はいいろ鳥の草
セラヴィー×どろしー


2/14 15:00

チャチャ逹のいるニャンコハウスでは、どろしーが同じ形と大きさをしたハート型のココアフィナンシェを5つ、皿に乗せてチャチャ逹に自由に選ばせていた。

「どれでも一つだけ取っていいわよ。どれも同じだから」

チャチャ逹は一つずつチョコレートを取るとそれぞれ食べ始めた。

「おいしー。これ中イチゴだー」
「イチゴ入りなんて珍しいですね」
「うまい。(でもチョコレートじゃないな)」
「あれ?一つ余るぞ」

一口で食べてしまったリーヤは皿の上に一つだけ残っているチョコレートに気がつき、それに手を伸ばした。

「余らないわよ。」

どろしーはリーヤにデコピンをしてそれを止めると、後ろを振り返った。

「セラヴィーあんたは?」

我関せずとずっと台所で夕食の仕込みをしながら様子を伺っていたセラヴィーは、どろしーの呼び声に胡散臭さを感じながら居間に入った。

「なんですか?」
「はい。」

どろしーの皿を持った笑顔にセラヴィーはますます怪訝な顔をしたが、子供逹も同じ形の物を勝手にそれぞれ取って食べているのをこっそり見ていたので、一つ手に取り食べ始めた。どろしーは子供逹に向けるものと同じく穏やかに微笑んで言った。

「おいしい?」
「おいしいですよ。今年はまともなもので良かったです。」

セラヴィーの何気無い一言にチャチャ逹は顔を青くし一斉にセラヴィーとどろしーを交互に見たが、セラヴィーは意に介さず台所に戻って行った。

「あ、どろしーちゃん置きっぱなし。」

台所に戻ったセラヴィーは、チャチャ逹の飲んでいるジュースのビンを手に取り量を見た。チャチャ逹が飲んだが、少しだけ残っている。

「僕ももらおうかな」

セラヴィーは残っていたジュースをコップに注いだ。が、そのコップはすぐにどろしーに取られ、飲まれてしまった。

「……」
「……」

二人は顔が合うと暫く無言でにらみ合っていたが、ひとしきり時間が経つとセラヴィーはため息をついて呼吸を整え、どろしーに聞いた。

「どうして?」
「残りは私が飲むからよ。悪い?」

どろしーは悪びれた様子も無く、セラヴィーに言った。

「はいはい。別にいいですけど」

セラヴィーは背を向けると、ケホケホとわざとらしい咳をした。

どろしーはセラヴィーが咳をするのを訝しく思い振り返ったが、変わった様子もないのでそのまま居間に戻った。居間に戻るといつの間に来ていたのか平八が窓越しにチャチャたちと話をしている。

「行く行くっ。ね、リーヤ、しいねちゃん、ポピィくん。」

ポピィはチャチャの笑顔の向こうで、手招きをする平八の微笑みに嫌な予感がしたが、チャチャに誘われては断りきれないので、しぶしぶ「おれも行く」と答えた。


 チャチャ達のいないニャンコハウスで、どろしーは片づけをした後くつろいでいた。
静かな部屋にカチャカチャトントンと台所の音が響く。

「セラヴィ―、終わった?」

時計を見たどろしーは振り返ると、セラヴィ―に声をかけた。セラヴィーは手の水をきると、タオルに手をかける。

「終わりましたよ。」
「だったら外に」
「どろしーちゃん、」

外に誘おうとしたどろしーは拍子抜けしながら振り返った。セラヴィーは目を合わせると微笑みながら続けた。

「今夜9時に、僕の部屋で」
「な…」

セラヴィーの声で、くらぁっとどろしーの目の前が揺れた。その時になって初めてどろしーは自分が何かの魔法にかかっていることに気がついた。

「なにバカな事言って…?」

焦ったどろしーは適当に答えるが心当たりがない。
食事に入れられたと考えるがそれをするならもうとっくに…
というより、むしろさっきのお菓子に仕掛けたのはどろしー自身なのだ(子供逹には解毒薬入りのジュースを飲ませている)。
どろしーは答えるかたわら焦ってしまい考えてもまとまらずにいた。

「んー、これとか」

セラヴィーはタオルごしにジュースのビンを持つと軽く左右に振った。

「魔法薬って面白いですよねー」
「だから…何よ?」

僅かに残った液体がビンの中で他に行き場も無く忙しく動いている。

「毒薬と解毒薬とか、効果を打ち消し合うタイプのものでも、それだけで使うと効果がほぼ同じものがあったり、例えばこれとか。」
セラヴィーはビンを逆さまにするとタオルにジュースを染み込ませた。

