの陽の光がまやちょんの顔を直撃する。

「…んーーー……」

頭が重い…まやちょんは最低の気分で眼をうっすら明けた。
見覚えがあるが、確実に自分の部屋ではない光景に気づいた。

「…どこだここ……」

首を横に捻ると、あぐらをかいているラスカルの脚が眼に入った。

「……っ!!ラスカル!?ここラスカルの部屋か!?」

驚いてガバッと身体を起こす。その瞬間に頭を鈍い痛みが襲う。

「……気持ち悪ぃ…」
「やっと起きたか。夕べお前んち留守だったんで仕方ないからうちに泊めたんだ」
「……そっか、悪かったな…」

しばらく沈黙が続いたが、ラスカルは眼を逸らして立ち上がった。

「何か食うか?茶漬けぐらいしか食べられないだろう?」
「…うん、悪いな」

まだまやちょんの眼は虚ろなままだった。

ラスカルは手早く即席で梅のお茶漬けを作ってまやちょんに差し出した。

「サンキュ。お前は?食わないのか?」
「お前がガーガー寝てる間に食った」
「…わたしイビキかいてた…?」
「フッ、どうだったろうな。まぁ今さら気にするな」
「…かいてたのか…」

まやちょんは少し落ち込んだ顔を見せる。ラスカルは楽しさを覚えた。

「ほら、冷めるぞ。早く食え」
「おぅ、いただきまーす」

まやちょんは大事そうに茶碗を持ってお茶漬けを啜り、
時おり「アチッ」と眉をしかめる。
ラスカルは始終まやちょんの様子を見ていた。
こいつはいつもふくれっ面をしてるかと思えば満面の笑みで自分の部屋を訪れる。
怒り出したかと思ったら次の瞬間には全身で泣き出す。
こいつには振り回されっぱなしだな…ラスカルはそう思った。
微笑をたたえながら見つめてくるラスカルにまやちょんはふと気づいた。

「…なんだよ、見んなよ。顔に何かついてるか?」
「いや、なんでもない」
「気持ち悪ぃだろ、なんだよ、言えよ。お前も食いたいのか?」
「…なんでもないから、気にするな」

ラスカルはまやちょんの頭をポンポンと触り、立ち上がった。
そして眼を白黒させるまやちょんを尻目に布団を干し始めた。

布団を干し終わったラスカルが再びまやちょんの横に座ったとき、
ちょうどまやちょんはお茶漬けを食べ終わった。

「…夕べは、ありがとな。まだ頭痛ぇし、気をつけるよ」
「そうだな。あまり無茶するなよ」
「今度お礼に…また何かクッキーでも焼いてやるから」
「あぁ…」

少しの沈黙が二人を包むが、それが短いようにも長いようにも二人には感じられた。
このような時間が流れるとき、ラスカルはとても落ち着く。
今回先に口を開いたのはまやちょんだった。

「あのさ」
「うん?」

まやちょんは全く屈託のない笑顔で続けた。
今まやちょんには下心もなく、本心からの考えを口にした。

「バラバラマンが結婚するときはさ、一緒に友人代表挨拶やろうな」

やわらかいまやちょんの髪が陽に透ける。
ラスカルはその髪に手を伸ばし自らの額をまやちょんの額につけた。

「…そうだな」

まやちょんが息を呑むのがラスカルにも分かった。

「ラスカル…?」

まやちょんは恐る恐るラスカルの様子を見上げる。
ラスカルは無言で、額をつけながら硬直しているかのようだった。
長い前髪で、ラスカルの表情がまやちょんには見えない。

