スキンシップ(非エロ)
野立信次郎×大澤絵里子


規則正しく打ち鳴らされる足音に顔を上げる。
どんなに遠く、どんなに小さな足音でも、それを打ち鳴らしているのは彼女だとすぐわかる。
愛故に…なんてな。
そう一人呟くと、野立はドアを開けた。

「うわっ」

もう何年来の付き合いだろ。彼女の驚いた顔は何度見ても飽きない。
くっくっと笑うとムッと顔を歪ませる。
そういう顔が見たくて、ついつい意地悪くなる自分の幼稚さにどうしようもない奴だな俺って、とまったく反省する気もなく、怪訝な顔で何の用?と聞いてくる彼女を部屋に招き入れる。

「何? またくだらない取材の心配?」
「違う違う」

そう言って野立は、部屋の中央で立っている絵里子の背中を右手で撫でる。
突然の刺激に絵里子は固まるが、野立は気にせずゆっくりと、何度も指で背中をなぞる。

「スキンシップしたいと思っただけだ」

耳元で囁く野立の表情は、やはり意地悪な顔をしていた。

「ちょっとなにバカなこと言って」
「そう言うわりにはちゃんと俺の言いつけを守ってるんだな」

顔を一気に赤らめる絵里子の反応に満足げに微笑む野立。

「いい子にはご褒美をあげないとな」
「なに…子供扱いしてんのよ…」
「ん? ああ、そうか。そうだな。絵里子も大人の女性の扱いを受ける年齢だもんな。なら、まぁわかるよな?」

スッと野立は指を背中から絵里子のヒップラインになぞらせる。

「下着を付けずに密室で男と二人きり。この後の展開も、大人の絵里子にはわかるよな?」



「いやぁ俺は嬉しいよ。絵里子がちゃんと俺の言うことを聞いてくれて」
「ウルサいウルサいウルサいウルサい!」

指先に伝わる感触。柔らかく、どこをなぞっても女性的で艶めかしい。
顔を朱に染め、そっぽを向く彼女は気付いているのだろうか。今すぐにでも押し倒したいこの獣欲を。

絵里子の正面に回って全身を舐めるように見つめる。
ふっと顔を背ける絵里子にいつもの威厳はない。
頬から首筋、さらにはスーツに隠されたふくよかな胸元に指を這わす。
ギュッとまぶたを閉じる絵里子はまるで少女のようで。
触ればわかる胸の突起を少しいたぶれば、熱い吐息を吐き出す。

(お前は本当に可愛くてしょうがない奴だな)
(だからこそ、いじめたくなるんだよ)

指を離すと、もの悲しげが声が上がった。
いよいよ我慢出来ず、野立は声を出して笑った。

「わ、笑うな!」
「いやいや…すまん。あんまり可愛くてつい」

そう言うと腰に手を回し強引に絵里子を引き寄せ、口づける。

続きはまた後で。野立がそう言うとじゃあもう一度だけ、と絵里子は再び唇を重ねた。






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