「まさか…」
「紫色、やっぱり『はいいろ鳥の草』ですよね。」

顔を青くしているどろしーにセラヴィーは色の変わったタオルを見せてふわっと微笑んだ。

「解毒薬まで効果が書かれてない場合もあるから、知らなくても無理はないと思いますよ。『はいいろ鳥の草』って、30年くらい前に絶滅するからって手に入らなくなったんです。それで文献からも削除されて…」

そこまで言うとセラヴィーはタオルを丸めてゴミ箱に放り込んだ。どろしーは何もかもバレてその上知らぬ間に返り討ちに遭った事に気がつき動かず唖然としている。
セラヴィーは一息つくとどろしーに顔を近づけた。

「後でどの本を見たのか、持ってきて下さいね。」

セラヴィーの息を間近に感じてはっと顔を離したどろしーは「そんなことしないわよっ」とセラヴィーに平手打ちをしようとしたが、逆にその腕を握られて、セラヴィーの胸の中に引き寄せられた。どろしーは一瞬身体中を強ばらせたが、

「それより地の果てまで逃げるか、解毒薬でも作ったらどうですか。もっとも時間が経ちすぎていて薬は間に合わないと思いますけど」

と囁かれただけだった。

その後どろしーは、文字通り地の果てまで逃げようなど考えたが、
考えれば考えるほどしいね逹の事が心配になったり、
掃除をしたくなりしてみたりと、落ち着かない心持ちのまま結局どこへも逃げることなく普段通りに過ごした。
挙げ句の果てに本さえ渡せば帰れると考えれば、心のどこかでほっとしていた。
その事に何の違和感も感じないまま時は過ぎ、とうとう時計は夜9時を指した。


2/14 21:00

「……こんばんは」

セラヴィーが扉を開けると、憮然としたどろしーが分厚い本を抱えて立って
いた。

「こんばんは。どうぞ入って。」

どろしーは本を渡せば帰ろうと思っていたにも関わらず、その言葉に足がスラ
スラ動き、半場無意識にセラヴィーの家に入った。部屋は彼らしく相変わらず
片付いていて塵一つない。ただまだ魔法が効いているであろう事が、どろしー
をどうしようもなく不安にさせていた。

「はい」

どろしーはセラヴィーに本を渡した。

「あぁ、そうでした。」

セラヴィーはポンっと手を打つと、それを受け取り読みはじめた。 それを見
たどろしーはその隙に用は終わったと扉に向かう。

「どろしーちゃん、待って。出ていかないで」

セラヴィーの言葉にどろしーの手はもう少しでドアノブに届くところで止ま
った。出ていく事を考えれば考えるほど頭がクラクラしてしまい、扉の握り
方も忘れてしまいそうになるほどだった。
訳がわからず焦るどろしーをセラヴィーは後ろから抱き締めて囁いた。

「呼んだのは僕なのに、何もせず悪かったです。」
「むしろそうして欲しいのだけど。」

混乱の余り震えだしているにも関わらず、どろしーの強気な発言は止まない。
失われない強気な態度がセラヴィーにとっては何だか可愛いくて可笑しくて、
つつーっとどろしーの顔を指でなぞりながら言った。

「やだなぁ。このまま帰す訳ないじゃないですか」
「どうするのよ、忙しいんじゃないの?」

顔を滑るなめらかな指の感触におぞましさと恐怖を感じても強気な姿勢を崩さ
ないどろしーだったが、次の瞬間セラヴィーに言われた一言には拍子抜けした


「そうだ。向こうで膝枕して下さい。」
「は?」

どろしーは何それと思ったが薬の効果か、目が自動的にそれに適した場所を
探す。が、目の前に見える木製の椅子とテーブルはそれに適さず、やっぱり
何を考えているのかと呆れてセラヴィーを見た。 セラヴィーは別の部屋の前
に立っていて手招きをしている。