「…なぁ、まやちょん」
「なんだよ…」

――結婚しないか?――

そう言いそうになって、思い止まる。
自分の中にフッと沸き起こった感情を表に出していいのかラスカルには分からなかった。

まやちょんは注意深くラスカルを見ながら尋ねた。

「…ラスカル、何かあったのか…?」
「…………」

ラスカルは答えない。

「おい、聞いてんのかよ」
「私たち………」

言葉を続ける代わりに、ラスカルはまやちょんを抱き締めた。

「おい、ラスカル…っ…何すんだよ」

ラスカルはさらにまやちょんの肩を締め付けるかのように抱く。
そして一言だけ問うた。

「私たち、どうなるんだろうな…」

まやちょんにも、その質問の意味は分かった。

「どうって…わたしが聞きてぇよ…」

ラスカルはまやちょんの肩に顔を埋める。

「…どうすればいい?」
「わたしに聞くのかよ、ってか、わたしに言わすのかよ」
「…駄目だな、私は…」

まやちょんはラスカルの背に少しだけ腕を回した。

「…駄目じゃねぇよ、別に。もうお前のことは充分分かってるし」
「……そうか」
「大丈夫だよ、わたしはへっちゃらだから」

ゆっくりまやちょんはラスカルの背中をさすってあげた。
ラスカルの腕が緩み、お互いに顔を向き合わせる。
まやちょんは手をラスカルの背から離し、ラスカルの顔を包んだ。
いつもの屈託のない笑顔でラスカルを見上げる。
少し微笑んで、ラスカルは再び自らの額をまやちょんの額にコツンとつけた。

「…すまないな」
「…いいって」

言葉が途切れ、眼が合う。フッと同時に照れ笑いをした。
そして二人は吸い寄せられるようにキスした。

「こらぁガキども!!チャイム鳴ったろうが!早く教室に入らんか!!」

いつものようにムチを振り回し、ラスカルは生徒達を教室に入れる。
3学期が明けてまた今まで通りの日常が始まるのだった。

「ほらぁ、てめーら朝の会始めるぞー!」
「さぁ、みんな今日もいい朝だねぇ、教室に入ろうねー」

ラスカルもまやちょんも以前と変わらず怒鳴り散らしているが、
バラバラマンは二人の間に流れる空気の微妙な変化に気付いていた。
教育方針の違いが元で小競り合いをすることも変わらないが、
奥底に存在している信頼関係が一層強化されているような、
何か二人の気持ちが通じ合う事件があったに違いないと確信している。
二人の祝宴で友人代表スピーチをするのも時間の問題だ、ぐらいは思っていた。
今さらまやちょんがラスカル以外の男に眼を向けるはずもないし、
無骨なラスカルを自然体のままでいさせられるのもまやちょんしかいない、
たまに親密な雰囲気を漂わせながら二人で退勤していく姿を見つつ、
バラバラマンはすこぶる満足だった。

「まやちょん、今度の日曜うちに来るか?」

アパートの自室でまやちょんの作った煮魚をつつきながら、ラスカルは尋ねた。

「はぁ?うちって?お前んちはここだろ?」

まやちょんはラスカルにお代わりのご飯をよそいながら聞き返した。
最近はよくラスカルの部屋に夕飯を作りに来てそのまま泊まることが多い。

「いや、うち……その、私の実家だ。来るか?」
「実家って…なんでだよ」
「そろそろかと思って…」

ラスカルはそっぽを向いて味噌汁を啜る。耳まで真っ赤だ。
軽くまやちょんは吹き出してラスカルの横まで移動し両手で顔を上げさせた。
膝立ちになってラスカルの顔を見下ろす。

「お前は…何が『そろそろ』なんだよ。ん?」
「…なんでそんな楽しそうなんだお前は」
「ん?楽しいよ?お前面白いな」

ラスカルは少しムッとした顔を見せるが、まやちょんはニッコリ笑ってラスカルの頭を撫でた。

「まやちょん、お前そんな余裕こいてていいのか?」
「この間はラスカルの方が余裕綽々だったもんな」
「お前は…このやろう、こうだ!」

自分の頭を撫でる腕を掴んで、ラスカルはまやちょんを床に組み敷いた。
一瞬時が止まったが、二人は同時に笑い出し、笑いながら何度もキスした。

「ふ…ん…おい、ラス…んっ、どこ触ってんだよ」
「いいだろうが。駄目か?」
「まだ飯食い終わってないだろ、風呂も入ってないし…」

一度スイッチが入るとラスカルは止まらない質だ。
明かりが点いていようが床の上だろうがお構いなしになる。

「や、ちょっと…待っ…んんっ、んっ……」

ラスカルはまやちょんの舌を吸い上げて、声を喉の奥に逃がした。
頭の芯から蕩けそうになって、すぐにまやちょんは抵抗できなくなる。

「………まやちょん…」

普段饒舌なラスカルは、こんな時はいつも無口になる。
うわ言のように名前を呼ばれると、まやちょんはたまらなく幸せを感じるのだ。
余韻も情緒も無視してラスカルは素早くまやちょんの服を脱がせていくが、
まやちょんは成すがままだった。

