学習しない男(非エロ)
角松一郎×堤芯子


工藤→会検に戻ってくる

「おはようございます」
「おお、おはよう。なんだ工藤、今日やけに早いな?」
「あれ、芯子さん、まだ来てないですか?」
「来てないな」
「お前、一緒じゃなかったのか?」
「はい、芯子さんのお母さんに『芯子ならもう出てったよ』って言われて……てっきり来てるものだとばかり……」
「先に出たくせにどこで道草食ってんだ……たく……」
「……あれ?」
「どうした工藤」
「いえ、芯子さんからメールが……なんだろう」
「遅くなるってメールか?」
「……『デスクの引き出し開けて、中に入ってるやつ、もう一人のシングルパーに渡しといてちょ』だそうです」
「デスク〜?」
「……ッ!補佐!これ!」
「ん?辞職願……辞職願〜!?」

『もしもし』
「あ、もしもし、くるコメ?」
『また、誰かにつけられてるのかな?』
「……アンタさー、ほーんと食えないジーサンだよな」
『ん?』
「なんでも。あ、そうそう、アタシ、アレ出してきた」
『アレ?』
「辞、職、願、ってやつ。今頃ダブルパーとそーめんかぼちゃが読んでんじゃないかな?」
『何故、勝手に?』
「勝手っつーか、なんかさー……あー……水が合わないっつーの?なんかも、善人面とかだめだわ、うん。悪いね!」
『君は、善人面などしていなかっただろう。悪を暴いても、人を助けても。私は、会計検査の仕事は君にとって天職だと思うがね』
「アタシの天職は、……詐欺師だよん」
『そう、思っていない人は、私の他にもいるんじゃないかな』
「はあ?」
「つつみしんこ−……ッ!」
「……シングルパー……?」
「……ッお前、なんだ、これは!……辞職願に自分は詐欺師で仮釈放中だのシングルパーだのそーめんかぼちゃだのマメにヨロシクだの書く奴があるか!」
「なんでアタシがここに居るって……」
「昔、お前が好きだっつってた場所、しらみつぶしに……んなこたどうでもいい!お前な、」
「もどらない」
「あぁ?……そっちじゃない……俺の前から消える前に俺から騙しとった1138,350円耳そろえて返してけ!」
「まーたそれか!っとにしつこいおと」
「返せないなら!」
「……」
「……返せないのなら……返せるまで、会検で働け……」
「……おことわりだ、な」
「……」
「……大体、アンタ、最初アタシが行った時、二度と顔見せるな〜みたいなこと言ってたじゃん」

「……お前に騙された時、すごく荒れた。金が返らないなら、二度と顔も見たくないと思った」
「だろうな」
「……けどな……」
「……」
「……工藤も、探してる」
「なーんだ……それ」
「……アイツも、金田も、……俺も……必死になって……お前を探してた……堤芯子が、必要だと思ってる」
「……」
「……しん、」
「趣味悪ッ……」
「あぁ!?あ、このネクタイか……ってこれもお前のプレゼントだろ……ッ!?」

角松に抱きつく芯子。
工藤と金田が角松を追って探しにくる。

「しんこさー……」
「つつみしん……あ」
「芯子さん……」
「いいのか?」
「……芯子さんが詐欺師だったころを、補佐は知ってるんでしょうね……」
「あの様子じゃ、一回騙されてるな」
「でも」
「ん?」
「年数なんて、関係ないですよね」
「……まあな」
「諦めませんから」
「そうか……」
「金田さんは良いんですか?」
「俺!?俺は……あ」
「ん?」

工藤、金田が芯子と角松を見ると、二人が顔を近づけている。

「……芯子……」

が、またふいっと置いて行かれる角松。

「……学習しねー男だな」
「ほっとけ」
「やっぱり、優かな?」
「……」
「そーめんかぼちゃも、いー男だよ、な?」
「……」
「……アンタもさぁ」
「え?」
「……張り合うんなら、私の送り迎えから始めるんだな!」
「……だ〜れがお前みたいなサンゼロ!」
「……戻るよ、シングルパー、そーめんかぼちゃ」
「無視すんな!」

叫ぶ角松に芯子が笑った。






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