「どろしーちゃん、こっちですよ。」

また、どろしーの足がフラフラと動いた。

「何なのよっ!この格好はっ!」

膝枕は膝枕でもスカートを捲られた両脚の間に顔を乗せられて、どろしーは怒り出した。

「ん」
「ん、じゃないっ」

セラヴィーは面倒そうに分厚い本の下から顔を出したがその表情は至って冷静で、首を締めようと
伸びてきたどろしーの両手を払いのけて体勢を崩させると次の命令を出した。

「うわっ」
「それよりも頭を優しく撫でてて。」
「はぁ?!……って、いやっ…絶対嫌…っ」

どろしーの拒絶とは裏腹にその手は自然とセラヴィーの頭の方に伸びていく。その光景を見たくなく
てどろしーは思わず顔を背けた。場所が分からなくなり、どろしーの手はセラヴィーの顔まで伸びて
その輪郭をなぞっていく。セラヴィーはその細い柔らかな指先が唇に触れた時、それをちろと舐めた
。感触にビクンっとどろしーの体が小さく跳ねた。

「あっ……もうっ何するのよっ」
「なかなか頭を撫でてくれないから。」

セラヴィーは顔を出さずに答えた。

「してるじゃないのよこの変態っ。いつになったらこの魔法解けるのっ!だいたいあんためちゃ
くちゃなのよっ!!ねえ聞いてるっ……!!!」
「……読んでますよ。ちゃんと」

セラヴィーは顔を見せずに答えた。

どろしーは更にまくしたてた。

「あんたがじっくり読むなんて不自然なのよっ。いつも本を読む時は真剣でペラペラっと早い
くせに。」

セラヴィーはそれでも顔をどろしーに見せなかったが、一つ、どろしーに聞いた。

「どろしーちゃん」
「何よ」
「この本、どこで買ったの?」
「………」

どろしーは答えなかった。セラヴィーもページを捲ると、それ以上何も言わなかった。
また、時間だけが過ぎていく。

「(いつになれば解放されるのかしら…?)」

また太腿から先程の妙な感触と感情がどろしーに沸き上がり処理に困ると、どろしーは再び
セラヴィーを見た。張本人の彼は、最後のページに近いところを見ながら両腕を伸ばしたり、う
ーむ、と頭をどろしーの脚にこすりつけていた。不意に襲ったくすぐったさにどろしーは声を
あげた。

「や…」
「何?」

さっきまでほぼ無視を決め込んでいたセラヴィーは本を胸の方にずらすとどろしーを見上げ
た。

「あんたは…」

どろしーはさっきから何しつこく怒っているのよと言いかけて堪えた。普通に怒る理由も分も
セラヴィー側にある。子供逹の事も含めて何を言われるかと思い直すと、どろしーはじっと
耐えた。

「どろしーちゃん、まさか感じた?」

セラヴィーの楽しそうな言い方にどろしーは内心逆上したが、やり込められる事は目に見えて
いるので辛うじてそれを抑えこんだ。そしてまた無視するだけに戻ってくれそうな事を聞いた。

「ちがうわよ。そんなことよりどうして『はいいろ鳥の草』が入っているってわかったのよ?」

セラヴィーは再び本の下に顔を隠したが、しばらくすると、そのままで答えた。

「……匂いかな。」
「匂いって……したの?」
「えぇ。フィナンシェからはしませんでしたけど、ジュースから微かに。で、珍しいモノを
と思って……子供逹が飲んでいるってことは、やっぱり解毒かな?と。」
「フィナンシェも食べたふりだったのね。」
「習慣で……悲しい習慣です。」
「あっそう。悪かったわね。」

相変わらず常識離れしているセラヴィーの能力の高さと失敗した原因の何もかもがどこかしら
自分自身にあったということに、どろしーはげんなりすると窓を見た。正確な時間はわからな
いが月の位置が、魔法の効果が切れるまでまだまだ時間がある事を告げている。どろしーがた
め息をつくとセラヴィーは起き上がった。

「違いますよ。最近の仕事の習慣。」
「あんた……いつも何してるのよ?」

どろしーは解放されて膝を隠すとと呆れてセラヴィーを見た。答えは無くても想像がついてど
ろしーは自分自身の不甲斐なさも含めて色々腹立たしく思ったが、押し倒されることは思いも
よらなかった。

「セラヴィっ……!」

どろしーが名前を口にした時、既に唇は塞がれ、後は何を言おうとしても上手く言葉にならな
かった。

「んっ……や…んくっ…ぁ…ぁっ……ん…ぁ」

唾液を時折舌で飲み込まされては媚薬のようにどろしーの頭がくらくらしていく。
引き剥がそうと、セラヴィーの肩を掴むどろしーの手が力が入ったり抜けたりしながら、やが
て滑り落ちた。口の中の淫らな蠢きに全身が支配されて、どろしーはその事に気づかない。