ラスカルも自身の服を手際よく脱ぎ、激しくキスしながらまやちょんの全身に指を這わせた。

「んん…っ…、んっ」

胸を、首筋を、背中を、腹を、尻を、ラスカルの太い指がさすっていく。

「…んくっ、ん…」

その間もずっとまやちょんの唇はラスカルに塞がれて声を上げることができない。
ふとラスカルはキスをやめてまやちょんを見つめた。
まやちょんも潤んだ眼でラスカルを捉える。

「まやちょん…」

もう一度軽くキスして、ラスカルはまやちょんの秘部に顔を埋めた。

「…っ!!や…ラスカル、やぁっ…!」

まやちょんは両手でラスカルの頭を押しのけようとするが、
しっかり脚を取られて蹴り上げることもできなくなる。
ゆっくりラスカルは舌を使ってまやちょんを刺激し始めた。

「や、だ…だめぇっ…!う…くぅっ…」
「…我慢するな」
「や、だって…」

まやちょんの様子を見てラスカルは激しく音を立ててまやちょんの秘部を吸い上げ、
すでに熱くなっている奥の方まで舌を侵入させていった。

「あぁっ、あん、やっ、ラスカル、だめっ、やぁっ」

片手で脚を押さえ、もう一方の手でまやちょんの乳房を愛撫する。

「あっ、ラスカル、あっあっあっ、ふぅ、ん」

まやちょんの秘部が痙攣を起こし始めたのに気づき、ラスカルは顔を上げて、
口の中に充満した液体を喉を鳴らして飲み込んだ。

「ラスカル、ラスカル」

腕を挙げてまやちょんは抱擁をねだる。
ラスカルはまやちょんの肩と腰を抱いて深くキスし、
そして張り詰めた自分自身をまやちょんの中に埋めていった。

「あ、あぁっ、あん、ラスカル、あぁっ」
「……っ…くっ……んっ、まやちょん……っ…」

お互い容赦なく身体をぶつけ合い、絡ませ合い、求め合う。
相手のリズムは幼いころから分かりきっている。
聞きもせず、タイミングを共有しあっている。
やがてまやちょんの痙攣が激しくなるにつれて、
ラスカルもその震えに耐え切れず、熱い物をまやちょんに放った。

しばらく波に飲まれて二人で抱き合っていたが、まやちょんはラスカルの耳を引っ張り出した。

「…テメェ…」
「なんだなんだ、まやちょん、おい、おいよせ」
「なんだよ、こんな床の上でー!信じらんねぇ…風呂も入ってないし飯も途中なのに…」

まやちょんは涙目で、恨めしそうにラスカルを睨んだ。
しかしラスカルはそのふくれっ面に吹き出して、またキスをする。

「だぁーっ!いい加減にしろよな!しかもお前……ひ、避妊…も…しないで…」

ラスカルは意外そうな顔をした。

「そんな、だってお前次の日曜うちに来るだろ?」
「だからなんだよ!」
「なんだじゃないだろ。“善は急げ”って言うだろうが」
「分かんねぇよ、なんの話だよ。“善”ってなんだよ」
「だから…籍を…」

まやちょんはキョトンとして、赤面するラスカルを見上げた。
ラスカルから続きの言葉が発せられるのを待ったが、
見る見るうちにラスカルの顔が真っ赤になっていくばかりだ。

「…ラスカル、お前がそういうの苦手なのは分かってるし“へっちゃらだ”とも言ったけどさ、
そこはちゃんと言っといてもらいたいよ」

妙な脂汗をかきながら、ラスカルは必死になって言葉を探している。

「そんな捻らなくてもいいよ、ラスカル。
ロマンチックな言葉とかお前には期待してないんだから」
「…うむ…その、なんだ…」
「うん」
「その…ずっと、私の…あー、側にいて欲しいんだが…」
「うん、それで?」
「…というか…そのー、側にいて欲しいんだ…よ」

同じことを二回言ってる…まやちょんはそこにはツッコまないでおいた。
代わりにラスカルの頭を撫でて優しい声で言った。

「はい、良く出来ましたー」
「…お前は…まったく」

まやちょんの優しい笑顔を見てラスカルは安心し、また深くキスする。
眼が合っては何度も角度を変えてキスした。

「…でも、床の上ではもう嫌だからな。飯の途中もナシ!」
「うーむ、どうするかなぁ…」
「いい加減にしろ!」

再びまやちょんの下腹部をまさぐろうとする手をつねられて、
ラスカルは高らかに声を上げて笑った。

その後“床の上で”がラスカルのお気に入りになるというのは、また別の話。






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