「あ……」

しばらくすると、唇は離され、どろしーは冷たい空気を吸い込むと、いくらか正気に帰った。

「ちょっ…何を」

どろしーは起き上がろうとしたが、すぐにセラヴィーに倒された。

「力抜いて」
「はなっ……」

セラヴィーの声を聞いた瞬間ガクンと力が入らなくなり、どろしーはまたベッドに倒れた。
その上にセラヴィーがゆっくりと覆い被さってくる。焦ってどろしーは問いかけた。

「こんなのがいいの?こんなことをしても私は…」

セラヴィーはどろしーの首筋に顔を埋める手前で離すと、黙りこむどろしーの青い瞳を見た。
ゆらゆらと、吸い込む様な妖しい蒼が揺れて見えた。

「勘違いしないで。お誘いに応えただけだから。」
「誘ってなんかっ!」
「いいえ、だって薬を飲んだのも、魔法にかかったのもどろしーちゃんみずから、
そうでしょう?」
「それは…」

それはそうでもそうではないのだが、魔法薬の強制力がどろしーに無理矢理そう思い込ませて
いく。

「この僕に珍しい薬を盛ろうとしてくれたお礼に、相当危ないお薬だって事を教えてあげま
す。」
「い、嫌っそんなの頼まないんだからっ」

どろしーはフルフルと首を振ったが、セラヴィーは愛し気にどろしーの頬に手を添えてキスを
した。

「……ん、…やだっ…あ……あぁ…」

力が入らず、それらしい抵抗もできないまま受け入れていると、口の中で起こっている出来事
しか考えられなくなり、口中をくまなく蠢めかれ蹂躙される事に眠る前のような気持ち良さを
感じて、どろしーはどんどん何も考えられずに感じる事しか出来なくなっていた。拒絶する声
ははっきりとしたものではなく、ピチャピチャと唾液を交わす音の合間のくぐもったものにな
ってしまい、感じてあげるそれと大差無い。

「ぁ…、はぁん、やん、や、ぁ、ああっ」

セラヴィーの手がどろしーの胸をなぞって包むだけで陶酔するような快感がどろしーを覆った。
切ない声が何度も盛れて、どろしーの体が妖しく揺れる。

「ああ、ごめん、どろしーちゃん。もっと早くしてあげれば良かったね」

セラヴィーはそう言いながら、どろしーの胸をはだけさせると、赤く色づき固く上を向いた
胸の先を口に含んだ。そしてもう一方を指で優しく転がした。

「ああんっ、やだ、違うの、あ、ああ、」

辱しめるようなセラヴィーにどろしーは慌てて否定したが、痺れるような快感に溺れてうわ
ごとのようになるそれの説得力は皆無だった。
胸から唇へ、唇から全身へ、愛撫はくまなく止むことなく続けられ、どろしーの体は何度も
無意識にくねった。

「どろしーちゃん…愛してる」

セラヴィーがどろしーの耳元で囁くと、そこから溶けていきそうな悦楽が広がり更にどろしー
は翻弄された。

「あぁっ、あ、あ、あ、やん、だめぇぇっ」

どろしーの叫びに近い訴えにセラヴィーはどろしーの下半身をまさぐっていたその手を止めた。

「……だめ?」
「はぁ、はぁ……だめよ。だって私は別にセラヴィーのことなんて……」
「ふーん……で、何?」

話半分に聞きながら、セラヴィーはどろしーの愛液で濡れたその指を舐めた。

「ちょっと、き、汚いからやめてっ」

どろしーはセラヴィーの手をとったが、その湿り気にパッとすぐに手を離した。

「別に僕は何とも思いませんけど。あぁ、僕が服を脱いでいないから恥ずかしいんですね。」

勝手に疑問視し、勝手に納得するとセラヴィーは服を脱ぎだした。セラヴィーの纏う穏やかな優男の雰囲気に不釣り合いな固くて無駄の無いやや筋肉質な姿にすぐにどろしーは顔を背けた。

「でも、私はセラヴィーの事なんて別に何とも思ってないわっ。こ…こういう事は普通、あ、愛し合っている人たちが確かめあってからその…その先でするものでしょう?」

色々な恥ずかしさで赤く染まった顔を背けながら、どろしーはたどたどしく話した。

「じゃあ……」

『どろしーちゃんが僕を愛してよ』と言いかけたセラヴィーはどろしーがまだ魔法にかかっている事を思い出してやめた。うっかり言って先の楽しみを半減させては本末転倒だ。
腕組みをして暫く考えるとセラヴィーは聞いた。

「どろしーちゃんはどうすれば僕を愛してくれるの?」
「は?」
「教えて」

戸惑うどろしーにセラヴィーは期待を込めて聞いた。これはこれで狡いと思ったが、こういう時でなければ答えはもうこの先得られそうにない。

「…あ…」

どろしーの困惑を他所に、その口は勝手に話しだした。

「…わからない…」
「……。わからないの?」
「わからないものはわからないのっ、わかった?」

セラヴィーはその答えに落胆しつつ、もう一度聞き直したが、返ってきたのは自信満々にどうしようもないところまで突き放すその答えだった。

「じゃあもういいです。好きにしますから」
「ちょっと、もうわかったんでしょう?離しなさいよっ」
「嫌。」
「あ……んっ、んぅっ」

セラヴィーがどろしーの唇を奪いながらゆっくり倒れこむと、どろしーの体は容易にベッドに倒れた。

「ん、んくっ、ふぁっ、あ、あぁっ」

しつこく逃げようとする口を口で塞ぎながら、セラヴィーはどろしーを抑えこみ、その手はゆっくりと下へ向かっていく。 脚のつけ根の湿り気にたどり着くと、わざと柔らかい太腿を擦って感触を楽しみながら、膨らみを探し当てた。

「あっ、やっ、あっ、あ」

クリトリスを触る度に高い声をあげるどろしーにセラヴィーは

「かわいい」

と囁くとそのまま耳介を舐めた。

「ひぁ……っ」

どろしーはその感触に目を閉じると全身に走った快感に体を小さく震わせた。すぐにセラヴィーはどろしーを抱き締めるとその額にキスをした。

「だめ…っ」

どろしーは抱き締められた一瞬、安心感で力が抜けたが、額にキスされてその事に気づくとセラヴィーの胸を押してその中から逃れようとした。

「ねぇ、どろしーちゃん。」

セラヴィーは逃れようとするどろしーの脇に腕を回して片腕を胸の外に逃すと、再びどろしーを抱き締めた。

「んっ……」

胸の圧迫感にどろしーは声を漏らした。セラヴィーはそのまま低く囁いた。

「世界一も僕から逃げるのも今夜くらい諦めたら?」
「嫌よっ、あぁんっ…!」

どろしーは解放された両手で何か魔法を発動させようとしたが、セラヴィーの指使いであっさり達してしまい、魔力が霧散した。

「抵抗しないで」
「!」

命令にどろしーの手足は動くのをやめた。

「何…これ…」
「気分はどうです?……って、あまり考えないほうがいいか」
「……。……っ!、ん…ぁ…」

どろしーはセラヴィーに全身を舐められながら、膣に指を入れられ、赤く充血して固くなったクリトリスを弄られはじめた。痺れるような強い快感と逃れる事が考えられない為の戸惑いと混乱で、体は逃げるように快楽に身を委ねていく。

「ひぁんっ、あぁっ、ひ、卑怯…っ」
「でないと危ないし。それにその方が諦めつくでしょ?」
「はぁっ…何言って、ああぁっ、あっ、んっ、んぅっ」
「なあに?どろしーちゃん。ねぇ?」

快感と困惑とその他でぐちゃぐちゃの顔をしたどろしーをセラヴィーは上から覗きこみ冷たい目を向けた。どろしーはビクリと体を震わせると、これ以上気の狂うような指示をされてはと黙りこみ、セラヴィーはゆっくり彼女の唇に唇を重ねた。

「ん…んくぅ」

どろしーは暫くセラヴィーにされるままでいたが、抵抗して発散されることのない凍りつくような恐怖と熱く溶けて意識を何度も飛ばすような快楽に翻弄されて、考えることすら拒絶しはじめていた。
自分の声とは思えない喘ぎ声が余計にどろしーを狂わせていく。

「あ…あぁっ…ひぁんっ、う、あぁん、あぁんっ、らめぇぇ、あ、お願っ、ああっ、あんっ、はああぁんっ…」
「ねぇ、入れていい?」
「ん……」

セラヴィーがどろしーを見ると、何度も吸い込まれそうになった深い青の瞳が何も考えていないトロンとした目をしていた。深く口づけるとどろしーの口元が緩んで、膣口に指を這わせると震えてその指を濡らしひくついた。

「ふぁっ…、あぁぁっ…!」
「入れるよ」

セラヴィーは一瞬躊躇ったが、下着を脱ぎ捨てると、さっきから固く反りかえっているペニスをどろしーの愛液で濡れてびちゃびちゃにひくついている膣口にあてがった。

「……っ」

どろしーが下半身に感じた異物感はじわじわ広がる満たされた快楽に変わり、逃すまいとどろしーの体はセラヴィを抱き締め膣は蠢いてきゅうとペニスを締めつけた。

「…ちょっと、どろしーちゃん大丈夫?」

締めつけに思わず達してしまいそうになるのをその寸前で耐えると、セラヴィーはどろしーに聞いた。

「う……ん」

どろしーは上気した顔を隠さず愉悦にさ迷う視線をセラヴィーに向け曖昧な返事をすると、どろしーは腰を動かしてセラヴィーのペニスを下の口でくわえこんだ。そして、ゆっくり腰を動かす。

「え…ちょっと」
「なぁに?」

既に正気を失った深い青の瞳は、相手の正気を飲み込むように、ゆらゆらと怪しくセラヴィーの目に映った。さっきからペニスを包むそれはぬちゃぬちゃと滑り、絡んでそれを放さない。

「こわれた?」

背筋に走る強い射精感を無理に抑えると、平静を装いセラヴィーは聞いた。脂汗がたらりと顔をすべる。

「ばかね。後で…殺してやる。」

そう囁くとどろしーはセラヴィーの背中に両腕を回し、抱きしめてセラヴィーの下半身ごとそのペニスを締め上げた。セラヴィーの体は熱くたぎり、腰を激しく何度も何度もどろしーに打ち込んだ。

「好きです。本当に」

そう言って、どろしーの顎を強く掴んで唇を奪うと、セラヴィーはそのままどろしーの中で果てた。


「はっ。ここは……」
「気がついた?」

目を覚ましたどろしーにセラヴィーは再び覆いかぶさった。

「ちょっ、もうどいてよ。」
「来年はやっぱりチョコレートがいいな」

セラヴィーはどろしーの言う事を無視して彼女の顔を両腕で包み込むと頬を撫でた。

「嫌に決まってるでしょう。もうしないわよ。それよりどいて。重い。」
「ふーん」

セラヴィーから表情が消えた。どろしーはセラヴィーを押しのけようとしたが、一瞬止まった。

「じゃあ、もう少し相手してよ。」

セラヴィーの緑色の目が暗く光って見えた。

「え……」

どろしーは咄嗟に耳を塞ごうとしたが、その前に両手首を押さえ込まれた。声が回避不可の絶対命令になって、混乱と思考停止をもたらす。

「いやよ。そんなの……」
「だめだよ。なぜって、どろしーちゃんが全部悪いんだから。ね。」

よく考えればそうでもないのだが、薬がそう、どろしーに思い込ませていく。

「だから僕の言うとおりにするんだ……」
「うん……」

正気は溶けて消えて、再び狂っていくのをどこか遠くでどろしーは感じていたが、すぐにそれもやめた。





「で、それからどうしたの?」

セラヴィーの膝に乗っている人形は小さなカップをテーブルに置くと、珍しくコーヒーを飲んでいるセラヴィーに聞いた。

「※※※させながら※※※で※※※を※※※したりとか、※※※で※※※させて※※※せたりとか…結局、思いついたもの全部ですね。あーあ、来年も同じことしてくれないかなぁ。」
「まあ、本当にやりたいほうだいね。それならやっぱり記憶は消してしまったの?」
「……あ。」

セラヴィーはポンと手をついた。

「まぁ、セラヴィーったらうっかりさん。」

膝の可愛らしい人形は楽しそうに話した。内容も何もかも怪しい独り言はまだ続く。

「時間、まだあったのにいいの?返して。」
「あぁ、そうですね。これは実は必要な時間なんです。適度な運動には適度な休息が必要ですから。」
「……あらあら、夜更かしが体にお肌に悪いなら、とりあえず今夜は寝たらいいのに…。」
「まったくです。おやおや、もうこんな時間。3、2、1……」

セラヴィーのゼロカウントとともに、セラヴィーの家が跡形も無く消し飛んだ。






SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